short
貴方に贈るハナ(健気受け/死ネタ)
(僕は、貴方を愛してました)
……愛していた。
それが過去形なのは、僕が貴方を愛するのに疲れてしまったから。
ーーー全てのはじまりはあの少年が来てから。
僕は花が大好きで、いつも学園のはなれにある庭園にいた。そこには美しい景色が広がっていて、僕の隠れ家だった。
僕だけの隠れ家じゃなくなったのは、貴方がふとこの庭園に迷い込んでしまったときから。
それから、庭園は僕と貴方だけの秘密の場所。
貴方は優しかった。優しく僕の頭を撫でてくれた。そんな貴方に恋をするのは時間の問題。
そんなとき、いつもの庭園で貴方は僕に大好きな花をくれました。
(好きだ…、愛してる)
素敵な言葉と共に。
幸せだった。貴方に包まれて眠る日が、大好きだった。
貴方と心が通じ合った気がした。
幸せな日々が崩れ去ったのは、季節外れの転校生が来たときから。
貴方は最初は興味がなかった。僕にしか興味がないと言っていた。
だから安心していたんだ。
貴方が転校生と接触したと聞いたときも、落ち着いていた。
貴方を信じていたから…。
でも、
貴方は僕を、裏切った。
貴方が庭園に来ない日が続き、僕は悟った。
貴方はもう来ない。
しかし、貴方は来た。………転校生を連れて。
ここが、貴方と僕の秘密の場所じゃなくなった瞬間。
転校生の他にもたくさんの人がいた。その人達と転校生は庭園で遊び周り、庭園を荒らしていった。
それを注意しただけなのに、悪夢がはじまる。
転校生に付きまとわれる日々。嫉妬の眼差し。放たれる暴力。
その中に貴方もいた。見たこともない、歪んだ笑顔。
悲しい、辛い、何で?臆病者の僕はそれを伝えるすべがない。
僕は今学園の屋上にいる。雲ひとつない空を見上げる。風が僕を後押しするようだった。
後ろから数人の足音。屋上の扉が勢いよく開いた。
そこにいたのは転校生と、その取り巻き。………と、貴方。
転校生は、ここにいたのかと叫ぶ。高校生にしては高い声が屋上に響き渡る。
後ろから、僕に向けられる嫌悪の視線。
それも今日まで………。
僕は、振り向かず屋上の柵を上った。後ろから驚きの声があがる。それでも僕は止まらない。
上って上って、柵のてっぺんに立った。そこでやっと後ろを振り返る。
皆同じような顔をしていた。困惑、焦り。貴方もそうだった。
最後に貴方の人間らしい顔が見れてよかった。
その時の僕の顔は、笑顔だったのかもしれない。
身体が傾いていく。
貴方を愛していました。だから、最後に僕から貴方に伝えたい言葉と花を贈ります。
「くたばれ、クソが。」
僕は落ちた。
人の悲鳴を聞きながら、僕は眠りに堕ちる。
僕が落ちた場所には、あかい血が広がっていた。
誰かが呟いた。
ーーーーまるで、真っ赤な花みたいだ。
届いたかな?
貴方に贈るハナ
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!