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偽人語り
儀式
ほら、『いつひとさん』はまじない方法が二種類あるじゃねぇか?
オレは見つからないのを優先して池の水を汲んで家の洗面所でやったんだよ。

こっ!怖くねぇよ!
効果の有るまじないだから見付からないようにしただけだっつーの!
本当だっ!断じて怖かったわけじゃねぇっ!

まぁ、12時になっても水には何も変化無くって終わったけどよ。

やっぱり、池の前でやった方が良いんだろーよ。
なんてったって、お社の前だからな。神秘的な力か何かが働くんだろーさ。

…ばっ!馬鹿やろっ!
んな事聞いてくんじゃねぇよ!
プライバシーの侵害だ、プライ…────わぁああっ!すんません!話します、話します!

───…『理想の自分』なんて、いまいちピンと来ねぇからよ。高校行けて、剣道で日本一取って───………………す、好きな人と結婚出来てれば…良いかな…何て…───。

だぁあああっ!うっせぇっ!
そこまで聞いてくんじゃねぇよ!

沢田、馬鹿っ!
言ってんじゃねぇ!
ぶっ飛ば…───すんません!変な事は金輪際言いません!

(何なんだよ、沢田の知り合い!馬鹿みてぇに怖い奴ばっかりじゃねぇか!!)

ちげぇよ!京子が…────関係ないとは言わねぇが…笹川は普通にダチだ。
小学から一緒なんだよ。

つーか。あんな熱血馬鹿…───アホと筋肉の固まりに可愛い妹居ると思うか、フツー?

そうなんだよ。
可愛いだけじゃなくて優しいし、天然で兄貴想いな所があるだろ?

そうそう。
良い子だよな、京子は。
料理だって上手いし…───あんな子がお嫁さんだったらな…なんて…───。

つーか、そこのナルシスト。
冷めた目で見て来んな!
聞いてきたのテメェだろーが!

───ひ、人の細やかな幸せに茶々入れて来るんじゃねぇよ!じ、じゃあ、テメェの夢は何なんだよ!

───────・・・・・はぁ?
いや…ん………?
(オレの聞き間違いか?『沢田の身体を』って…───こいつ…)

もう一回言って…───止めんなよ、沢田…───って!マジで止めろ!土下座してくんな!聞かねぇから、止めてくれ!
(向けられる視線が激しく痛いっ!マジで何なんだよ、こいつらっ!)

と、取り敢えずだ!
オレの『いつひとさん』の話はこれまでだ!
あとはねぇよ!

マジで無いって!
おい!何でナチュラルにバット出してきてんだっ?!

(沢田!ナイスだナイス!ナイス過ぎるっ!!…───つーか、何で本人であるオレより沢田の話を聞くんだよ、こいつらっ!)

あ?
いや、気にしてねぇよ…。

うっせぇ!髪型がダサいのは仕方ねぇ!つーか、テメェに一番言われたくねぇよ、パイナップル頭!

(あ、あれ?き、気のせいか?何か、あいつヤバくね?)

ひぃいいいっ!

(ヤバイヤバイヤバイ!あいつ、マジで殺る気だ!殺される!!沢田の後ろに隠れるなんて恥曝しなわけがねぇ!今はこいつだけが頼みの綱なんだよ!マジで頑張ってくれ!頼む!見捨て無いでくれっ!!)



わ!悪かった!
もう言わねぇから!
誓う、心から誓う!男として約束する!



うっ!うっせぇな!
笹川と居ると台詞が移るんだよ!

あいつは馬鹿だけど、男として良い奴だからな!



∞∞∞



「だから!茶化すんじゃねぇよ!」

綱吉は持田の答えに心から笑みを浮かべてしまった。
部活違えど、了平の周りに居る人間にさえ影響が出ている事。それが堪らなく嬉しかった。
骸は何だか持田を気に入ったのか、やたらとからかっている。

「聞き覚えがある名前だと思っていましたが、君は喧嘩ランキングで確か…───」
「待てー!骸!その三叉をしまえーっ!」

背中に隠すように持っていた骸は舌打ちする。それを確認した持田は小さく悲鳴を上げた。
確かにこの人達は怖いけれど、だからって綱吉は後ろに隠れられても困るだけだ。
綱吉自身、目の前に居る骸の暴走を抑えられるほど強くない。
取り敢えず話を反らそうと持田に呼び掛け、離れてもらう。大丈夫ですから、と言えば持田は離れてくれた。
すると、突然屋上のドアが錆付いた音をたてていた。

「十代目!やっぱり此処にいらしたんですね?!」
「ちょっと。何で群れてるの」
「ご、獄寺君に雲雀さ…───ぁ?!」

雲雀と共にやってきた獄寺。
あの表情から察するにシャマルは大丈夫みたいだが、問題は雲雀の『服』だった。
顔が青くなる。戦慄を呼ぶ姿と過言ではない出で立ち。



『紅に塗れた』、衣服。



「雲雀さんっ?!何が有ったんですか?!」
「偶々逢った…───で」

ぎろりと雲雀は開いた口が塞がらない持田を睨み付けた。

「そのダサい髪の彼は誰」
「持田先輩です!お兄さんと同じクラスの!それより、怪我は無いんですか?!」

駆け寄れば雲雀は短く平気、と返す。持田を睨み付けていて顔がいつも以上にぶっすりとしている。

「…面倒臭い。沢田以外出て行って」
「誰が出て…───」
「はいっ!失礼しました!」

持田はぴしりと敬礼すると、猛ダッシュで出ていった。その後ろに向かって、綱吉は慌てて声を掛ける。
悲鳴が反響して、いつまでも情けない声が残った。

「うるさい」
「え?」

いきなり頭を殴打され、そのまま吹っ飛び階段を転げ落ちる。更に先を走っていた持田を転がりながら追い抜いて、壁に衝突してから停止した。

バタバタ駆け足が聞こえてきて、真っ先に持田の声がする。

煩かったのは、自分じゃないはずなのに…───。

「お、おい…大丈夫か…?」
「だ、大丈夫です…」

心配してくれている持田が三人見える。指が、六本ぐらぐら揺れて見えた。

「これ、何本だ?」
「ろ、六本れす…」
「保健室行け」

頭がぐわんぐわん揺れて割れそうだ。
それでも綱吉は大丈夫です、と言いながら、ひんやりしている廊下に寝そべった。今は保健室で休んでいる場合では無いような気がするのだ。
すると、持田が溜息を吐いて頭を掻いた。
何でこんな奴に、とぶつぶつと文句を垂れる持田を、見上げる。持田が二人に見える。思いっきり頭を打ったようだと、持田の報告からではく今更理解する。
すると、コツコツ足音が階段を降りてくる。階段が二つ並んでいたが、一つになって降りてきている人間の足が見えた。

「さて、綱吉。応接室。話があるから」

上機嫌に血塗れの暴君は鍵をくるくる回して降りてきた。あの鍵は恐らく屋上の鍵。獄寺達を閉じ込めたから、漸く静かになると思ったのだろう。
しかし、雲雀は持田を見つけるなり再び顔を歪ませた。先程より酷く不機嫌に。

「まだ消え失せてなかったの?」
「いっ!今から消え失せてます!失礼しましたっ!」

持田は脇目も振らずに走り出す。我が身が大事とは言うがその通りだ。暴君の前で下手な友情の群れは雲雀の怒り買うと言う厄災を招くだけだ。
だからと言って、友情の群れを成す間柄でもない持田には逃げてもらうのが一番だ。

「ほら、綱吉。立って」
「あ…はい…───いたたっ」

また頭が揺れる。
本当に痛くて仕方がない。

「本当、丈夫だね。あの階段から転げ落ちたら、普通は病院行ってもおかしくないんだけど」



つまり、貴方はオレを病院送りにしたかったんですか?



「そろそろ、草壁達が調査を終えて帰ってくるからね。おいで」
「あ、はい…」

立ち上がるとやっぱり頭が痛くてふらりとよろめいた。
すると襟首を掴まれて、引っ張られた。首が締まるが服と首の間に手を突っ込んで引っ張り返せば苦しさから解放される。
そして綱吉は雲雀に引っ張られるまま、応接室に連れて行かれるのだった。

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あきゅろす。
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