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日常編?
始動プロジェクト
「ジョット、見てください! これはどうでしょう!?」

 書類の回収をしていたGは駆け込んできたデイモンをかわし、ジョットの目の前に書面を叩きつける彼へ半眼くれた。勢いが強くてデスクが跳ねて書類が一部雪崩落ちる。
 ジョット同様、学校イベント好きなこいつは時折こうやってジョットの元へ企画書を運んでくる。

 だが、思考が元からグロテスクなデイモンはバトルロワイヤル(まぁ、ジョットもバトロワ大好きだ。バレンタインとか間違いなくバトロワ)形式のイベントを提示する度ジョットが突っぱねていた。

 自分はバトロワを好むくせに部下からの提案は何故か弾く。いや、多分。デイモンが提案するバトロワが直感で何かあると訴えてくるのだろう。

 所がどうしたことか。今回は。

「デイモン…──この企画どうした…?」

「入江先生にお知恵を拝借しました」

 入江に知恵を貰った?
 気になって企画書を覗きに行く。

「運動会…? 何だこれは?」

「はい! ジャッポーネの学校行事の1つだそうです! 小・中学生の頃に、集団で行うスポーツの行事です!」

「たまいれ…きばせん……100メートルそう…──どんなものなのだ?」

「それはですねぇ…」

 と誇らしげに笑みを浮かべると、くるりと扉をみる。

「入江先生。入ってきてください」

「お前が説明するんじゃねぇのか」

 すると、失礼します、と入江正一が投影機とノートパソコンを台に乗せてやって来た。

「入江先生…」

「あ…えーっと…プレゼン? させていただきます」
 強引に頼まれたらしい入江を見ながらデイモンが誇らしげな笑みを浮かべた。
 それから流れたのはビデオテープ。あどけなさの残る入江正一の学生時代の青春を彩ったという行事。多分、この台詞はデイモンが考えたのだろう。青春を彩るとかそんな表現を入江はしない男だ。

 100メートル走。
 騎馬戦。
 玉入れ。

 確かに。面白そうだが…──学生が参加するだろうか。何時だって個人戦繰り広げる連中だ。そもそもバトロワ行事が多いこの学校。
 玉入れ、100メートル走、綱引き、借り物競争はぶっつけ本番で出来る行事として、騎馬戦や組体操、遊戯と呼ばれるダンスは練習や作戦会議が必要になってくるはずだ。個人戦大好きな奴等が果たして…──練習を真面目にやるか。そして開催日に出るか。

「球技大会とはまた違う団体戦です! これは是非、取り入れるべきです!!」

「ふむ…──良いのは良いのだが…──」

「学年対抗ではなく、縦割りにしましょう! 学年対抗にしたら間違いなく特待クラスが強くなりますからね。担任ならばスポーツの得手不得手ぐらい把握して…──」

「いや。最後の『種目戦』とは何だ? 入江の青春の1ページ映像の運動会にはそのようなものは…──しかも、幻術なんてあるはずないだろう?」

「ヌフフフフ。そこに気付きましたか、ジョット。気づいてしまいましたか、そこに…」

 ここは、と悪巧みの面が見えてきたので企画書をひっ掴もうとすると、先にデイモンが破られまいと取り上げた。

「お聞きなさい、G。種目戦とは私が企画した種目です。これに関しては格闘技部門、剣術部門、幻術部門、射撃部門、総合部門において有志、及び『推薦』で行う完全個人戦です。どの先生にもお気に入りの生徒がいるでしょう? その子がどれほどの実力を持っているか…──」
「興味ねぇ」
「コラコラ! まだ終わっていませんよ!! コレはまだ私が挙げた例にしか過ぎません!」

 だん、とGを睨みつけてデイモンは続ける。

「運動会とは名ばかりで、この部門に関しては先生方で好きな部門を儲けるなんてどうでしょう? ハッキング対決なんて、アラウディが喜びそうじゃありませんか!」
「運動ではなくなるだろう」

 と冷静なジョット。

「つーか。そっちが本命だな。デイモン」

 そんな気がしてならないGに、デイモンは「いいえ」とキッパリ否定した。
 デイモンが起こす行動には目的が裏にある。純粋に生徒達が楽しんでくれるように、など1ミクロンも思っていないだろう。口には出すが。

「これはあくまでも生徒達が運動会へ参加してもらうための余興です。Gも、バレンタインデーに参加していた子供達のうちなる叫びを聞いたでしょう。物騒な行事が多すぎると」
「まぁな」
「物騒だと?!」
「いや。そこでお前は驚くな。自覚ねぇとか問題だろ」

 がたんと立ち上がったジョットが心底ショックそうに肩を落とした。
 お前のその様子にオレは驚いても良いだろうか?

「見た限りでしたら玉入れや綱引き、借り物競争ならばそんなにいがみ合うこともないでしょう? これなら、サボっていた生徒達も絶対に楽しめるはずです!」
「止めとけ、ジョット。仕事増えるぞ」
「射撃部門は例えであって、銃だけでなくアーチェリーだって的当てでしょう? 部員の腕を改めてチェックする機会になるのではありませんか? あぁ、そうです! 優勝した部活生の部活の部費を値上げなんて報酬はどうでしょう?」
「こっち見て笑ってくんなキメェ」

 にこっと笑っているその顔が今までにまともだったためしがない。ジョットの前では笑っているらしいが、こいつの腹の中は、基本真っ黒だ。

「しかし、それでは文系の部活には不公平だろう」
「で・す・か・ら! これは一例ですよ! 生徒が楽しく参加出来るように、我々が頭を捻るんですよ! どうでしょう、ジョット! 我々の腕の見せ所です! ジョットの素直な感想を聞かせて下さい。楽しそうではありませんか!?」

 ぐっと詰め寄ったデイモンに、ジョットの顔が…──輝いた。

 不味い!

「ジョッ…──」
「楽しそうだ! よし。先生方と相談してみよう!」
「えぇ、えぇ! 是非とも検討お願いします!! 企画に関しては全教師にお手伝いいただきましょう! 説得は任せてください!」
「誰がされるか!」

 では〜、とデイモンは入江と共に理事長室を出て行った。
 ジョットに関しては、楽しそうだと呑気なものだ。

「させねぇからな」
「Gの意見として聴いておこう。皆にも聞いてみたい…──もしかしたら、リボーンもコレなら行事に参加してくれるかもしれん」

 ウキウキと同意したのはそのせいか…。

「心配してるみてぇだが、バレンタインデーも一応参加してたぞ」
「しかし、暴れていない。ずっと私の看病をしてくれていた…──」

 参加の基準が『暴れる』なのかよ、お前は。いや。つーか、看病?

「看病って…」
「リボーンが、イベントの様子が気になるだろうからってスカルからパソコン画面で職員室の様子が見れるように…──」
「あぁ。あれか…──」

 て。アレはオレを利用してウイルス流し込むための狂言行動…──。

「静かにコーヒー飲んでいる方が良いと言っていたんだ…」

 パサリと、もう一枚。
 書類が出来上がる。

「暴れるより、ゆっくりする方が向いてるって思い始めたんじゃねぇか? 大人の階段登ったんだよ、一段」
「いや。リボーンは暴れるなら派手に暴れる方が好きだ。綱吉救出作戦を見たろう? あの救出策はリボーンが出したと風が言っていた。綱吉もそう言っている…──本当なら穏便に済ます策だってリボーンなら立てられた。敵だからと、容赦する必要がないから出来たのだ。本当なら、まだ学校でも暴れたいはずなのに…──この前は、私を理由に抑えさせてしまった」
「いや。この前も相当はっちゃけてたぞ?」
「声真似でルール変更の話しか? ぬるいぬるい…」

 ふっと笑ったが、された本人は結構腹立つ。

「前なら、チョコレート保持者の名前を全員遠慮なしに言ったはずだ…」
「大人になったんだと思うぞ」
「よって。今回の案件、何がなんでも押し通すと決めた」
「あん!?」
「任せろG。この場にある書類なら1日で仕上げる!」
「気合い入れてんじゃねぇよ!」

 パキパキと手を鳴らしたかと思うと、書類の処理スピードが上昇した。
 こいつは本気だ。
 つーか、常にこうあってくれ。

 書類の処理をテキパキとこなしていくジョットに、Gは溜め息を吐きながら書類を受け取った。

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