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take off one's glasses






「ぶーーちょおっ!!」
手塚とリョーマしかいなくなった部室にリョーマの声が響く。
手塚はロッカーの方を向いて着替えをしていた。いや、もう着替えを終えていた。
その瞬間を見計らったかの如くリョーマは手塚に抱き着いた。

しかもいつもは出さない猫撫で声だった。


どうしたのか気になって手塚はリョーマの方に目をやる。


「ん? どうしたんだ?」
でも手塚はそんな普段とは違うリョーマに悪い気はしなくて、むしろいつもより可愛いリョーマに嬉しくなっていた。


「ぶちょーお…」
そしてリョーマは手塚の背中に抱き着いたまま引き続き猫撫で声を出し続ける。


「どうしたんだ?熱でもあ…」手塚が振り返りながら言った言葉はある出来事で遮られた。

リョーマは手塚のネクタイを急にグイッと引っ張って手塚の顔を自分の高さに引き寄せたのだ。
そして手塚に自分からキスをした。


キスをされている…
俺が?…リョーマに…


手塚は混乱していた。
まさかリョーマからキスをしてくるとは思っていなかったし、しかもいきなりすぎる。


そしてびっくりしていた拍子にリョーマに眼鏡をとられてしまった。


あっ…俺の眼鏡…。

手塚はとられてから初めて正常に脳が働くようになった。





一方、リョーマはリョーマでこの時を待っていたのだ。
新しい制服にはネクタイをしなければならないからそれを利用してこうなることを待ちわびていた。


部長の眼鏡外した顔見れた…。

リョーマは自分からキスをしたい。という思いがこの"眼鏡奪いゲーム"をやろうとしたきっかけだったのだが…
手塚が眼鏡を外した顔が見たかったのもある。

それだけのために恥ずかしさに耐えてさっきのように甘えた行動をしていた。
でも実際はいつもあんな風に甘えていたいがそれだとバカップルみたいで嫌らしい…。

今でも十分バカップルだと思うのだが…。


「ほら…、身長関係無いって言ったの本当じゃん」
リョーマは手塚の眼鏡をとって自分にかけてみたりしながら手塚にそう言った。


「確かにな…だが、お前のさっきのいつもと違う態度と声は…俺を騙してたんだな?」
手塚はリョーマを押し倒し気味にそう呟く。
そしてリョーマから眼鏡を奪い返して自分にかけ直す。


「それは…、別に悪気があったわけじゃ…」
リョーマは途端にしゅんとしてさっきの明るい表情から悲しそうな顔になった。


っ………。
このままリョーマを泣かせるわけにはいかないな…。
それに今からしたんじゃ校門の門が閉められてしまうしな…


手塚はリョーマにお仕置きをしようとしたが時間の関係もあってキスだけでやめた。


「んっ…、はぁっ…ぶちょ…」
リョーマは手塚のキスに酔ってボーッと手塚を見つめていた。

「そうやって…俺を誘っているのか?」
手塚はリョーマの腰に手を回してリョーマを引き寄せた。


「…部長の馬鹿っ…」
手塚に見つめられてリョーマは恥ずかしさに顔を背けた。


いつもそうだ。
リョーマは恥ずかしくなると"部長の馬鹿"と言って顔を背ける。
そんなリョーマを愛おしいと感じながら手塚はリョーマをお姫様抱っこして部室から出ようとする。


「え? 部長…、し…ないんスか?」
リョーマは抱っこされたまま動揺して手塚を見上げた。


「もう門が閉まるだろう? この続きは違う日に繰り越しだ。」
手塚は抱っこされたまま見上げてくるリョーマに軽くキスをして門に歩いていく。








「ちょっと!!いつまでこうやってるんスか!!下ろしてよ!」
リョーマは手塚がいつまでも抱っこしているのに急に恥ずかしくなってジタバタし始めた。


「俺はこのままお前の家まで送ってやってもいいが…」
手塚は真顔でそう言った。


「っ…、何考えてるんスか!」
リョーマは耐え切れず自分から無理矢理降りた。


まったく…
さっきまでの異常なほどの甘え方がどうしたものか…。


手塚はそう思いながら歩き出す。
…と、リョーマが手塚の後についてきてシャツを引っ張ってくる。

「部長、罰ゲーム…、まだやってもらってないッスよ」
リョーマは振り向いた手塚を見上げてそう言った。



そういえば罰ゲームがどうたらとか言っていたな…。


「あぁ、そういえばそうだったな…。で、俺は何をすればいいんだ?」
手塚はリョーマを見下ろして冷静に問いかけた。


どうせ今すぐ出来ることだろう…。
物真似か?
出来ると言ったらウサ●ミ仮面ぐらいしか出来ないが…

手塚はそんなことをぐるぐる考えながらリョーマの返答を待った。









「俺より身長低くなって?」

リョーマは手塚をその大きな瞳でまっすぐ見ながらそう答えた。




「は?」
リョーマの意味不明発言に手塚は手塚らしからぬ間抜けな声が出た。



「だからっ! 罰ゲームは俺より背が低くなること!!」
リョーマは手塚のシャツを引っ張りながらそう言った。



何を言ってるんだ…
この恋人は…。


手塚は軽く頭を抱えた。

リョーマは楽しそうに手塚を見上げている。





手塚はこの先どうやって身長を低くするか見物(みもの)だ。


多分、手塚はリョーマにはこれからいつまでも振り回されるだろう…。





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あきゅろす。
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