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セッタン・テンポ学園
一限目
HRが終わると、隣にいるフォンと言う人が綱吉に声をかけにきてくれた。

「沢田君。改めて自己紹介しますね?僕はフォン。漢字で『風』と書くんですよ」
「そうなんだ!」

ということは、アジア出身なんだ、と胸が少しほっとする。
しかも親切に日本語で声をかけてくれる。
イタリア語はあまり流暢に喋れないのでこの先大丈夫だろうかと思っていたが、これで何とかなりそうだった。

「えっと…中国からですか?」
「はい。学費が全額免除ということでこの学校に来させてもらったんです」
「そうなんだ!凄いですね!」
「君の方こそ」

と優しい笑顔を向けてくれた。
にこやかに笑うその表情はなんだか人懐っこいような印象を与える。

「このクラスに入って来るなんて、君も相当優秀でしょう?」
「そ、そんなことないですよ!…あっちだと、ダメツナって呼ばれてたし…―――っていうか…え?ここは…そんな凄いクラスなの…?」

おや…と目をぱちくりさせる。
どうやら不味い質問をしたらしい。

「あ、あはは!あの!ごめんなさい!手続きとか全部おじ…がやってくれてて…ドッキリとか好きな人だから、何にも教えないで色んな所に連れてってくれる人だから…その―――」
「いえ、良いんですよ。それに関してはまたあとで聞きましょう。それよりも…」

と、風はまたにっこりと笑ってくれた。

「ここに来るにはそれなりに優秀な理由があるはずですよ?自身を持ってください?」
「あ…」

自信…。

綱吉は緊張で雁字搦めだった身体が、するりと解けていく感覚を覚えた。
なんだか嬉しくなって、少し頬が痛く感じるが自然と笑みが零れた。

「あ、あの…ありがとうございます…」

今まで、そんなこと言われたこと無かったから。
―――言われないのが、普通だと思っていたから。

「それに、失礼なのはその人達の方ですよ」
「え?」

綱吉は首を傾げて見上げる。
やっぱり高等部なだけあって身長が高くて見上げる形になってしまう。

「人のあだ名に『ダメ』を付けるなんて失礼ですよ―――人として、ね?」

また、身体が固まって。
自分でも分かるぐらい大きく目を見開いた。
風は目を一瞬細めたが、すぐにまたにっこり笑った。

「ところで、変な質問してもよろしいですか?」
「はい?」

突然話題を切り替えられて声が裏返ってしまった。
そして素敵に爽やかな笑顔でとんでもないことを言ってきた。



「君、女顔って言われませんか?」
「いっ?!」



次の瞬間、顔を真っ赤にさせてゆでダコが完成する。
確かに母親似だと言われるがそこまでか!と叫びたくなってしまう。恥ずかしくなって風の方を向いていた身体を机へと向けてしまった。

「どうやら図星みたいですね。お母様に似たんでしょう?」
「あ、あはは…はい…―――」

この人!人の心まで読めるのか!!

「おい、いきなりその質問は無いだろ!コラ!」
「はい?」

突然後ろから元気な声に問いかけられて振り向いた。
その人物は―――すでに一限目へ行く準備を済ませて声を掛けに来てくれたようだった。
周りを見回してみると、すでに生徒達は授業を受けるべく足を運んでしまっていて、自分達と机に突っ伏している人が、一人。

「オレはコロネロだ、コラ!よろしくな!」

そう言って伸ばしてきた手をと顔を交互に見やる。

「こっちこそ、よろしく」

恐る恐る、手を握る。
本当に嬉しい。
今まで、本当にこんなこと無かったから。
すると、コロネロはまたにかっと笑った。

「お前、見た目と違って結構握力あるんだな」
「えっ?!あ!ごめんっ!強かった?!」

慌てて手を離す。
嬉しくて力が無駄に籠ってしまったらしい。

「だだだ、大丈夫?!」
「握手にしてはな!でも大丈夫だぞ、コラ!」

そう言うと肩をがしりと掴んできた。
引き寄せられて近いところに格好いい顔がやって来た。

「よし!一限目は地理だからな!教室移動するぞ!」
「え?!教室移動するの?!」
「ん?何言ってんだコラ!普通だろ?」

あぁ、風は何かを思いついて口を開いた。

「日本では教室に先生が来ますけど、外国では基本生徒がその授業を受け持つ先生の所に行くんですよ。教科書と、ノートを持って。机は自由です。うるさくしなければ、友人の隣に座っても構わないんですよ」
「そうなんだ」「そうなのか」

綱吉とコロネロが声を揃う。
外国の授業って日本と違うんだ。少し勉強になった。大学みたいだなと思っていると、コロネロはそうだ!と声を張り上げた。

「この学校やたら広いから、昼休みにでも案内するか!コラ!」
「そうですね、最初の内は一人だと迷うでしょうね」
「おい、リボーン!お前も来いよ!コラ!」
「あん?」

コロネロと風が向いた先を、自分も見やる。
机に突っ伏したままの黒い人…―――さっきも思ったけど、奇麗な人だ。
リボーンと呼ばれた人物は、机に埋めていた顔だけを向けてきた。

「次地理だぞ!コラ!」

リボーンはじっとこっちを見て何か考えているようだった。
しばし見ていた風は何か溜息を吐きたそうに目を細めてこちらを向いてきた。
そして、またにっこりと笑ってきた。



「面倒くせぇ。行かねぇ」



そう言って、また机に顔を埋めた。

「成績トップが授業出ないでテストで満点取ったら嫌味だろ!コラ!」
「行っても寝る自信がある…受けても寝ててテストで満点取ったら嫌味だろ」
「え?そうなの?」

首を傾げたのは、綱吉だった。
何故か、三人がこっちを向いてきた。一気に視線が集中する。
少し息が詰まるけど、それは無いと思う。

「だってそれって、家で勉強してる…ってことだよね?じゃなきゃ、『普通に考えて』教科書の内容って分からないじゃない?そうなるとテストも『出来ない』よね?」

キョトンとしたコロネロとリボーンの表情が、向けられた。
風もキョトンとしていたが、いつものにこやかな表情に戻って手を広げた。

「沢田君の観点は素晴らしいですね」

ぱん、と両手が合わさる。
さっきとはまた別の笑顔。
頬が少し紅潮していて、本当に嬉しそうな笑顔だった。
その後ろで、リボーンががたんと立ち上がった。

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あきゅろす。
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