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部活の帰り道・・・。
手塚は横に居るリョーマを気にしながら歩いていた。
 
 
「ねぇ、部長聞いてよ。今日桃先輩が勝手に俺のジュース飲んだんスよ?」
リョーマは普段通りのような様子で手塚に話しかけている。
 
「あぁ」
いつも通りの反応を返す。
いや、いつもはもっと会話を返してあげるのだが今は誘うタイミングが分からず焦っていた。
だが、いつも口数の少ない俺のことだ。
きっとリョーマは俺の焦りなど気付かないで話を続けるだろう。
 
「しかも一口って言って全部飲むし、あの人最悪・・・」
リョーマはその時のことを思い出したのか不機嫌な顔になりながらそう話した。
 
「あぁ、そうだな」
また手塚は話を膨らませようとすることなく、相槌のような返事で終わった。
 
そして、急にリョーマが歩くのをやめて立ち止まってしまった。
 
俺はどうしたのかと聞くために振り返った。
すると・・・・・
 
「今日の部長、変」
リョーマは俺を下から不安そうな顔で見上げきた。
 
まったく焦りなどバレていないと思っていた手塚は一瞬びっくりしたが顔には出さなかった。
「? いつも通りだが」
俺はリョーマに焦っていることを悟られないように冷静を装ってそう言った。
しかし本当にバレていないと思っていたしいつも通りに振る舞っていたつもりなのだが、
リョーマにはいつもと違うのが分かってしまったらしい。
そのことで少し嬉しかった。
俺は意外にお前に好かれているということがわかった。
俺だけがお前のことを好きすぎているのかと思っていたが、こういう何気ない違いまで見抜いてしまうのはお前が俺を見ているから・・・
と解釈してもいいのだろうか。
 
「なんか違う」
リョーマは首が疲れるんじゃないかと思うほど手塚をずっと見上げていた。
 
 
「お前は・・・」
手塚はその目線に負けて口を開いた。
そして今誘うしかないなと思ったのである。
 
「行きたいのか?」
何故か頭の中が混乱して大事な部分を随分と省略した言葉が出てきた。
重要な「夏祭り」は何処に消えたんだ、手塚。
 
「? 何に?」
リョーマは手塚の意味不明発言に首を若干傾げながらそう聞いた。
 
「夏祭りに」
手塚はようやく言えた。と思って心の中でほっとしていた。
実際は誘えてないのだが・・・
ただの質問と誘うことを手塚は間違えているようです。
 
「別に俺は行きたくない」
リョーマは手塚の「夏祭り」という言葉を聞いた瞬間、手塚から目線を左に背けてそう言った。
目線を左に背けるとは嘘をつくときの典型的な行動だ。
 
手塚はその行動を見逃しておらず、やっぱりリョーマは行きたがっていることを再確認した。
 
「俺は、お前と行きたいと思っていたのだが・・・」
手塚は強がっているリョーマを解放してやるために優しい声でそう言ってみた。
テニスをしているときは生意気な態度のくせに俺といるときは強がる傾向がある。
そこも可愛いのだが、たまには可愛い恋人の甘えやわがままに応えてやりたい。
そんな気持ちを込めて言った。
 
「え? だって部長そういうの嫌いじゃなかったの?」
リョーマはまた手塚を見上げてそう聞いた。
目はどこか輝いていて、声も少しびっくりしながらも弾んでいる。
 
「嫌いではない、苦手なだけだ」
手塚はきっぱりと本当のことを言った。
人込みは嫌いだし、夏祭りと言えばガラの悪い連中も集まる。
ゴミは平気で道に捨てるし、そういう部分で苦手だった。
 
「やっぱり・・・」
リョーマはその言葉を聞いた瞬間しゅんとして落ち込んで俯いた。
 
「だが、お前と一緒なら行きたい。そう思っている。こんな理由じゃ駄目か?」
手塚はリョーマの頭の上に自分の手を置いてやって宥めるようにそう言った。
 
リョーマは手塚の言葉を聞いた瞬間に嬉しそうな顔になって手塚に抱きついていた。
その行動でもう夏祭りは二人で行くこと決定ということを示しているようなものだ。
 
リョーマは本当はずっと我慢していたし、強がっていたけど手塚の優しい言葉に完全に安心して涙までも流していた。
 
そんなリョーマを通学路だというのに手塚は優しく抱きしめ返してやった。
 
 
 
 
 
 
 


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