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日常編?
貴重映像
『アラセンセー! 昼間ブリ〜ぃ♪』

 見知らぬメールアドレスから来たと思って開いてみたら、パソコンが昼間同様紫色のペンキが零れて垂れ、ケタケタ笑う髑髏が画面を占拠した。スカルが相手のパソコンを占拠した証としてわざとこの映像を流すのだ。

 流石に、驚きすぎて手に持っていたコーヒー入りのマグカップを落とした。

 カップが小指に直撃。

 それから中身溢れた。

 熱い。

 カップをぶっ飛ばして、溢れたコーヒーから逃げた。

「────…っ…!」

『あれ? センセーなした?』

 画面いっぱいにスカルが頬杖をついた映像が映る。
 デスクに這い寄って、ノートパソコンについているカメラを起動させる。

「君…──どうやって僕のメールアドレスを入手したの…!」
『え。今日職員室に置きっぱなしにしたパソコンから直接』
「…セキュリティかけてあったはずだけど…」
『あれ、外すの大変でしたよ』
「そう…」

 大変でしたよの一言で終わるの。本当に、君は流石だよ。10個ぐらい仕掛けてあったはずだけど…!
 もう、君対応のために30個仕掛けたら良いのかい?

「ウイルスメールは自動削除されるはずなんだけど。それについて意見は?」
『あ。それならコレの為に解除しておいたので、改めて設定し直して下さい』
「それさえも設定解除したの…!」
『こっちも、なかなかハードなセキュリティーで』

 本気で思ってない顔だ。
 そうそう、とスカルは続ける。

『アラ先生って、子供好きなんですねー。写真、いっぱい入ってました』
「…――何処まで見たの」
『全部見切れないのでオレのパソに転送…――』
「本気で、君のパソコン壊しに行こうか? 復旧の見込みが無いぐらいに粉砕する」
『嘘でーす。でも、『幻想師』って誰ですか? その人の情報メッチャありましたけど。それはこっちに控えあります。あと…――ボンゴレクラスに見知った顔の幼少期と思わしき顔なんだけど。先生のタイプ? ストライクゾーン? え、ショタ趣味?』
「逮捕するよ」

 冗談ですよ、とスカルが手をヒラヒラさせて笑う。

『でも、同じファイルに入っていたから、何かと関係はあるんですよね?』
「そのデータは消去したはずだ…――!」
『ほら。先生のノートパソコンの中って、お宝が沢山ありそうだと思ってデータの復旧を』
「だから、消したよ。『完全に』消したはずだ…! 削除したっていう履歴も、削除データファイルからも…!」
『え。そんなに重要なデータだったんですか? それなら、インターネットの履歴も消した方が良いですよ。だって、そのデータってインターネットから引っ張ってきた奴が大半だったじゃないですか』

 ぴた、と湧き出て来た怒りが収まる。

「君は、何処まで調べ尽くせば気が済むの?」
『全部です』

 そう…──。

 口が、自然に吊り上がる。


 僕と、同じ…──。


「そこはぬかったよ…――僕に落ち度があった。君の情報処理能力はどう頑張っても5から落とせそうにないね…」
『あざーす!』

 ニコニコと笑って敬礼の手を額に当てる。

「それを引っぱり当てたってことは、僕が何してるかも大体調べはついてるんだろ」
『えぇ。相当子供好きなんですね。ビックリしました。この学校に通ってる生徒に孤児院出身者が多いのも納得いきました。ボンゴレ2年のフランもそうなんですね。よっ! あ・し・な・が・お・じ・さん!』

 くすりと笑いながら、頬杖をついて前髪をくしゃりと掴む。
 僕が孤児院のスポンサーやってるのも分かったの? 君はいったい…──何処まで調べてるんだい?

「おちょくってるの? プライバシーの侵害で本当に逮捕するよ?」
『嫌です。まだ学校に居たいです』


〇〇〇


『おちょくってるの? プライバシーの侵害で本当に逮捕するよ?』
『嫌です。まだ学校に居たいです』

 え! え!? えぇええ!!!?
 何か! アラウディ先生凄く優しい顔してる!! アラウディ先生って、こんな風に笑う事あるんだ!! いつもクールビューティーな笑顔で、ふっとしか笑わないから! ちょ、この笑顔はテンションあがる!!
 恥ずかしさと驚きが混じって、テンションがどんどん上昇して行く。見ている自分の顔が火を噴きそうだ。

「ス、ス、スカル! こ、こここ、これ! 見て良いの?!」
「あぁ。アラウディ先生にバラさなければ良いぞー?」

 パソコン画面に食い入る綱吉、風。その2人の後ろからリボーンが覗きこむ。

「うっわ〜。コレ、なっつかしい顔してんなぁ…高校生相手でもこの顔すんのか。ガキ限定だと思ってた」
「レアものですね…――マーモンがこの場に居たら間違いなく商売に持ってきそうです」
‐確かに…――貴重映像だ…コロネロ居なくて良かったな‐
「いやぁ。だってねぇ。こんな顔されたら取っておきたくねぇ? レアモノだぜ? 普段、仏頂面だぜ? 他にもあんぞー?」
「見たい! どんなの有るの?!」
「静かに捧腹絶倒して、笑い過ぎて噎せる」
「見たい!!」

 即刻食いついた自分に、風が肩をぽんと叩く。

「私も興味はありますが、コレは盗撮です。彼のプライバシーを侵しますので、これ以上は控えましょう? それよりも、幻想師ということにアラウディ先生が気付いたから彼の情報が詳しくあるんですね?」
「そうそう」

 そう言いながら映像をぷちりと切ってしまった。残念。こんなに饒舌なアラウディ先生もあまり見たことが無いと言うのに。スカルと話している時はこんなに緩い表情なんだ。
 そんなスカルが少し羨ましくも思えた綱吉は、変な感じ、と内心で笑う。

「幻術使えるからデイモンが引っ張って来たんだと思ってたんだけど、アラ先生が引っ張って来てたもんだから余計ビックリしちゃって。あ、これフランに秘密ね。バレたらどうなるか…」
「大丈夫ですよ。フラン君とも、何があったかは聞きません」

 ちょっと顔が青くなるのは何かあったらしいから。風がそう言うと、助かると頭を下げた。

「あん? でも、そうだとしたら、何でナックルが頼んで来たんだ?」
「そうですね。引っ張ってきたのがアラウディ先生なら、気にかけるのも当然アラウディ先生ですよね?」
「あ、そうだ」

 ぽんと手を打つと、あー、とスカルは手をぱんっと合わせる。

「昔にナックルと知り合ってるからなんだ。その孤児院に入れてくれたのもナックルでさ。詳しくはプライバシーの関係で秘密」
「へぇ。ナックル先生と知り合いなんだ…――」

 すると、ドンドンとドアを叩きつける音がする。
 誰だぁ? とスカルがひょこひょこと玄関へ行き「誰ですかー」と声。

「あっれ。G先生じゃん? 何の用ですか?」
「え? G先生?」

 どうしたんだろうと気になって覗きに行くと、お前ら、と呆れた顔をされた。その手には紙を数枚持っている。

「もうとっくに部屋に戻る時間だろーが。いつまでくっちゃべってんだ。リボーンも居るだろ。あと、風とコロネロ呼べ」

 めんどくせぇなぁ、と言いながらリボーンがやって来て、その後ろに風が続く。

「コロネロは居ませんよ」
「あん? あいつ居ねぇのか? 部屋にも居なかったら何処いん…――」
「大変だぞコラぁーあ!!」

 夜遅いと言うのに大声でコロネロがやって来る。

「おぉ。丁度良い所に来たな」
「おぉおぉお?! 何でGが居るんだ、コラ! もしかして、運動会の話か?!」
「運動会?」

 100メートル走とか、騎馬戦とかやる、あの運動会だろうか? 
 首を傾げていると、手に持っていた紙をリボーン、風に渡す。

「何でテメェがその話し知ってんだ。つーか、正確な名前は技術競技会だが…――デイモンか」
「おう! あのフレッシュパイナップルに会ったぞコラ!!」
「あいつ…何処に顔出しに行ったんだ…?」

 まぁ良いか、と残りの一枚を駆け寄ってきたコロネロにもその紙を渡す。
 リボーンは何かを察知したのか、ろくに見ることなく紙をくしゃくしゃに丸めてしまった。

「他の奴は丸めて良いが、テメェが丸めるな」
「めんどくせぇ。参加しねぇ」
「悪いがテメェだけは強制参加決定事項だ」
「あん?」

 目を細めたリボーンはGを睨んでいる。

「総合部門推薦書…?」
「ん? オレは的当て部門推薦書だぞ、コラ」
「リボーン。テメェも的当て部門の推薦書だ」
「いや。意味がわかんねぇんだけど? 何コレ?」
「あぁ。一応、学校行事だ」

 Gがふぅ、と溜息を零す。

「簡単に言うと、各部門をでバトルだ。詳しい話は明日な」
「いっつも新行事って急だよな!」
「…――デイモン先生に、嵌められると言う事はないですよね…?」

 風の眉間にしわが寄っている。
 そんな風に、大丈夫だ、とGはきっぱり言い切った。

「その紙の末尾見ろ。推薦者は教師だ。各部門に教師が選んで推薦する形を取ってる。全教師がちゃんと見てる」

 くしゃくしゃにした紙をリボーンが広げてみる。すると、苛立ちに青筋が浮かんだ。ちょっと怖い。

「テメェらグルか…!」

 リボーンのクシャクシャになってしまった推薦書を覗きこむ。

「え! 祖父ちゃんだけじゃなく色んな先生に推されてるじゃん!」

 ジョットはともかくとし、目の前のG。朝利雨月、ナックル、D.スペード、アラウディ。セコーンドまで推している。推され過ぎな気もしてならない。多分、直筆サインだ。デイモンの文字が芸能人のサインみたいだ。雨月先生に関しては彼の愛用品なのか毛筆のサインが入っている。

「オレ。ダニエラ先生とザクロ先生だぞ、コラ」
「デイモン…――!!」

 風が怒りのあまり呼び捨てだ。紙が少しシワシワになっている。
 デイモン先生に推されたんだ。

「ボンゴレとアルコバレーノ、学年・特待合同で行う。ただそれは推薦書だからな。参加するしないはお前の意思だが、リボーンは強制だ」
「何でだ!」
「ジョットが元気そうにやる姿が見たいんだと」
「いい加減子離れしろ…!」
「ついでに。オレからの挑戦状みたいなもんだ。的当ての仕掛けはダニエラとオレが考えたからな」

 へっと笑ったGはとても楽しそうだ。
 Gは射撃部の部活顧問、ダニエラはアーチェリー部だ。確かに…いろんな意味で面白そう。まず、ダニエラ先生がスパルタの先生だから、どんな無茶苦茶な仕掛けを考えてるかとか。

「的当ては洞察眼が有る奴とかカメラがあれば良いからな。オレも出るし」
「教師も出るの?!」
「幻覚部門はデイモン出るぞ」
「マジかよ?! じゃあ、審査するの誰なんだ、コラ!」
「参加者の情報は流しても良ことにはなってるが、審査員は一応伏せる事になってる。さっきも言ったが、各部門の説明は明日、時間を設ける。でもこれはあくまで有志だからな。嫌なら断っても良いし、当日になって飛び入り参加もOKってことになってる」

 今まで沈黙していた風が、この、と小さく呟く。

「この…――行事の企画者は…」
「…デイモンだ」

 そうですか、と俯いたままの風は推薦書を綺麗に四つ折りにする。
 そんな風の…――服の裾を引っ張る。

「参加したくないなら、出なくて良いんだよ…?」
「はい。分かってますよ…」

 風はそれから苦笑いを浮かべた。

「デイモンだけではなく、ナックル先生や入江先生、ザクロ先生…――その他諸々の先生に推されてしまうと…断りにくいなぁと思いまして…!! デイモン先生のサインだけインクで塗りつぶして良いですか」
「サインした事実は消えねぇぞ」
「白々しく最後に書いてあるのが、とてもとても腹が立つんですよ…! 破り捨てても。デイモンの所だけ…!」

 あー…――何か、デイモン先生が自ら署名集めた気がする。そんな予感がしてならない。多分的中している。そう思った綱吉も苦笑いを浮かべるしかない。
 リボーンと違って人の良い風では、沢山の人に支持されていると言う事実がきっと堪えているのだ。デイモン以外は間違いなく、ある程度の期待をしているからのサインだ。

「面倒だ、出ねぇ!」
「テメェは強制だっつってんだろーが」
「勝ち逃げなんか許さねぇぞ、コラ! 面白そうじゃねぇか!」

 がっしりとリボーンの肩を掴んで、コロネロが手を上げる。

「リボーンも参加するぜ、コラ!」
「誰がするかって言ってんだ! アホネロ!」
「推薦書没収! オレが預かっておくぜ、コラ!」

 ぱしっと紙をリボーンから強奪したコロネロがヒラヒラと手を振った。

「たまには試しておかねぇと、腕落ちてるのに気づかねぇもんなんだぞコラー!」

 待ちやがれ! と飛び出していくリボーンに、誰が待つかとコロネロは階段を駆け下りて行く。

「まぁ。詳しくは明日だが、推薦書はあくまで推薦だからな。出ないなら出ないで捨てて良い。まぁ、一応親族とか呼ぶ予定だからな。そこの所も一応教えておく」
「デイモンらしい…!」
「まぁ、今日はもう部屋に戻って寝ろ。特別に見逃してやっから」

 じゃあな、とGが手をヒラヒラ振りながら去って行く。
 推薦書を忌々しそうに見下ろしている風…――。

‐何か、他にも理由がありそうな感じだな‐
「(だよね)風。何かあったの?」
「いえ…別に――」

 ポケットへ推薦書を入れるとがり、と奥歯の噛み合わせの音。

「総合部門、と言うのが気になるんですよ…妙な部門でなければ良いのですが…」
「総合部門が…――?」

 失礼します、と頭を下げて風も去っていく。いつもなら笑顔で去っていくのに。
 どうしたんだろうと、スカル、秀忠と一緒になって、綱吉は首を傾ぐのだった。

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