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日常編?
コレが、また
「え?! コロネロが作ったんですか?! それは先輩面しすぎです!!」
「風までそんなこと言うな、コラぁ!」
「だってコロネロは料理音痴じゃないですか!」

 フラン君は大丈夫でしたか、と風が本気で心配している。
 スカルが最終的に作ったことを伝えると、心底ほっとしたように表情を和らげた。風にまでいわれるぐらいの料理音痴なら見てみたいと綱吉は思った。
 再びスカルの部屋に召集をかけると、やはりリボーンも風も駆けつけてくれた。
 綱吉達が食堂に顔を出さないので心配した風が問いかけてきて、さっきの会話になった。
 がっくりと肩を落としたコロネロを励ます。

「そんなに落ち込まないで? そうだ、コロネロ。今度オレに作って…――」
「作らせんな!!」
「作らせたら駄目!」
「作らせては駄目です!!」

 スカルと風だけでなく、あのリボーンでさえ血相を変えて否定した。
 何か、コロネロが可哀想だと思うより先に、コロネロの料理が『未知なる物』というジャンルになって興味が湧き上がってきた。
 しかし、リボーンが肩を掴んで揺すってくる。

「ビアンキのポイズンクッキングより性質悪いんだから、食べてみたいとか冒険すんな! わかったか?!」

 驚いて首を縦に振ることになった。
 多分、リボーンはコロネロの料理で何かあったんだ、とわかる。

「何だと、コラ! リボーンてめぇ、そこまで言うこたぁないだろーが、コラ!」
「自覚しろ、殺人料理人! ここまで言ってもやる気に満ち溢れてるテメェのその頭をどうにかしろ!」
「確かに下手だけど、そこまで言われるほどじゃねぇよ! コラ!」
「言える! グリーンサラダがどうやったら腹下すまであんなゲロマズになるんだ! レタスちぎって、玉葱とかトマト切るだけのはずだろーが!!」

 しかも随分と恐ろしい体験をされたご様子だった。リボーンの顔が真っ青って珍しいことだと思う。
 あれはだなぁ、とコロネロが熱く語りだす前に風と綱吉で二人を宥めにかかる。
 そのやり取りで10分使ってしまったが、互いがソファーに座って落ち着いたところで、コロネロがようやく本題を切り出した。

「フランが何か、詳しく事情を説明してきたんだ、コラ。それにあたって、スカルが今朝提出した基本データが改竄処理してあることが判明したぞ、コラ」
「…改竄…――」

 リボーンがぎろりと睨み付けて銃を構えた。
 スカルは素直に「ごめんなさい!」と半泣きで詫びて、パソコンの横においてあった広辞苑ぐらいある厚さの紙束から、ホッチキスに留められている書類を手に取り渡していく。だけどまだまだ紙がその場に重々しく鎮座しているが、あれは何だろう。
 ぱっとみはフランの眠そうな顔写真が添えられていて、身長、体重など、朝見たよりも委細に書き込まれている。

 そして、紙の隅に書かれた「トータル・リコール」という文字…──映画?

「スカル。この『トータル・リコール』って何ですか?」
「あぁ…それか…――」

 スカルは唇を尖らせて、食い入るように紙を見ているコロネロを一瞥した。

「映画の題名か?」
「リボーンが言ってるのは、その能力が『元ネタ』の映画…――瞬間記憶能力とはまた別の完全記憶能力だ。見たもの、聞いたものを忘れられない能力…」
「あん? それじゃあ、何でオレの名前ちゃんと呼ばねぇんだ、コラ?」
「『馬鹿』の演技だと。基本やる気ゼロだから授業態度悪いしテストは手ぇ抜いて下位ランクにいるんだ。わざとな」
「それを知ってるのって…――」
「んー…? 教師でもそんないないんじゃないか? デイモンは絶対に知らねぇな」

 室内を支配した沈黙。
 そして、当然のように視線がスカルに集中し…――逃げるようにスカルはパソコンの前に在る椅子に座りこんだ。背もたれに胸を押し付けて、回転式の椅子にクルクルと。

「何でそんなこと知ってんだ、スカル。お前の情報源は『学校内部』の基本情報だろう?」
「んー? 一応、学校の情報だぜ? でも詳しく聞かないで。企業秘密。あえて言うなら『俺様天才ハッカーだから』☆」
「納得出来るか」
「してくれよ。つーか、寧ろそれがベスト・オブ・ベストな回答だし」

 スカルはしーっと片目を閉じて人差し指を立てた。

「あーうん…うん、うん、うん…」

 コロネロはそう呟くと、膝の上に乗せていた書類をどさっとローテーブルの上にほっぽり投げた。

「まぁ、詳しくは良いか。コラ」
「良いのかよ」
「良いだろ。フランはフランなんだから、コラ」

 リボーンが、コロネロを一瞥して…──薄く笑みを浮かべて息を吐いた。
 それからコロネロはうーん、と背筋を伸ばして立ち上がると、ソファーを飛び越えて。

「ちょっとフランの奴殴ってくるぜ、コラ」
「病人に手ぇ出すのをちょっとは言わねぇだろ」
「気にすんな、コラ。人の名前ちゃんと呼べんのにチョココロネだぞ。あだ名じゃなくてネームで呼ぶように指導してくるぜ、コラ」

 それからコロネロは、にかっと笑って。

「先輩面でな」

 コラ、と口癖を忘れずに付けて、コロネロは昨日に続いてまたも先にスカルの部屋から姿を消した。
 しばらく沈黙が続いて、リボーンはスカルを見る。

「おい。その紙束何だ? 意味もなく用意しねぇだろ」

 先ほど、自分も気になっていた紙束をリボーンは指差した。
 スカルは無言で先程の厚い紙束を持ってくると、ローテーブルの上にどん、と置いた。

「過去に、『幻術師』として手を貸してきた連中の名前…──いや、『幻想師』だな」

「は?」

 更にその紙束を一叩きすると、スカルはソファーにどかっと座りこんだ。

「あいつ、この学校入学する前では一般人だけ相手にした幻覚で小さな商売してたんだ」
「は…? 幻覚なんて一般人に使ってどうすんだ?」
「リボーンじゃ思い付かないだろうな。鬼畜だし」
「んだと、パシリ」

 リボーンがスカルの頭をスパコーンと殴る。
 風の手によってその紙束は二つに分けられ、上部を風が、下部を綱吉が貰ってぴたりとくっつけた両太腿を置き場にした。見終わったものはテーブルに乗せていく。
 ざっと見ただけでも──…ツイッターか何かのコメントのようで、次々と読み飛ばして行く。英語やイタリア語だけじゃなく、日本語や中国語、フランス語も混ざっている。フランス語が一番多いかも。

「たとえば『夢を見せる』、とかですね」
「夢?」
「幻覚は何も人を騙すだけではないんですよ」

 風は、その手を休めて顔を上げた。

「幻術師がその気になれば、行ってみたいと願っている街。もう一度見たいと心に刻んである景勝…――離れ離れの家族や、今は亡き人を、映すこともできるんです」
「そういうこと」

 スカルが、風に相槌を打った。
 確かに風の言った通りなら、それは素敵なものだと思う。
 幼い頃、母親の奈々と共に行っていたけれど、今は失われた景色がある。
 夏場はホタルが飛び回る綺麗な川があった。そこは今、汚染が進んでしまって見られなくなってしまった。
 母さんと、過ごした大事な思い出の一つ…──。

‐綺麗だったよな…‐
「(うん)」
「これインターネットだろ? よく見つけられたな…」
「んー。実は数年前に立ち上げられた幻想師に関するコミュニティーなんだよ。ツナの持ってる書類の最後の方、捲ってみ?」

 リボーンが綱吉の横へやって来て、渡された紙束をひっくり返して捲る。数枚捲っていって、ぴたりと手が止まった。

「これ…──孤児院…? 孤児院のホームページなの?」

 孤児院の外観らしき写真が写っている紙。でも孤児院ってホームページに乗るものなんだろうか。

「あぁ…──幻想師はその孤児院のスポンサーであり、唯一、幻想師とのコンタクトがとれる所でもあったんだと」
「スポンサーって…──あれ? 幻想師ってフラン君だよね?」
「あぁ。でもフランがフードを被った大人の男を幻術で見せてたらしいぞ。あいつはそこの孤児院出身だ」
「孤児院で商売してたってことか…──」
「謝礼金は全部、ここの孤児院行きだったみたいだぜ?」
「生意気なあいつから全然想像できねぇな…」
「そうかな? フラン君って凄く良い子じゃない?」

 そう言うと、何故か風まで自分を見てきた。
 あれ? オレ、変なこと言った?

‐いや。良い奴には良い奴なんだよ、フランは‐

 中でも秀忠にまで言われる始末。

「これ。因みに調べたの誰か教えてやろうか?」
「え? スカルが探したんじゃないの?」
「違う違う。これは、とある先生のパソから引っ張ってきたんだよ!」

 ニヤニヤと笑っているスカル。いやに、ウキウキしている気がする。
 リボーンはキメェから聞かないと否定したが、風と自分は賛成するとスカルが嬉しそうに「じ・つ・はぁ」とスカルがニコニコ笑っている。

「アラウディ先生♪」
「え? アラウディ先生?」
「アラウディ先生が…」

 意外にも思えるような、思えないような。そう言えばスカルとハッキング対決してたことがあったんだっけ。

「あぁ。アイツ、あぁ見えて子供好きだからな」

 リボーンが呟く。

「えっ!? あれで!?」
「結構、容赦ないですよね?」
「オレ達の秤ではかれねぇだけなんだよ。奴の趣味がオレにも分からねぇからな」
「趣味って…──」
「あの仏頂面。これでもスカルのこと気に入ってんだぜ」

 「知ってるー」と、何だかスカルが自慢気だ。

「ふっふっふー。実は、アラウディ先生って、この孤児院だけじゃなくイタリア中の孤児院のスポンサーやってんだぜ? 偽名で」
「マジ!?」
「フランがこの学校来たのだって、本当はアラウディが根回ししてるからだぜ。そうだ。もっと面白い話してあげよっか! バレンタインデーの話なんだけど…──」

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