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セッタン・テンポ学園

「おい、風。余計なこと言うんじゃねぇ」
「え?学生の鏡とでも言うべき行動でしょう?」
「おい、どう言うことだ!説明しろ!コラ!こいつ、普段から勉強してねぇんじゃねぇのか?!」

そう問いかけてくるコロネロ。後ろを見れば殺気を放ちながら「喋んじゃねぇ」と訴えてくるリボーン。目の前にはその二人の様子を見守る風の姿。

仲、良いんだなぁ…。

「ヘラヘラしてないで答えろ!コラ!」
「風に聞かなくたって頭で考えりゃ分かるだろ、バカネロ」
「なんだと?!コラ!」

そう言って、リボーンとコロネロが睨みながら互いに歩み寄っていく
今にも始まりだしそうな喧嘩の雰囲気に、綱吉に一種の危機を察知した。どうしたらいいんだろうと思って風を見やるが、彼は至ってそれを楽しそうに眺めていた。

「大丈夫ですよ、沢田君。本当はいつもあんな感じなんです」
「そ…そうなんですか…?」
「えぇ。二人はライバルですから」
「はぁ?!」

二人は声を揃えると、同時に相手の胸倉を掴んで指を差した。

「こいつなんかライバルじゃねぇ!」

また、声が揃った。

「こいつなんてオレの足元にもおよばねぇぞ!コラ!」
「相手にする価値もねぇ」
「んだと?!」

コロネロがリボーンを再び睨みつけると、リボーンはにやりと笑った。

「さて、行きましょうか。沢田君」
「え?!」

風は鞄を手に持って背中を押してきた。
自分は筆記用具とノートしか持ってきていないので、ロッカーから取りださなきゃいけない。

「でも、あの二人ほっといていいの?!」
「そうですね。大丈夫ですよ」

そう言いながら、教室の外まで出してもらう。

「この教室が消し飛ぶぐらいですから、大丈夫じゃないですか?」
「どこが大丈夫なんですぅう?!」

今、とても楽しそうな笑顔で黒いこと平然と言ったぞ、この人!!

「全然良くないです!止めましょうよ!怪我しちゃうじゃないですか!!」
「あぁ…そうですね…」

と、今更その事実に気づいたように風は少し首を傾けた。しばし沈黙し、二人の喧嘩勃発寸前の姿を見ながら、眉間に皺を寄せた。

「少し残念ですが…―――」
「えぇ?!何処がぁ?!危ないじゃないですか?!」
「止めに行って下さい。僕は見守ってますので」
「えぇ?!」

人の話を完全に無視し、にっこりと無邪気な笑顔を浮かべてこっちに振ってきた。

「楽しいんですよ。久々に見れて」
「ひ、久々?!いえ、喧嘩なんてしない方が良いんじゃ!特に大規模に物を破壊するような喧嘩は!」

しかし、頼みの綱であるはずの風は至って楽しそうに見守ったままだった。

「いえ。そっちの方が彼ららしくって良いんですよ」
「止めに行ってきまっす!!」

怪我なんかしたら危ないじゃないか!
風さん、気にし無さ過ぎだぁああっ!!

走り出した後で風の呼びとめる声が聞こえたが、喧嘩を止める方が先だ。綱吉は二人の間に入って行っていく。

「やめてください、喧嘩なんて!」

しかし、同時に二人に睨みつけられた。

「黙ってろ…」
「黙ってろ!コラ!」

二人とも目つきが鋭いせいで、余計に怖い顔をしていた。
一瞬で涙線に熱を帯びて、涙が溢れてきた。
しかも二人は本気でやる気らしく、自分が駆け寄るまえに互いに武器を片手に握っていた。
リボーンは拳銃。コロネロはどこから出したのかライフルだった。

とてつもなく、不味い予感しかしない。無意識に、一番頼りになりそうな人物…―――風へと視線を送ってみた。
彼はにこにこと楽しそうに笑っていたが、こちらの視線に気づいてくれたらしく苦笑した。
そして、自分の要望に答えてくれるべくこちらに来てくれた。

「楽しそうですね?」
「邪魔すんな、コラ!」
「てめぇもコロネロごとハチの巣にすんぞ…」

今度は二人に風が睨みつけられた。
しかし彼は気にする風でも無く、首を少し傾けながら笑った。

「怖いですよ、お二人共―――窓の外にダイブしますか?」

そして、満面の優しい笑顔を浮かべる風に綱吉は後悔した。



「此処は三階ですから、頭から落ちれば楽になれますよ?―――怒りも何も感じず」



本当に敵に回しちゃいけない人、この人だぁあああっ!!



からーん、と二人が握っていた武器が地面へと落ちる。
そして一瞬にして手を握り合い、肩を組み合う。

「だ、大丈夫!ほら、喧嘩してないから!!もうしてないから!な!」
「そ、そうだぞコラ!オレ達仲良し!仲良しだ!!コラ!」

な!と顔を見合わせると、真っ蒼な顔から汗が噴き出して床へと垂れ落ちる。
すると、風はそうですか、と呟いて。

また何でもないようににっこり笑った。

「そうですか。それなら良かったです。では」

と風は鞄を持ちあげて、首を傾けた。

「授業に、行きましょうか?」

キーンコーンカーンコーン。

「あ」

四人が同時に顔を合わせて時計を見上げた。
時間的には、授業開始のチャイムである。

「おや、遅刻みたいですね」

風はいつものように笑って綱吉の腕を引いた。

「では、私たちは先に行ってますので」
「え?―――わぁあっ!」

強引に腕を引っ張られて、教室の外へと飛び出した。腕を引かれてばかりではこっちがこけて時間をロスしてしまうと思い、そのまま彼の歩調に合わせる。
かなりペースが速いが、追いつけないほどじゃない。
風はじっとこっちを見ていたが、またにっこり笑ってきてくれた。

「もう少し、ペース上げても良いですか?」
「え?!まだ上がるんですか?!」

そう言いながら階段を駆け降りる。というより、階段を一気に何段も飛ばして降りている。十段以上もある階段を、彼はたった二歩で踊り場に辿り着く。
綱吉は階段のおしゃれな手摺に飛び乗ると、そこから策に掴まりながら降りる。
こんなに無駄に大きい階段だ。手摺を伝って下りた方が早いと判断する。

「身軽ですね。教室は二階ですよ」

階段の手摺に降り立つと、綱吉は手摺に座る。そのまま滑って二階へ着地する。それと同時に風も横にやって来ると颯爽と右に曲がった。

「早ぁっ!」

その後、ペースが格段に上がった風にはどんどん引き離されたが、そのお陰か、教師が来る前に間に合って席に着くことができた。置いて行かれた二人はと言うと。

「遅刻したから、宿題は倍と放課後グランド百周だ」

噂の鬼教師に、スパルタを強いられり羽目となった。





『一限目』END

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あきゅろす。
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