日常編?
デイモン先生の授業の仕方!
こつこつと、鉛筆の叩き付ける音がする。
今は社会科世界史の授業、その担当、D.スペードが授業を進めている。
黒板にチョークで書き進めていたデイモンだったが、ここでくるりと振り返った。
「では、ここで風」
ノートに書き込みしていた風が顔を上げた。
「只今出た、イエズス会はどんなものか述べなさい」
デイモンが笑みを浮かべると、風はぱきっとペンをへし折った。
デイモンは、風を気に入っている。
気に入っているからこそ、と言っても過言ではない。
デイモンは世界史の授業があれば三回に一回ぐらいは確実に当てている。(数えた)
その度に風は答える羽目になるのだが、当初は答えられずに何度か成績を下げられていた。今では勉強を前もって行うから答えられるが、奴はいつものように俯いていた。
しかしその立ち姿。いつもなら嫌そうに立ち上がるが今日は違った。
すっと立ち上がり、上げた顔がキラキラと輝いている。
「イエズス会はキリスト教、カトリック教会の男子修道会のことです。現代では六大陸の112カ国で活動する2万人の会員がいて、これはカトリック教会の男子修道会としては最大のものですね」
「ふむ、しっかり勉強しているようでよろし…――」
「余談ですが、1513年当時、海外の布教に力を注いでいたイエズス会の修道士達は発見されたばかりのインド航路に乗り『パイナップル』を当時インド皇帝アクバルへの貢物として贈ったと伝えられてます」
――神々しく見える。
いやいや、パイナップル滅茶苦茶強調したな。
ぴきり、とイモンの表情がひきつった。
空気がやたら冷えるが、あの天然爆弾。今回は自然爆発ではなくキーワードという名の火を付けるタイプの爆弾のようだ。しかも導火線は未知数、爆弾名は『パイナップル』。
「よく、調べましたねぇ。ご褒美に成績下げておきます」
「おや。上げるのが普通ですが、まぁ、名誉なこととして受け取っておきます」
ふふん、と誇らしげに着席する風に、教室の空気は下がったまま。
その後、哀れにも頭の悪い生徒は次々と当て、デイモンの腹いせが世界史の間、繰り広げられた。その対象に何故か混ぜられたリボーンは答えられるにも関わらず、真面目に答えないで成績を下げられることになったが…――世界史の教室を出た二年生は帰った後、口々に風を称賛した。
〇〇〇
入江正一は広大な面積を誇る図書館に、また科学に必要な文書を集めるため赴いていた。
「珍しいな…デイモン先生が来てるなんて…」
図書館を歩き進めていると、棚に隠れているジョットをみつけた。影からコソコソとしているその先にはデイモン。珍しく集中しているようで、デイモンは書物を睨み付けたまま入江、及びジョットの存在に気付いていない。
「どうしたんですか? ジョット先生?」
「あぁ、入江先生…ちょっ…」
手招きされて隣へ。
ジョットは、目を輝かせてこう言った。
「デイモンがパイナップルに目覚めた!」
首を、がっくんと傾げて。
「はぁ?」
図書館に設けられているデスクの上には既に本が山となって積まれているにも関わらず、「持ってきたわよ〜」とルッスーリアがまた山のように書物を持ってきた。
「そこに置いておいてください!」と半ば怒鳴るデイモンをジョットは暖かい目で見守り始める。
「あの書物、全てパイナップルに関する蔵書だ。デイモン、パイナップルを克服したのだ!」
嬉しそうに言っているが、あの剣幕の表情からして明らかにそうではないのは伺える。頭をかきむしって食いついている姿が恐ろしい。こき使っておいて「もう用済みです」とルッスーリアに辛辣な言葉を浴びせる。この光景を見ても尚、ジョットの考え方は変わらないらしい。
ルッスーリアが、じゃあね、と手を振って離れていく。
遠くにいた二人はこの時、デイモンが「風め…!」と忌々しそうに呟いていたことには気づかなかった。
〇解説〇
ここは私が担当いたします。
改めまして、風です。
以後お見知りおきを。
彼はこのセッタン・テンポ設立当時からいる社会科世界史担当の幻術師です。ボンゴレファミリーでも霧の守護者として幹部の位置にいます。戦闘タイプは知識よりの守備型。
幻術を使う方は基本このタイプですが、六道君とマーモンは珍しく、攻撃特化型の術師なんですよ。もしかしたら、デイモンより厄介かもしれませんね。
いやはや。それにしてもジョット先生の肝の座り具合には恐れ入ります。あんなの…──ごほんっ。頭が奇抜な変わり者を仲間だと笑顔で心の底から言えるのですから。
私からジョット先生に言えるのは、取って食われないように気をつけてくださいと言うことですね。
幻術を扱う方は皆、往々にして食えない方ですから。マーモン叱り、六道君叱り…──フラン君叱り、ね。
そして皆さんも知っての通り、『パイナップル』という食べ物が物凄く嫌いです。
髪形がパイナップルと同じ形…――失礼。似た形をしているのでパイナップルを毛嫌いしています。
抗酸化作用があったり、最近ではイソフラボン――大豆ですね。それの成分が入った化粧水が売りに出されるほど、身体にも美容にも良い食べ物です。
余談はさておき、彼は自分がバカにされるのを激しく嫌います。
図書館でパイナップルの文書を漁ったのは恐らく、私がこの先、授業で『パイナップル』という言葉を口にしないようにさせるため、歴史を漁っているんです。
負けず嫌いなんですね。
ようは大人げないのです。
この学園にはそういうタイプの先生が数多く居ます。
ですが、デイモンのようなタイプは稀。
このタイプの先生に当たった場合はあまり刺激しないことをオススメします。
デイモンに関する詳細は――
カンペ
┌────────────┐
│マーモンからタダで貰った│
│情報って何なんですか? │
└────────────┘
!!!
ごっほん。
知らなくても良いことはたくさん世の中にあるんですよ。
それでは。
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