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Close the distance twosome





「では、今日はこれで練習を終わりにする。一年生のコート整備担当の者は後は頼む。その他の者は解散!」
手塚のその声で部活終了の合図になる。

その後、部員達はそれぞれ部室に入っていき着替えを終えて部室から帰っていく。

手塚は部長のため部室に残って練習メニューのことなどを書いていた。

「じゃあ手塚、お先に」
不二と菊丸がそう言って部室から出ていった。
他の者も部長である手塚に挨拶をして次々と出ていく。

シーンと静まり帰る部室…
にドアノブを回す音が響く。

ガチャ…


ドアから入ってきたのはコート整備を終えたリョーマだった。「あ、部長…」
リョーマが手塚を見て思わずそう漏らす。

そういえば今日は越前が担当だったな…と思いながら手塚はリョーマに目をやる。

「もう終わったのか?他のコート整備の者はどうした?」

「もうとっくに帰りましたよ…俺ジャンケンに負けて一人でやってたから…というよりさっきそいつら部室から出ていったじゃないッスか。部長…もしかしてボケたんスか?」
リョーマは着替えながらそんな生意気なことを部長である手塚に言った。

「ボケてなどいない。部活の練習メニューを書いていて見なかっただけだ…」
手塚は珍しく怒ったような顔でリョーマにそう告げる。

日頃あんまり怒るなどの感情を表さない手塚なのだが今日は軽く怒っている。
何故なら微妙に眉間のシワが深いからだ。

(あ、眉間のシワいつもより深い…)
リョーマは上着のジャージを脱ぐ手を止めて手塚の顔を見ながらふと思う。


「何だ? 俺の顔に何かついているか?」
手塚は今度はさっきよりは眉間のシワを浅くさせてリョーマに問い掛ける。

「別に…」
リョーマは手塚に言われて初めて手塚を見つめていたことを自覚した。
それから手塚に背を向けて着替えを続けた。

それを見た手塚は引き続き机の上にのってあるノートに目をやりシャーペンで練習メニューなどを書いていく。

数分後、リョーマの着替えは終わりラケットバッグを持って帰ろうとした。
いつもなら真っ直ぐ部室から出るのだがこの時、リョーマは何故か手塚が気になって手塚を残して帰るのは嫌だった。


「ねぇ、部長…」
リョーマは手塚の机の横まで歩いてきて話かけた。

「ん? 何だ?」
リョーマの声に反応して手塚が机から顔をあげる。

「今日おごって」
リョーマは手塚にいつもなら言うはずもないことを口走った。
いつもは桃城などにおごって貰ったりしていたし、手塚にそんなことを言うなんて自分でも思っていなかったらしい。

だけどリョーマはこの時まだ気付いてないが手塚と一緒に帰りたかったのだ。
ただその口実が欲しかった。

「お前は先輩におごらせるのが趣味のようだな…」
手塚はノートに練習メニューなどを書き終えたようで、ノートを閉じてからバッグを持って部室を出ようとする。

その様子を見ていたリョーマは駄目なんだ…と落ち込んで俯いたままだった。

「ほら、何をしている越前。おごってやるから早く来い」
手塚は部室のドアから出る前に突っ立ったままのリョーマに向けて言い放った。

その言葉を聞いた瞬間リョーマは嬉しくてかすかに手塚に笑みを浮かべていた。

手塚はその表情に戸惑いながらも部室にカギをかけて、リョーマと共に部室を後にする。





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