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山本攻略マニュアル
今日のあなたが好き(ツナ山)



「ただいまー」


「お帰りツナ!」


「あれ、山本きてたん……うぅえ!?



* * *



今日は顧問の都合で部活がなくなっちまって、ツナは補習だから、商店街でぶらぶらしようと思った。


本屋のあたりで丁度目にとなったのは、『大好きなあの人をもっとメロメロに!』という特集の雑誌だった。


ふっとよぎるのがツナの顔。


……女性誌だったので抵抗はあったが手にとってパラパラって眺めて見る。


多くはファッション関係で山本にとってはあまり意味をなさない話だったが、一つだけピンときた。


(なるほどな!これならツナも……!)



* * *



その約3時間後、今に至るわけだが……。


「ねぇ、山本がその手に持ってるのは……?」


「俺オリジナルの特製寿司ケーキだぜ!」


胸を張って自慢げに笑う山本。


でもね、刺身+ご飯+生クリームっていうチョイスはさすがにきつい!


山本が持つお皿にはスポンジの代わりに酢飯が使われてて、その上とご飯の中に刺身がトッピング。


……で、まんべんなくクリームが乗ってる。


クリームを入れるのは間違いだよ山本!


「寿司ケーキって山本らしいネ」


今俺の本能が危機を察知した!


「うちは寿司屋だからご飯も刺身もこのくらいなら親父にもらえたし、生クリームも乳製品だから体にいいしな!」


「へ、へぇー……」


「じゃ、一緒に食おうぜ!」


そう言って俺を食卓の奥の方に座らせて、山本はケーキと食器を待って俺の向かい側に座った。


神様こんにちは。もうすぐそちらに行くことになりそうです……。



* * *



「ゴチソウサマデシタ」


「うまかったなー!!!やっぱ乳製品って万能だわ!」


俺は山本の為ならいくらでも身を張れることが分かりました。


天国の扉を垣間見ました。


「うまかったか?」


「ウン、イママデニナイシゲキテキナアジダッタヨ」


あまりに衝撃的でカタコトなんですけど……


「お!やっぱりそう言ってもらえると嬉しいのな!雑誌の特集に載ってたオリジナル料理を作る作戦試してみてよかったぜ」


ん?


「雑誌?」


「ああ!今日偶然見かけてさ。あー……なんでもねぇ!気にすんな!」


いきなり口ごもった山本に俺は何かあったんじゃないかって心配になった。


マフィアの抗争から、誰かに浮気疑惑まで。


「……あのさ、何があったの?俺すごい気になるんだけど」


「ツナは知らなくていいんだって!」


……うわー……なんか焦ってるよ……、俺の不安のゲージが一気に跳ね上がった。


バンっ!



「なんで俺は知らなくていいんだよ!!!!」


感情のままに立ちあがってテーブルを叩くと、山本は一瞬何が起こったか分らなかったらしくポカンとしてたが、すぐに自分も立って俺を宥めにかかった。


「わ、わりぃ!そんなつもりじゃ……!教えるから!な?」


そんな風に言われると自然と毒気が抜けちゃうのが、俺が山本に勝てない原因なんだよな……。


「……ごめん、ついカっとしちゃって……」


「いや、本当に大したことじゃねぇのになんだか余計な心配させちまったな」


「勝手に被害妄想してたのは俺だから気にしなくたっていいよ!それで山本は何言おうと思ったの?」


核心を突いてみると顔を真っ赤にして、普段より小さめな声でこういった。


「雑誌の特集」


「?」


「それで、あー……『大好きなあの人』っていうのでどうしても気になっちゃってな。ツ、ツナに俺をもっと好きになってもらぃ……//////」


さっきより顔を赤くして俯いてる山本が本当に愛おしく思えてふっと笑いが零れた。


「そんな必要ないのに。俺はもう既に山本にメロメロだよ」


「……あり?なんでしってんだ……?」


「山本の見た雑誌の特集は『大好きなあの人をもっとメロメロに!』だったでしょ?」


「!!!!」


「実はあの特集俺も気になってたんだよね……。なんていうか、俺達って今バカなケンカしてたね」


俺が苦笑いすると山本も一緒に苦笑いした。


「ハハハッ!本当バカだな、俺ら!」



(俺はそんな山本が大好きなんだ!)



09/08/22



確かに恋だった


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