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I can't stop loving you.






「よっ!!おはよう越前!!」
学校へ行く途中…
いつものようにぼーっと歩いていたリョーマだったが後ろから来た桃城に肩を叩かれて少し目を覚ます。

「おはようございます…」
リョーマは桃城に軽く挨拶をしてあくびをする。

「ったくお前はいつも眠そうだよなー。そんなんじゃいけねーな、いけねーよ!」
桃城はリョーマの目を覚ますためにいつものように軽く腕で首を閉めて桃城から一方的にじゃれていた。

「桃先輩、痛いッス…」
リョーマは桃城の体を叩いてやめろと訴えた。


「おはよう。二人とも相変わらず仲がいいね」
そこに不二が声をかけてきた。
そして横には手塚がいた。


(あ、部長…)
リョーマは手塚がいることに恥ずかしくなった。
何せ好きな人なのだから…。
が、桃城の腕の中で捕まったままなので逃げることが出来ない。

「僕達もじゃれ合おうか? ねぇ、手塚」
不二はいつもの笑顔で手塚にそんなことを言った。


「何を言ってるんだ不二、俺は先に行くぞ。」
そう言って手塚はリョーマ達の前を過ぎていった。
手塚は不思議とリョーマに目を合わせることはしなかった。

(部長…昨日よりなんか冷たい…)
リョーマは桃城の腕から解放されたのにも関わらず一人ぼんやり立っていた。

「おい、越前置いてくぞ!!!」
そんなリョーマを見て桃城は声をかけた。


「あっ、今行くッス!!」
リョーマは桃城の声に反応して桃城の後を追って学校に入っていった。













一方、手塚の方はというと…
確実に嫉妬していた。

リョーマにあんな風に抱き着いている桃城に顔には出さないが酷く腹が立っていた。
確実に恋をしている状態だ。

誰にも渡したくない…。
手塚の中にこれほどまでの強い感情があったことが手塚自身もびっくりしていたのだ。
テニスに対しての"勝ち"に対する執着心のようにリョーマに対する感情は"好き"と自覚してから急速に膨れ上がっていった。





………………*-+-*-+-*-*-+


「お疲れ様ッス!!」
「お疲れー!」
部活が終わり着替えが終わったメンバーが手塚に挨拶をして部室を出ていく。
いつものように手塚は練習メニューや部費について一人残りノートに書いていた。


「さてと…」
手塚は全部書き終えて着替えを初めようとジャージの上着を脱いだところだった。



ガチャ…
ドアノブを回して誰かが入ってこようとしてきた。

もうみんな帰ったと思ったのだが…
手塚はそんなことを気にしながらジャージの下を脱いで学ランのズボンを穿いた。


「部長…」
その声は聞き慣れた可愛い少年の声だった。
部室にリョーマが入ってきたのだ。

「お前、もう帰ったのではなかったのか?」
手塚はリョーマが現れたのにびっくりしたが気にしてないようにロッカーからシャツを取り出した。

「…練習してたッス…」
実際はただの口実だった。
手塚と二人きりになって一緒に帰りたかったからみんなが部室から出ていくのを待っていたのだった。

「熱心だな、でもあまり無理はするな。怪我をしたらどうする」
手塚はシャツを羽織りながらリョーマの方を向いてそう言った。

その姿にリョーマはドキドキしていた。
手塚はシャツを羽織っているだけなのでそのすき間からは手塚の胸元のしっかりした胸板が見えたからだ。
自分にはまだあんなに筋肉がついてないし、羨ましいのと同時にドキドキが止まらなかった。

「うぃーッス…」
恥ずかしさを紛らわすためそう言って手塚から背を向け自分も着替えを始める。

こっちを見られていないか気になったけど早目に着替えをすましてリョーマは手塚の方を向いた。

すると手塚はラケットバッグを持って立ったまま、また机に向かいノートを見直して何かを書き込んでいた。

「部長…、俺っ」
リョーマは手塚の横に行き手塚を見上げる形で話しかけた。

「また"おごって"か?」
しかしそれは手塚によって遮られた。
手塚はノートに目を向けたままリョーマの方は向かなかった。それは手塚も緊張しているからだ。


「違うッスよ。一緒に帰って…って言おうとしただけッス…」
リョーマは恥ずかしがっているのか顔を赤くして俯きながら手塚にそう言った。

手塚は予想もしていないその言葉にびっくりして一瞬シャーペンを持つ手が止まったが、嬉しくなってリョーマの方を向いた。

「俺と帰ってもつまらないのではないか? だがお前がそれがいいと言うなら…俺もお前と一緒に帰りたい。」
手塚は真っ直ぐリョーマの目を見ながらそう言った。


「別に…。つまんない人といちいち一緒に帰らないッス…」
リョーマも手塚を大きな瞳で真っ直ぐ見据えたままそう言った。

「そうか…。有難う」
手塚はいつも無口なためつまらないと言われることが子供時代の頃から多かったためリョーマの言った言葉に嬉しくなって感謝の言葉を発した。
そして自然にリョーマに笑顔を見せていた…。


(部長…、今笑った…!!)
リョーマは手塚のその表情を見逃さなかった。
そして奈々子が見せてくれたあの小説の絵を思い出した。

(あんな絵より…こっちの方が…)
リョーマは手塚に見とれていた。
目の前であの手塚が笑ってくれたのだ。
そのことを噛み締めていると体の底から"好き"という感情が溢れ出してきた。

(俺…やっぱ部長が…)
リョーマは手塚に言おうとした。告白の言葉を…

だが………






「どうした越前、行くぞ?」
手塚がいつまでも見つめてくるリョーマに耐え切れず、言葉を発した。

「…うぃーッス…」
いつもの返事もどこか元気が無い。


拍子抜け…。
というのはこういうことなのだろう。
リョーマは手塚の後に静かについて行った。

……………+-*-+-*-+-*-


「部長ってさ、眼鏡とったら何も見えないんしょ?」
帰り道リョーマはさっきの拍子抜けした気持ちを入れ替えて手塚の横を歩いていた。

「あぁ、まぁな…。眼鏡をとって視力検査をしたらあの一番上の文字も見えないからな…」
手塚はリョーマの目を見てそう話す。

「え? 部長それおかしいッスよ。あの"c"みたいな切れ目が見えないってことッスよね?」

「あぁ、そうだ。悪かったな、おかしくて…」

「部長、そんな顔してたらまた眉間のシワ深くなるッスよ…」

「誰が深くしてると思ってるんだ…?」

そんなたわいもない会話をしながら帰っていた。
手塚は無口と思っていたが話しをするととても楽しい。
とリョーマは思っていた。

「部長って面白いッスね!じゃあまた明日。」
リョーマは帰り道の別れ道のところで手塚にそう言って走っていった。

「面白いのはお前の方だろう…。俺と帰って面白いという奴はいないんだが…」
手塚はボソッと呟きながらリョーマが見えなくなるまで目で見送り自分も帰っていった。



そのうち毎日一緒に帰ることが手塚とリョーマの日課になっていた。
一緒に帰る度、日を追うごとにお互いはお互いをさらに好きになっていた。


しかしそんな幸せな日々は長くは続かなかった…。








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