He is conscious….
俺は…
あの時なんと言おうとしたんだ…。
手塚はリョーマを送った後、家に帰り自分の部屋のベッドに腰をかけながらそんなことを思っていた。
リョーマの頬についたソースを拭った後に言いかけた言葉が自分までも悩ませていた。
あの時…
カラスが一斉に鳴かなかったら…俺は…。
手塚はふと目を閉じてリョーマの顔を思い浮かべる。
そして目を開けるとそこには今朝、読んだままのあの小説があった。
…………
ちょっと待て…
今の俺の心のような状況と、この小説の中の"眼鏡の部長"とやらの心はまったく同じではないか。
朝読んだのを思い出して手塚はまた小説を手にとり数ページをパラパラとめくっていく。
・相手のことを考えると胸が締め付けられるように痛い。
だけど考えずにはいられない。・相手が自分以外と話すところは見てられない。
・相手を見ると心臓がドキドキする…。
・相手が喜ぶ顔が見たい。
・一緒に居たい。
……………
全部当て嵌まってる…。
この気持ちは何なんだ…?
手塚は小説のページをめくりながらこの気持ちの答えを探していく。
好き…。
ただそれだけのことだった。
「俺は…越前が好きなのか…?」
手塚は声に出して自分でも確かめるように"好き"という意味を考えた。
“…越前のこと
好きになっちゃった?……“
そして自然に不二が言った言葉が思い出される。
「俺は…越前が好きだ…」
噛み締めるように言った言葉は誰もいない部屋にぽつりと浮かびどこか淋しさのようなものが込み上げる。
そしてようやく自覚したのだ。手塚はリョーマのことが"好き"だと言うことを…。
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