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Close the distance twosome2




部活帰りにこうして二人で歩くのは珍しい……
というより初めての体験だ。
他の部員が見たらどう思うか…
手塚はそんなことを考えながら手塚の横について歩く小さなリョーマをチラッと見た。


リョーマもリョーマで手塚と同じようなことを考えていた。
そして想像以上に緊張していた。
試合でもこんなに緊張したことはない…。
なのに何で…
リョーマは手塚の顔を見ないように前だけを見て歩いていた。

「ここで待ってろ」
手塚が急にそう言ってファーストフード店に入っていった。

しばらくして手塚が帰って来てハンバーガーをリョーマに手渡した。

「別に一緒に行っても良かったけど…」
リョーマは手塚から受け取りながらそう呟く。

「人が混んでたからな」
手塚はリョーマにコーラなども渡しながらそう言った。

…この人意外に嘘つくの下手くそ…
全然混んでないじゃん…


リョーマは手塚が出て来たファーストフード店を眺めてそう思った。
だけど次の瞬間、なんとなく手塚がリョーマを残した理由が分かった。

ファーストフード店の中にはガラの悪い連中が結構たむろしていた。
リョーマはよくそういう奴に絡まれることが多かった。
月刊プロテニスに写真がのったり特集が記事になったりしてるから前も変な奴に絡まれた。
でもその時助けてくれたのは…確か委員会帰りの手塚だった。
この人はそんなことまで思ってくれてるのか…
リョーマはよく自分では説明ができない複雑な気持ちになった。
でもこれだけは言いたい…

「部長…有難うッス」
リョーマは手塚の顔を見上げて言った。

「あぁ、別にこれくらい先輩として当然だ」
手塚はそう言って何処か座って食べれるところが無いか目で探している。


おごったことだけに関してじゃないのに…
気付いてない…
リョーマはそんな鈍感な手塚にちょっと楽しくなりながら手塚の腕を引っ張って走った。

「っ…!!…なんだ越前?」
手塚は急に腕を引っ張られてびっくりした様子でリョーマに声をかける。

「食べるとこ探してんでしょ? 俺いいとこ知ってるッスよ、部長!」
リョーマは走りながら手塚に笑顔を向けてそう話す。






そしてしばらく走って着いたのはこの町が見下ろせる綺麗な丘だった。

「こんなところ…あったんだな…」
手塚は急に引っ張られたことを怒ることも忘れて町を見下ろしていた。
そこには夕焼けに染まって美しい町が映し出されていた。

「俺 初めてこの町来た時道に迷ってここに来たんスよ。それからなんとなくここ来たりしてる」
そこにはちょうどベンチが置かれてありリョーマはそのベンチに座ってハンバーガーを食べながら手塚にそう言った。

どうやらここは一部の人だけが知る場所のようだ。
丘の上にベンチなんてまったく変な光景だが…この景色を座りながら見れるのだから贅沢だ。
絵かきも来るらしい。ベンチの所々には絵の具が飛び散った跡がついていた。

「そうか…」
手塚はリョーマ同様ベンチに腰をおろしハンバーガーを食べながら綺麗な町を見下ろしていた。


(なんか部長の食べ方綺麗…)
リョーマはぼーっと手塚の食べる様子を見ていた。
その視線に気付き手塚はリョーマの方を向く。

すると急に手塚の指がリョーマの頬に触れて、リョーマの頬についたソースを拭ってやった。
「お前は……」
手塚が何か言いかけようとした。
その時、カラスがカァーカァーと一斉に鳴いて飛んでいき手塚の言おうとしたことが掻き消された。

「そろそろ帰るか…」
そして手塚はさっき言おうとしていたこととは明らかに違う言葉を発してベンチから立ち上がった。


……………*-+-*-+-*-+-*-+


「ねぇ、いいってば!」
リョーマは普段はあまり出さない大きな声で反抗した。

リョーマが不機嫌気味な理由は手塚が家まで送ってくれると言ったからだ。

そしてもう家に着く寸前…。
リョーマが何故そんなに嫌がるのかと言うと…
リョーマの帰りが遅いと奈々子さんが心配して時々だが玄関の外で待っていたりすることがあるからだ。
今日の朝のこともあったし、手塚と居るとからかわれる。と思ったからだった。
勿論手塚と帰れることは嬉しいリョーマだったのだが…

「何をそんなに嫌がる?もう暗いのにお前を一人で帰らせるわけにはいかないだろう」
手塚はその一点張りだった。


そしてリョーマの家が見えてきたところ…
そこには人影が…
「もう駄目だ…」
リョーマは手塚には聞こえない程の声でため息と共に呟いた。

「リョーマさん、遅かったわね。あっ、部長さん!!いつもリョーマさんがお世話になってます!!」
そしてその影の人物だった奈々子がリョーマと手塚の姿を見つけて目を輝かせながら手塚に挨拶をした。

「いえ、こちらこそ越前にはいつも活躍してもらってるので助かってます」
手塚は奈々子にそう言った後、軽く話をしてお辞儀をして帰っていった。

「リョーマさん…さっそく手塚部長に…フフ…」
奈々子はリョーマの顔を見てぶっと笑いながら玄関に入っていった。

「ちょっと、何笑ってんのさ。意味分かんないんだけど…」
リョーマは不機嫌そうな声を出しながら奈々子の後についていき玄関に入った。





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