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かぞえ唄
1.ソノムカシ。






部屋に入ると、見知らぬ男がわたしのお菓子を食べていた。

『……どなたですか?』

そう声をかけると、その男はこちらに気付き、振り向いた。

「おっ。お前が京で一番の唄を唄うと噂紅か。」

『それは……というか貴方は一体何なんです?』

「ん?ワシか?ワシはな、ぬらりひょんじゃ!」

『ぬらり…ひょん…??』

「唄姫の唄を聴いてみたくてな。」

『それで、ここへ?』

「そうじゃ。」

ズキン…

『………すいません。今は唄えないんです。』

「それはまたどうして?」

『…きっと……あの日以来…。』

「…あの日?」

『…………ぐすっ…うぅ…。』

あの日のことを思い出してしまい、
会ってまだ間もない男の人の前で
泣いてしまった。

「…………。」

『…すいませ…すぐ泣きやみ…』

グイッ

『えっ?』

気が付くと、私はぬらりひょん様に抱き上げられていた。

「すまなかったな、唄姫。
 辛い事を思い出させてしまって。
 お詫びに何かしてやろう。」

『そっ、そんなのいいですよっ!!』

「ワシがしたいんじゃ。」

なっ、と優しい瞳でそう言われてしまうと、何も言えない。

『じ、じゃあ、名前を呼んで下さいっ。』

ここに来て最初しか名前を呼んでくれてない。
あの声でもう一度呼んで欲しい…。

なかなか反応のしないぬらりひょん様を見ると、
下を向いて、肩を震わせていた。

『ど、どうなさったのですか?』

私が言うと、彼は、

「はっはっは!!紅は欲が無いのう!」

と、豪快に笑っていた。笑われた事よりも、

名前を呼んでくれたのが嬉しすぎて、私も微笑んだ。

「…っ!?」

すると、いきなりは彼はそっぽを向いてしまった。

『ぬらりひょん樣…?』

「……帰るっ。」

そう言うと、ぬらりひょん樣は私を降ろしてしまった。

『きゅっ、急にどうささたのですか?』

「ただ、帰ろうと思っただけじゃ。!」

『そ、そうですか…。お気をつけて、お帰りください。』

あれ…?どうして帰って欲しくないと思うの…??

「あ、あぁ。じゃあな。また来る。」

そう言って、ぬらりひょん様は窓から帰って行った。

『・・もしかして、来る時もそこから??』

それにしても、さっきのぬらりひょん、様子が変だった。
私、何かしたっけ??……………もしかして、

『嫌われた…??』

どうしよう??






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