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セッタン・テンポ学園
校内案内
広大な敷地を誇るセッタン・テンポ学園はとにかく広かった。
学校は四連に分かれていて、それぞれ中等部、高等部の学校に分かれている。残りの一棟は職員室類の棟である。
三階は基本、生徒教室が密集していて、二階が中、高等部勉強専用の階。一階はと言うと実技を行う教科、美術や体育、運動部の部室とかたくさんある。生協もあり、昼頃になれば一番賑わう階だ。全部連絡通路で繋がっている。
ちなみに、小等部は学年が多いため別に学校がたてられている。

「広いなぁ…初めてだよ、こんな学校」
「まぁ滅多に来れるような学校ではありませんからね」
「そうだぞ!コラ!」

綱吉は辺りをきょろきょろと見回している。
好奇心旺盛な子供みたいだった。高等部の特待生ピンを付けていなければ誰もが彼を中等部の学生だと思うだろう。
コロネロは、風を連れて、綱吉を校内案内していた。リボーンも誘ったが、めんどくさいの一言で片づけられた。
確かに、面倒なのは認められたのでそれ以上は無理に言わなかった。

「彼は見ていて飽きませんね…スカルも来たら良かったですね」
「あいつは昼食担当だろ、コラ!」
「そうですね。彼のコネがあるから美味しいお弁当も頂けるのですから、感謝しなくては」

謝々、と掌を合わせた。

「凄い!中庭だっ!」

目をキラキラさせて窓にべたりと張り付いている姿に、コロネロは精神年齢を疑いたくなってきた。

「あいつ…本当はいくつなんだろうな。なんか、童顔にも程があるっていうか…」
「直接聞いてみたらどうでしょう?」
「いや。答えは分かり切ってるだろ?」
「そうですか?案外14歳かもしれませんよ?」
「それだったら中等部…―――あぁ、そうか。学力高ければ飛び級出来るもんな」

マジマジと、改めて綱吉を見て、一体いくつなんだろうかと頭を悩ませる。
すると綱吉はこちらを向いて手を振ると、駆け寄ってきた。
二人の前で立ち止まると、見上げてきた。

「あの。今更気付いたんですけど…―――オレ、目立ちますか?」
「ん?」

綱吉は辺りを見回してから、もう一度こちらを見てきた。

「気のせいかな…何か、見られてる気がするんですけど…」
「あぁ。多分気のせいじゃないと思いますよ」

風が持ち前の笑顔を浮かべたまま。綱吉の答えを紡ぐ。

「私達アルコバレーノクラスは、昼休みとか教室から出ないんですよ―――向けられる視線があまり好きじゃなくて。知っていますか?この学校にはいくつか普通の学校とは変わったルールがあるのですよ?」
「え?」

首を傾げている綱吉は気付いていなかったらしい。
向けられている視線の中に『殺気』が混じっていることに。
風は綱吉の肩を掴み、たんっ、と床を蹴った。
途端、綱吉の肩の上で逆さまになるとそのまま後ろ脚を身体ごと振りおろした。

「ぶべっ!」
「ぶべ?」

鈍い音が耳の奥に届く。
綱吉はくるりと振り向くと顔をさぁっと青くした。
当然である。風がたった今、瞬殺と言っても過言ではないスピードで綱吉の真後ろにいた巨体を一発で仕留めたのだ。

「ほら、オレ達って高等部で特待生クラスだろ?高等部はアルコバレーノ、中等部はボンゴレ、小等部はマーレって名前で分けられてるんだ、コラ!で、オレ達を負かせばそのクラスに昇進できるようになってるんだぜ!コラ!」
「無茶苦茶ぁああ?!」
「そうか?結構刺激的で楽しいぞ!コラ!実践訓練にもなるしな!コラ!」

綱吉はガタガタと身体を震わせて自分を見上げてくる。
その後ろでは風が攻撃を放つ音と呻き声をリズミカルに聞いていた。

「あのあのあの!それってヤバいんじゃ!って言うか、校内案内しない方が良いんじゃ!!」
「気にすんな、コラ!オレ達が好きでしてるし、ムシャクシャした時とか校内歩きまわって八つ当たりしてるからな!コラ!」

けらっと笑うと、綱吉の顔が更に蒼白した。
まぁ、見た目から戦闘タイプには見えないし、仕方ないだろう。
おじが勝手に入れた学校だからという理由で転入しきた様な奴だ。何も知らないかもしれない。
どさっ、と音がはっきり聞こえたと思うと、急に静かになった。
そして騒がしいと思えるほどの拍手喝采、黄色い悲鳴、驚愕の雄たけびが空間を包んだ。

さすが風さん!十人をたった一分で!
風さぁ〜ん!さすが〜っ!
って!あそこにいるのコロネロだ!コロネロ先輩もいるぞ!

「え…これって…」
「実はアルコバレーノクラスで当時のまま生き残ってるのってオレと風、リボーン、スカル。クラスには居るんだがマーモンとヴェルデっていう奴だけなんだ―――だからお前、結構珍しいんだぜ?コラ!」
「えぇ?!そ、そんなに?!」
「えぇ。そう言っているつもりなのですがね」

風は爽やかな笑顔を浮かべて、戻って来る。
汗一つかいていない辺り、本当に良い運動したと思っているんだろう。

「特待生クラスは、基本転入生なんて来ないんですよ。負けた方から名簿から引きずり落とされていつの間にか違う方がいらっしゃるんです―――編入試験、大変ではなかったですか?」
「え?う〜んと…――――」

首を傾げた綱吉は、腕を組んで――――本当に困っているようだった。



「そんな、大変だった覚えは…無い……かな…」



爆弾投下、の瞬間である。

「さすがに…オレは大変だったぞ…?実技は簡単だったけど、学力の方は…」
「私もです。難しかったですよ?」

問いかけられて、綱吉はわたわたと焦りを見せ始める。
周りを見回して二人の背中を押した。

「っていうか!そんな危険なのにオレをのさばらせてたの?!」
「ん?あ〜。アルコバレーノに入ってくるぐらいなんだから、大丈夫かなって思ったんだぞ!コラ!」
「私もです」
「そんなぁっ!」

綱吉が泣きそうな顔でまた見上げてくる。
弟ってこんな感じなんだろうかと、コロネロは漠然と考えた。

「じゃ、今日は校内見学を後回しにして、この学校のルールとか説明しますか?」
「そうするか。でも、お前理事長に推されてきたんだろ?聞いてなかったのか?」
「え…と……その…」
「まぁ、良いじゃないですか?教室に戻りましょう?そろそろ、スカルが昼食を買ってきてくれているでしょうし、ね?」

風の提案に綱吉は即刻乗って行った。

「じゃ、風が説明しておいてくれ、コラ。オレはもう少しブラブラしてから行くぜ、コラ!」
「気をつけて下さいよ?ちゃんと武器は携帯していますか?」
「してねぇぜ、コラ!」
「全く、無茶苦茶ですね」

にっこりと笑っている姿は、そんなに危機感を抱いているようには見えなかった。
ただ綱吉が心配そうな顔をしてこっちを見つめていた。

「あ、あの…」
「何だ、コラ!」

しばしモジモジとしていたが、意を決したようにこちらを見てきた。

射抜かれた、と言っても良かった。

「あんまり、無茶しないでね?」



頭が、一瞬で真っ白になった。



「怪我したりとかしたら…嫌だから、さ?」

じっと見つめてくる。
本当に、年齢を聞きたくなってくる。
頭の後ろに手を組んで、にっと笑って見せる。



「大丈夫だぜ、コラ!オレを信じろ!」











「一番狙われるのはリボーンですからね」
「そこ良いとこ持っていくんじゃねぇよ!コラ!」

風ははい?と首を傾げる。
超度級の天然は、残酷な真実しか語らないから困る。
今、間違いなく格好良かった所だ。

「そ!それでも!」

綱吉が、じっとこっちを見たままだった。

「怪我したら…嫌だから…―――」

苦い笑みを、浮かべる。



「気をつけて、ね?」



少し、首を傾げた綱吉。
また彼に、にっと笑って見せた。

「任せろ、コラ!これでも格闘技はだいたい網羅してんだからな!コラ!」

二人に手を振りながら、集まってきている殺気に神経を集中させる。
二人がその場を去っていく姿を確認する。
視界から完全に消えて、コロネロはくすりと笑いながらポケットに手を突っ込んだ。

「暇なもんだな、コラ!」

その台詞を放つと同時に、生徒の人込みから人影が飛び出してきた。
どれも、真剣や斧、ハンマーまで持っている。



「アルコバレーノクラス!舐めんじゃねぇぞ!コラ!」



きっと、自分の表情は。
狂ったように戦闘を渇望している人間の浮かべる笑顔に違いない。



誰かに心配してもらうのが、勿体無いくらいに。





『校内案内』End

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