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「嫌だッ! 離せっ!!」
その頃リョーマは公園のベンチに男4人に完全に押し倒されていた。

「おとなしくしてろよ。黙ってれば気持ち良くしてやんだからよ?」
そう言って浴衣の中に手をのばしてきた。

肌に触れられただけで寒感が走り、気持ち悪いと全身から触れられることを拒んだ。
しかし小柄なリョーマの抵抗は空しくも叶わず、そのまま胸へと触れてきた。

こんなこと部長以外にされたくない。
部長以外に触られたくない。
部長じゃなきゃ嫌なのに。
そう思っているのにどうやってもこの4人からにげることが出来ない。
悲しい。悔しい。怖い。助けて。
いろんな感情が涙となりリョーマの頬を濡らしていた。

「おいおい、泣かせちゃったぜ?」
「まぁ、いいんじゃね?」
男たちはケタケタと笑いながらリョーマの様子を観察していた。

「・・・っや!!嫌だ!!!!部長!!!助けてっ!!」
リョーマはそんな男たちの様子に腹が立って体で勝てないのなら声を張り上げて助けを呼ぶしかないと思い、力いっぱい叫んだ。
勿論、助けに来てくれるであろうあの人の名前を無意識で呼んでいた。

「うるせーんだよ!周りに聞こえたらどーすんだ?!」
「少しはだまってろよ!」
そう言って男たちの一人がリョーマを殴ろうと手を振り上げたときだった。


「お前たちはここで何をやっているんだ?」
ガラの悪い連中達のがらがら声とはまったく違う低くて艶のある声がその男たちの行動を止めさせた。
いや、その言葉を言ったと同時にその声の持ち主の手塚が、男の振り上げた状態の腕をがっしりつかんだからだ。

「ぶちょ・・・お・・・」
殴られると思った瞬間に目を閉じていたリョーマはその声に反応して目を開けてみると、そこには今だれよりも助けに来てほしかった男が目の前にいた。
そう思って安心すると自然とさっきとは違う安心の涙がこぼれた。




「何すんだよ、てめぇ!!」
「喧嘩売ってんのか?!」
手塚の様子を見た男たちは手塚に掴みかかろうとしに行く。
しかし手塚に腕を掴まれたままの男がそれをやめさせた。

「お、おいっ!!とりあえず、あっ・・・謝ろう!!す、すいませんでしたっ!!」
その腕をつかまれたままの男は慌てた様子で謝り始めた

「おい、何で俺らが謝んなきゃなんねーんだよ?!」

「いいから!!!!」
そう言った男の眼には痛みで涙が浮かんでいた。
そう。男の腕は折れそうだったのだ。
手塚は冷静な顔のまま男を見下ろしているが実際はリョーマをこんな目にあわせた怒りで震えていた。
その怒りを全部男の腕をつかんでいる左手に集中させていた。
日ごろテニスで鍛えている手塚の力は普段遊んでばかりいる男の腕を壊す事などたやすい。

「ぶちょ・・・、も、いいから・・・」
そんなときようやく押し倒されたままだったリョーマは立ち上がって手塚の腰に抱きついてがかすかに声を発した。
そのことに一瞬手塚は気を緩ませた。
そのすきに男は腕を手塚の左手から素早く引き抜き他の男たちと凄い勢いで逃げていた。


「リョーマ、すまない。俺のせいで・・・」
手塚はその姿を憎しみの目で見送った後、リョーマを抱きしめてやった。

「何で?部長、ちゃんと助けに来てくれたじゃないッスか。でも俺・・・」
リョーマは何か言いたそうにしたが、最後まで言わずあとは手塚の胸に埋もれながら泣いていた。

たぶん「怖かった」って言いたかったのだろう。
俺はそんなリョーマを優しく抱きしめてやりリョーマが落ち着くのを待った。

そんな怖い思いをさせたのも俺のせいなのだと手塚は心のなかで自分を罵倒していた。
どうしてもっと早くに助けに来てやれなかったのか、悔やんでも悔やみきれない。
リョーマに恐怖を与えてしまった。
そのことに変わりはないのだから・・・。







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