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隠し神語り
いつだって、開催は突然
「おし。肝試しすっか」

全ての始まりは、リボーンが突然、生徒である沢田綱吉に向かって放った一言だった。

毎年飽きずにやってくるとある夏の朝、綱吉の部屋はその一言だけで冷えきった。
夏休みの補習へ行くべく支度を整えた綱吉は鞄を担ぎ、気だるさを感じていた所にその発言。傍若無人な家庭教師―――リボーンに綱吉は青い顔を向けた。

「嫌だよ!!」
「何でだ?去年もやったろ?」
「だから、嫌だって言ってるんだよ!!」

綱吉は大声でリボーンに反発した。
それもその筈。
去年は仲間達に脅かされ、更にはビアンキの元恋人幽霊に霊界へ引きずり込まれそうになったのだ。
あの恐怖は尋常じゃなかった。

「やらないったらやらな───」
「オレがやるって言ってんだ、やれ」
「ひぃいい!」

拳銃を向けられ、綱吉は普段から刷り込まれているリボーンに対する恐怖で両手を上げた。
一度言いだしたら聞く耳を持たず、我が道を無理矢理通す傍若無人なこの赤ん坊は、にたりと笑って綱吉の顔へ飛び掛かった。

そして、その小さい足で顎を蹴り上げた。

「いってぇ!!」

見事後方に倒れた綱吉。蹴られたと同時に鞄を天井に放り投げてしまった鞄もリボーンに加勢するかのように綱吉の顔面に強襲する。

「いだぁ!」

リボーンは満足そうに笑うと、わざと綱吉の腹に飛び乗り。

「ぐぇっ!」

顔の上にある鞄を踏みつけて。

「んぐっ!!」

部屋のドアを開けた。

「安心しろ、オレから呼び掛けておいてやる」
「だからいらないって!」
「見てろ。最高に楽しくしてやるぞ。大奮発だ」
「しなくていいよリボーン!……って、おい!」

ばたんっ。

綱吉の声はリボーンに届くこと無くドアが閉められた。
といっても、聞こえていた所で無視するに決まっていた。
綱吉は大きな溜め息を吐いて起き上がると、頭を抱えて心中で叫ぶ。


無理だって無理だって!
去年、本物の幽霊に襲われたんだよぉ〜?!

しかもビアンキの元恋人!
この前はたまたまビアンキが追っ払ってくれたけど、また襲われたらどうすんだよ、も〜!!

綱吉は頭を掻き毟る。
どうにか逃げる術は無いのか、全くもって少ないおつむで考えてみたが、逃走方法など綱吉に出てくるわけもなく、夜を迎えることになるのだった。



∞∞∞



「リボーン…あのさ───」

空気は最悪だった。
綱吉は目の前が暗い気がした。

夜という時間だからではない。
現在、霊界に引きずり込まれそうになった墓場前に居るわけでもない。
只今集合場所になっている並盛神社の前なので、幽霊なんて出てくるわけ無い。

つまり、そんなの全く関係ないのだ。

関係無いが、関係があるかもしれないという曖昧な状況に陥っていた。

きぃん、きんっ!

けたたましくぶつかり合う金属音。
只今、幽霊なんかより恐いものが二人、目の前で激しいぶつかり合いを繰り返していた。

「六道骸ぉおお!」
「雲雀恭弥ぁああ!」


きぃんきぃん。がすっ。めこぉ!



「やめて下さいよ!二人共!」
「煩い!」

最悪コンビの二人同時に怒鳴られて、綱吉は悲鳴を上げて怯えるしかなかった。

只今肝試し大会をすべく並盛神社前に集合しているのだが、リボーンが勝手に決定したペアに不服な二人が片方くたばるまで争っている真っ最中なのだ。
リボーンは平気で高温の油に冷水を突っ込むから困る。

「リボーン!何であの二人ペアなんだよ!」
「んじゃ、お前ペアやるか?」
「……ソレも嫌だぁ〜!」

喚きたてれば、綱吉は頭を抱えて膝を着いた。
今回のペアはリボーンが無理矢理決めたため、一部とっても危ないペアになっていた。

一番、笹川・ランボ
二番、獄寺VS山本
三番、犬・千種
四番、恭弥VS骸
五番、綱吉・クローム

「何か問題有るのか?」

一番は、まぁまぁ宜しいかぎり。寧ろナイスチョイスと言っていい。
二番は何時もの事だから、山本が何とかするだろう。
三番は何だかんだ言って名コンビだ。
五番目は自分が情けない面を曝すだけで事は済むが、問題は四番。

「あるよ!大有りだよ、特に四番目ぇえ!」



四番目、恭弥VS骸



「明らかにミスチョイスだよ!明らかに嫌がらせだろ!二人にもオレにも!」

この先思いやられるー!
あぁああぁ〜!
オレに明日は無いぃいい〜!



「ちょっと沢田綱吉!」



最凶コンビの目が、殺気に煌めいた。
見事、迷いなき完璧な動きで同時に綱吉の胸倉を掴み上げて喉元に武器を当ててきた。
そして、オッドアイを煌めかせる骸が口を開いた。

「この明らかなミスチョイス…ボンゴレの仕業だと聞きましたが…?」
「えぇええ?!誰がそんな事言った…───」
「赤ん坊が言ってたよ?」
「リボォオオンっ!!」

綱吉はリボーンに恨み辛みを込めて怒鳴り上げた。

が。

「んじゃ、場所移動すんぞー」

当本人はメンバーが揃ったし、ペアの報告もしたので目的地へと移動を開始した。

周りなど気にしない。
これが自分の家庭教師だ。

取り敢えず移動を開始したので、イライラの納まっていない二人は場所移動をしながら戦闘を繰り広げると言う何とも器用なことをしてのける。

「あぁ…オレ……明日生きてないかも…」
「ボス…?」

綱吉とペアを組むことになっているクローム髑髏が顔を覗き込んできた。

「やっぱり私…参加するのやめる…?」
「えぇ?!───あ、うん!ごめんね!やっぱり、恐いよね?!あははは───」
「ううん…違う……」
「え?───じ、じゃあ何で?」

綱吉が聞いてみると、クロームは目を反らす。雲雀と戦い続けている骸を見た。

「楽しそうだから来てみたんだけど─────本当は骸様に『行っちゃだめ』って言われてるの…───」
「え?……骸に……?」

クロームはこくりと頷いて三叉槍を抱き締めると、綱吉を上目遣いで見上げた。



「特に、『私』と『千種』は駄目だって……」



綱吉は目をぱちくりさせてクロームを見下ろした。
それ以上言うつもりはないのか、顔を反らしてしまう。

でも何で骸はそんな事を言うんだろう?

そう思いながらも、綱吉は首を傾げた。

「なら来くてよかったのに…オレもあんまり好きじゃないし…」
「でも、ボスの強制参加要請だって、ちっちゃい子が───」

「リボォオオンっ!!」

先をてくてく歩くリボーンに再び怒鳴り上げたが、何時ものように無視を決め込まれた。
綱吉は名前を呼ぶだけとなり、これから開催される肝試しには不安要素山積みの状態となった。

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あきゅろす。
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