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セッタン・テンポ学園
転入生
セッタン・テンポ学園。
お金持ちのお坊ちゃん、頭脳明晰、スポーツ、あらゆる分野で特化した人間が通う男子校。
イタリアでも学力はトップを誇るといわれている。
学生に利用させるのかと疑わしく思えるぐらい豪華な寮が配備された全寮制。
学生だけでなく教師陣の住居スペースも完備されている。
中庭、図書館、各種目別運動場などが設置されていて、セッタン・テンポ学園は敷地は国の大統領をも上回る敷地を誇っている。
しかし、森に囲まれているため、街からここに来るまで車で二十分はかかるのが難点だろう。

基本、この学校は私服で、学年を表すために色別のピンで分けられている。必ず左胸につけるように指示されている。
中等部一年は黄色。
   二年は緑、
   三年は赤。
高等部一年は青、
   二年は藍、
   三年は紫。
小中高特待生クラスはオレンジとなっている。

小等部も黄色から一年となっていて、六年で紫となっている。
ピンの形は小等部で翼、中等部で貝、高等部でおしゃぶりとなっている。年上なのに、何故かその形である。

多分、理事長の頭が悪いのだ。もしくはセンスが欠片もないのだろうとリボーンは解釈している。

そして、高等部特待生クラス『アルコバレーノ』。
ここは優秀な人間を詰め込んだクラス。そこにリボーンはいた。
黒い髪がツンツンと立って、モミ上げがクルリと渦を描いている。イタリア人にしては珍しく黒い瞳を持っていた。
暇そうに、朝のHR前の教室で外を見ていた。

彼―――リボーンは特にずば抜けて優秀だった。

学年では常にトップで、運動にも長けている。
おまけに顔も良いときた。
趣味を含む特技は射撃。

腕前は百発百中。

射撃の世界大会に暇だからという理由で出場し、齢16歳という最年少記録を叩き出した揚句に優勝したという武勇伝を持っている高等生二年。

「おい、リボーン。知ってるか?今日、転入生来るんだってよ?コラ!」

リボーンは問いかけてきた人物―――コロネロを一瞥した。
彼も同じく二年生で、金髪の爆発頭に迷彩のバンダナが巻かれている。
彼は将来軍人になりたいとかで体術とライフルを得意としている。肩には白い鷲を載せていた。人懐っこい笑顔を浮かべて、暇そうにしているリボーンの机に手を着いた。

「このクラスにか?」
「あぁ!理事長が推した奴らしいぞ!コラ!」
「あの…姿の見えない理事長が?」

さらに首を捻った。
いつも理事長は多忙のためとか言って挨拶には来ない。
代わりに、その代理のGとか言う顔面に刺青を入れた赤髪の男―――教頭に挨拶をさせている。
歴代で、誰も理事長の姿を見た者はいないと聞く。

「嘘じゃないのか?理事長なんて居ないだろ」
「この学校を立てた方がいるんですから、理事長もいらっしゃいますよ」

大人びた、静かな口調で割って入ってきたのは風。黒いショートヘアーの後ろには、三つ網が腰まで伸びている。中国の拳法大会で三年連続優勝を納めている青年だった。リボーンやコロネロと同じく二年生。
いつも笑顔が絶えず、何かと喧嘩の仲裁に入って来てくれる―――天然爆弾。
空気は読むべき所で読んでくれるが、それ以外は究極に読んでこない。怒涛の天然発言で相手を追い込む。

この前はいつもの表情で教育によろしくない、放送禁止用語と同一性のある言葉について「これって何なんですか?」とか聞いてきた。

知らないなら聞かなくて良いことまで聞いてくるから困る。
当然だが、リボーン達は『知らなくてもいいことだ』と言って教えなかった。

「別に、どうでも良いな」

リボーンはそう言って机に突っ伏した。

「寝る…」
「おい!HR始まるぞ!寝るんじゃねぇぞコラ!」
「そうですよ。机で寝たら腰が悪くなります」
「そっちじゃねぇよ!コラ!」
「じゃあ、保健室で寝てくるわ」

適切な突っ込みを入れたコロネロを無視し、リボーンは気だるそうに立ち上がって腕を伸ばした。

「待ちやがれってんだコラ!」
「適当に言っとけ。担任なら何も言わないだろ―――」
「待て、リボーン」

突然、教卓側のドアが開いた。
そこには金髪のボンバーヘッド…―――このアルコバレーノクラスの担任を請け負っているジョットが姿を現した。ベストとパンツは黒白のストライプ。赤いネクタイを締めている。

「体調悪いなら心配するし、サボるなら注意はさせてもらうぞ」

暁色の瞳がリボーンを見つめて笑っていた。

「相変わらず、お前は暇そうだな」

そう言って、苦笑した。
リボーンはジョットを一瞥して、小さくため息を吐くと席へと戻った。
リボーンにとって彼は担任の教師であり、恩人でもあった。身寄りのない自分にこの学校に入れてくれたのも彼で、今は保護者のような立場である。

慌てて席に着くコロネロとは対象に、風はゆっくりと着席し、リボーンも席へと渋々戻っていった。

「聞いてる奴の方が多いと思うが、転入生が来ているから紹介する―――入りなさい」

ジョットがドアを一瞥すると、そこからジョットとそっくりな頭…―――というか、ジョットの若い頃のような面持ちを持った少年が入ってきた。違うとすれば、髪の毛の色が栗色で身長がやたら低いことだ。そもそも、高校生なのかも疑わしいぐらいの童顔だ。

「紹介する―――日本からやってきた、沢田綱吉君だ。二年生だから、二年の者達は仲よくしてやってくれ」

名前を紹介された少年は緊張しているのか、少し硬い表情で笑ってきた。

「あの、沢田綱吉です…―――よろしくお願いします」

ぺこりと頭を下げて、じっとこっちを見てきた。
アルコバレーノ、と分けられているが、実際は同じ学年の学生と同じ授業を受ける。
ただ、クラスが特別に分けられているだけなのだ。

数々の、危険な条件付きで。

「じゃあ沢田。風の横に席を置いておいたから、そこに座りなさい」

綱吉は、はい、と答えてぽてぽてと歩きだして―――突然前へつんのめったかと思うと、びたーんと派手な音を立ててずっこけた。

「お、おい綱吉!大丈夫か?!」

慌ててジョットが駆け寄ると、綱吉は苦笑しながら頭を掻いた。

「す、すみません!ちょっと…緊張しすぎて…あはは……」

それなら良いが、とジョットは眉間に皺を寄せた。眉も少し垂れている。
リボーンは少し身を乗り出して、綱吉の歩いていた空間を見つめる。

何もなかった。

どんくさい奴…―――いや、寧ろ何もないところで転べるんだから器用な奴か?

そう思いながら見つめていると、綱吉と目があったような気がした。
しかし、すぐに青い顔をして逸らされてしまった。
確実に目は合っていたらしい。自分の顔が相当怖かったか何かで逸らされたんだろう。

リボーンは特に気にするでもなく、真正面を向いた。
また、すぐに分かる授業を受けるために。
ただ、時間を潰す授業を受けるために。





『転入生』END

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あきゅろす。
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