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日常編?
大空の仕事*軽いBLあり
「ジョットセンセーイ! まぁた贈り物よーん☆」

 本日五箱目の贈り物がジョットの元に届いた。それを、受け取ったルッスーリアが運んできたのだ。相変わらず山のような書類に姿が見えないが、顔を上げて金髪がちょこんと見えた。

「あぁ。誰からだ?」

 ぴらり、と書類が一枚完成した。

「えぇっと…──フレデリコ=シャルワッチですって。いやぁだ、ジョット先生ったら(男に)大人気ねぇ」
「フレデリコか。懐かしいなぁ」

 ジョットは懐かしむ。
 これは学校設立前にボンゴレファミリーを設立してから、戦力強化に当たって『稀』な『強行手段』を使った…──門外不出の話に関係する一人である。
 但し、ジョットはオープンでも構わないというとても困った話である。


〇〇〇


 きゅっとネクタイを締め直し、ジョットは隣にいるGに目をやった。

「今回のは堅物だぞ。デイモンが行って駄目なんだから」

 普段ならデイモンの高い地位と類い稀なる交渉術で落とせるが、今回は中々上手くいかなかった。
 更にはボス直々に顔を見せろと言われる始末。
 たった今注意をしたGだったが、今までジョットが赴いて落とせなかった交渉相手はいない。ただし、ジョットが「こことは交渉しない」と言った所以外は。

「大丈夫だ」

 ジョットは薄く微笑みながら答える。

「ここは大事な所だ。落とす訳にはいかない」

 そうハッキリ告げると、リムジンが丁度停まった。少しして、かちゃ、と静かにドアが開く。

「着いたよ」

 アラウディが更にドアをあけて告げる。ドア枠から白亜の豪奢な邸宅が白熱灯の光に照らされている。  ジョットは降りて、建物を見上げた。

「ジョット…──変なことは、すんなよ」
「あぁ…──大きいな」

 ジョットはGの話を聞いているのか聞いていないのか分からないような生返事をし、邸宅を見上げた。


〇〇〇


 メイドがお辞儀してジョット達を迎え入れた。赤色をしたフェルトの絨毯が応接間に案内される。

「本日は、ようこそいらっしゃいました。ジョット氏」

 若い当主が待っていた。茶色の髪の毛を跳ねさせて、清潔感に溢れた外装。きりりと眉をつり上がっている。容姿も端麗だ。
 最近、頭角を現してきた若手の商社マンだ。表向き輸入品を取り扱っているが裏側にもそれなりに精通している武器商人。名をフレデリコ。
 彼はにこやかにジョット達を迎え。

「男色一色だと聞いていましたので、お手柔らかにお願いしますよ」

 ジョットに手を差し出すフレデリコに、Gは目を細める。
 それにジョットはにこりと笑って。

「これは驚きました。貴方、フランスには行きますか?」
「! ジョット?!」
「? え、えぇ…──。お得意様もいるのでしょっちゅう行きますが」

 目をぱちくりとさせるフレデリコ。
 Gがジョットの肩を掴むと、彼はくるっと振り返ってキョトンとする。

「何だ。間違った情報には訂正入れるべきだろう」
「いや、いきなりフランスって…──」
「フランスにしょっちゅう行っているのだから驚くこともあるまい」
「そう言うことじゃなくてだな…」
「大丈夫だ。挨拶ぐらいできる」
「それを尚言ってんじゃねぇよ…────って、おい!」

 ジョットはスッとフレデリコの前に立つと、ネクタイをぐいっと引っ張り…──沈黙が怒濤のように訪れる。
 重なった唇から、ちゅっ、と濡れた音。
 赤面するメイド。
 唖然とするボーイ。
 Gは顔を抑えて逸らした。
 すぐに、ジョットとフレデリコが離れた。
 当然、された人間は放心状態。
 そして当人は平然としている。
 更に、首を傾げた。

「どうかしましたか? フランスによく行くのでしょう? これは『日常風景』のはずだ」
「そ、れは…」

 フレデリコが覚醒し、頬を紅潮させながら唇を拭う。
 確かに、フランスではキスは『挨拶』だ。日常的、頻繁に男女間でも行われるが…──今のフランス人だって初対面ではやらん!
 目を閉じて、ふふん、と人差し指を立てる。

「端からよく勘違いされるのだ。『フランスの知り合い』とは『よくやる』のでね」

 Gはもう顔を逸らすしかない。
 ジョットは引っ張ったフレデリコのネクタイを優しく締め直し、ぴっしりと形を整える。

「しかし、フランスでは『挨拶』だ。商社マンでも何でもなく、人間なら『挨拶』は基本だろ?」

 さて、とニッコリ微笑み、手を差し出した。

「挨拶してくれないのか?」


 ──無理だろ!


 フレデリコはじっとジョットを見て固まっている。
 明らかに葛藤中だ。
 葛藤し過ぎて握手用のジョットの手に気付いていない。
 キスしなくてはならないのかと悶々と格闘しているに違いない。
 それにジョットは気づいておらず、残念そうに眉尻を下げる。

「そうか…招かれるに値していない客というわけか…」


 ──違う!


 帰るぞ、と振り返ったジョット。
 それにフレデリコも驚いたように目を丸くし、肩を掴んだ。

「待て! あ、いや! 待ってください!」

 ジョットはもう一度フレデリコに向き直る。
 フレデリコはやはり勘違いしたままで、頬に少し赤みを帯びて動揺を見せているが…──誰がさせると思ってんだ。
 ジョットが再び手を差し出しているが気付いていないようなので、後ろからフレデリコに下を見るように指で合図を送る。
 それにハッと気付いたフレデリコは顔を更に赤くして最大限の笑みを浮かべるのだった。


〇解説〇


 やっほ。
 『男を骨抜き!』の魔法をかけるジョットの解説も僕、マーモンがするよ。
 今回は学校とあんまり関係なかったけど、ジョットの天然タラシっぷりが見られる名シーンだ。
 まぁ、負けず嫌いってのもあるけどね。男好きだと言われると当人、不愉快らしいよ。男だけでなく、女も子供も、人間は大好きだからね。
 でも事実、それって片恋中の人達は『残念☆ お前ら男だからお断り☆』ってことだよね。残酷残酷。
 ジョットは現ボンゴレファミリー当主。大空の守護者だ。
 戦闘タイプは接近から遠距離までこなす攻撃型。接近は体術だけど、遠距離は死ぬ気の炎ね。
 それでなんだけどねぇ。ジョット攻略が難解な理由は「恋愛に鈍感」なことに起因してるんだ。
 彼、抱きつかれて変なところ触られてもキスされても動じない。何てったって『挨拶のうち』って見事な思考回路で変換するんだ。ラブアタックも無駄に終わるんだよ。
 世界では頬や唇にキスするものや、掌に唾を吐き捨てるのが挨拶という所もあるんだ。『挨拶は交渉の基本』。それを掲げたジョットが世界の挨拶を網羅しちゃったせいで慣れちゃったんだ。
 ジョット自身、パーティーとかでチューされても(結構堂々やられるんだけど)素敵な笑顔でかわすから相手もやりたい放題だし、守護者は引き剥がしたいのに「挨拶だぞ」って言って手を出させないんだ。
 彼の大胆な行動と世界の文化を知っている知識。それに順応出来る人格あってこそだけど、手を出されてる周りは辛いよね〜。


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