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日常編?
学園で一番忙しい教師
 この学園で一番大忙しの教師は誰か、と聞くと教師の間では理事長でもなく校長でもない一般教師のある男(男と表現して良いのか謎だが)の名前が出てくる。
 それが彼…──と表現しても良いのか謎だが。

 とりあえず、ルッスーリアである。

 彼は特に、『時間外』の仕事が多い。
 それは朝から始まる…――。

「起きなさい、エルちゃん!」
「うっせー、カマ! ちゃん付けすんじゃね…──」

 と、エルことイタリアの第一王子、ラジエルが飛び起きた時にはピンクのフリル付きエプロンのルッスーリアは居ない。

「起きなさい、ベルちゃん!」
「うっせー、カマ! ちゃん付けすんじゃねぇ!」
「オーホッホ☆ 一人前になったら様にしてあげるわ☆」

 ベルちゃんことベルフェゴールを起こしに行っているからである。
 この気難しいというか気分屋の王子達。精神入れ替わり事件が起きたことにより、ルッスーリアはものの数日で手懐けてしまったのである。
 理由は料理が旨いからに他ならないが、ここ最近のルッスーリアの朝は、執事のオルゲルドを差し置いて毎日こうなっている。

「朝食は何が良いのかしら〜? 王子達〜?」
「スコーン!」

 叫べば、双子は早速「真似スンナ!」と取っ組み合いの喧嘩を始めるが、放任主義、というか人の家の(王族なのだが)子供の教育はその家(王族)に任せる方針でルッスーリアはあまり口出ししない。

 が。

「ツインズー。スコーンは何味良いかしら? プレーン? チョコチップ? アーモン…――ドぉっ?!」

 ひゅん、と頭上をナイフが飛んできてルッスーリアは慌てかわす。
 きぃん、と壁に弾かれたナイフは床に転がった。

「座って待ってなさい、ガキ共!!」

 台所の包丁を二つ、王子達の足元にぶん投げて突き刺す。
 割って入られるとは思っていなかった双子は驚いて、「ぎゃあ!」と悲鳴を上げて尻餅をついた。

「何すんだ、カマ!」
「マーモンはうるさい子嫌いなのよ」

 黙る。

「さっき、私が何聞いたか聞いてたかしら?」

 腰に手を当てお玉を振ると、二人は互いを睨み合って無言だった。

「スコーンはプレーン? チョコチップ? アーモンド?」

 すると双子の王子達はむっくりと頬を膨らませて。

「マカダミアナッツ」
と、ラジエル。

「ウォールナッツ」
と、ベルフェゴール。

 ルッスーリアは「わかったわ」と引き出しの中に入っているパックから双子の王子達が指定したナッツを取り出す。
 既に生地は昨晩から作ってあるので後は練りこんで焼くだけ。しかし、聞いた内容から選んでくれなかったのは少々頂けない。
 しかし一応王子様なので、ルッスーリアはその要望に答えるべく腕を捲くって小麦粉を掌に塗した。


○○○


 王子達の朝食を準備し終えると次は職場に赴く。
 大体は職員会議が終われば、いつもの仕事が始まるのだが…――。

「ルッス。コーヒー」
「俺は紅茶頼む」
「悪い。ジョットのところにベタ甘のカフェ・オレ」
「ちょっとぉ〜。私も仕事あるんだから自分でしなさいよ〜」

 と言いはするものの、既に手は教師達の飲み物を作るべく腕は動いている。
 多忙というわけではないのだが、どうも『ルッスーリアが淹れると何故か旨い』。インスタントのはずなのだが、教師達は挙ってそう言うのだ。
 人気者は困るわ〜、と言いながらも、ちゃんと仕事をこなしているので任せてしまう。なので、給湯室は朝と昼、夕方、必ずルッスーリアが立っているのも見慣れた風景となっていた。
 そうした中、自分で飲むものは自分で淹れたい、という人間も数名いる。その中でも特に珍獣扱いできる人物が職員室を開けた。

「スパナ。お茶切れたか?」
「うん」

 日本オタクのスパナが久々に職員室へ顔を出してきたのである。彼が顔を出すのは決まって緑茶の茶葉が切れた。

「ルッス…茶葉は?」
「あら、お久。スパナ。お茶っ葉は棚の三番目だって言ってるじゃない」
「そうだっけ」

 給湯室の中を誰よりも網羅している彼。
 もそもそと棚を開けて、スパナがしばらく棚を覗くと、目をぱちくりさせて口の中の飴を噛み砕いた。

「ない」
「ないんだったらアラウディ捕まえて申請なさい」
「アラウディ、何処」
「あら、職員室にいない…ってそうだわ。ボンゴレ一年で情報処理があったわね。今、授業中だわ…――あ、でも応接室にいい玉露が…」
「それ貰う」

 歩き出したスパナに「全部持ってっちゃ駄目よ!」と忠告してルッスーリアは「さぁ!」と最後の一つであるマグカップをお盆に乗せた。

「できたわよ〜ん☆ 取りにいらっしゃ〜い☆」


○○○


 ルッスーリアは雑用から何でもオールマイティーかつ完璧にこなすせいでよく乱用する教師がいる。
 中でもアラウディはここの学校の資金繰り、および備品などの担当もしているのだが、些か凡人と思考がズレている彼は一般思考、および一般生活において幅広い知識のルッスーリアを特に相談を持ちかける。

「ルッス。ちょっと」
「発注?」
「多いだろうか」

 ずらりと画面に並ぶ発注書。スクロールで下へずらしていくと、ルッスーリアはちょっと、と呟く。

「上げて上げて…あった。これ、もう少し発注数減らしても良いわ。でも、コレはケチらない方が良いわよ? あとは…――ねぇ。何で調理済みの冷凍食品なんか発注するのよ」
「ダニエラが作るの面倒だって」
「私から言っておくから消しちゃいなさい。アホかしら、あの子。だから家庭科やってあげるって言ってるのに」
「ルッスの仕事増えるからって配慮してるつもりらしいけど」
「家庭科は人間の営みにおいて基本情報よ。そんな頭抱えて悩むほどでもない…――アラウディ。貴方、この発注書、ちゃんと見てる?」
「見てるけど」
「この本のカテゴリに入ってる名前、殆どエロ雑誌よ。シャマルね。でも、この果物図鑑って誰が依頼したのかしら」
「僕だけど」
「…――自分で買いなさい?」


○○○


 さぁ、昼休み。大半の教師が多くの時間を取れるわけではないのだが、ルッスーリアは『無い』。みんなに飲み物を振る舞ってから昼食…――は生徒指導室。

「あっらぁ、い・や・だ☆ それって恋じゃな〜い?!」

 生徒に、何かしら相談されることが多い。本日も生徒に捕まり相談を受ける。そして、快諾してしまうのが大半だ。
 何でも、他の教師はお堅いし、だからと言って女性教師には相談しにくいし、友達に教室で話せば誰かに聞かれるかもしれない。気兼ねなく相談できるのが、このオカマというわけである。
 そして、コイバナ(恋の話)は乙女(と表現するかは謎だが)の栄養源なので特に時間を忘れて相談に乗ってしまう。
 そして事実。この学園で一番、恋愛相談のアドバイスがうまい。教師間の恋愛事情も誰より知っている(中には勘違いもあるが)。
 なので、時折。

「ルッスーリア! お前、授業あるだろーが!」
「あら、嫌だ。忘れてた」

 ルッスーリアはケロッとした顔でお怒り気味のGに笑いかけた。

「す、すみません! それじゃ…」
「あらぁ。まだ終わってないわよぉ?」
「テメェは授業あるって言ってんだろ! テメェもだ!」
「じゃ、先生放課後開けておくわね? 四時半は絶対職員室にいるわ」
「はい! お願いします!」

 顔を真っ赤にしてぴゅーっと飛び出していく生徒に、手を振りながらルッスーリアは垂れている眉をさらに下げた。

「Gったら、本当にデリカシーないわねぇ。この時期の男の子はウブなのよ?」
「関係あるか! テメェはさっさと授業…――」
「片思いなんて、何十年付き添ってる片恋相手に手を出せてない子と一緒じゃない?」
「!!!」
「あらぁ。誰とまで言わないわよぉ? でも、分かっちゃうから☆ うふっ」
「いっぺん、死ねぇえ!!」

 今度はGが顔を真っ赤にして、懐から拳銃を引き抜くので、ルッスーリアは逃げるように「授業授業☆」と軽やかな足取りで生徒指導室を抜け出す。
 「じゃーあね〜ん☆」と別れの言葉を残してドアを閉めれば、発砲音。この学校の厄介なところは、教師も校内を破壊すること。

「またスパナの仕事が増えちゃったわねぇ」

 他人事のように呟いて、ルッスーリアは少し潰してしまった教室へ急いで向かうのだった。


○○○


 生徒からの相談が終わって、残業の教師達にお茶を振る舞い終わった夜。
 基本的にルッスーリアは残業がない。
 否、出来ないので。

「さて…帰って洗濯…――」
「付き合え、ルッス!」

 ぐわし、と肩を掴まれたルッスーリアがくるりと振り返ると、苛立ちを最高潮にさせたダニエラ。きりりとした目が釣りあがり、その見目麗しい顔には青筋がくっきり。

「また、デイモン先生?」
「あんのパイナップル! いつか絶対射抜く!!」
「死んじゃうから止めなさい? そうだ、貴方。冷凍食品発注するなんて何考えてるの。取り消しておいたわよ」

 このあと、散々ダニエラには文句を言われたが、付き合えと言われてしまうと断れない…――のではなく、断らないのがルッスーリア。
 教師達の付き合いも欠かさないのが彼。
 怒りっぽい、荒っぽい、教師が多い此処で、一番繊細で人間を熟知している彼は誰の相談にでも乗る。

「酒!」
「女の子が親父臭いこと言わないの」
「やってられるか、あの腐れパイナップル! 腐って死んでしまえば良い!」
「酒を飲んでるわけでもないのにグダ巻いてるわねぇ…」
「もっとおしとやかにしろだの、黙ってろだの…そんなのは恋人にでもやらせておけっ!」
「理想が高いのかしらねぇ。デイモン先生は」

 学校から街までは車でも20分かかる。その間、運転しながら愚痴を聞く。行き着けの酒場に行っても運転があるのでルッスーリアは飲まないで愚痴を聞く。悪酔いしたダニエラは薦めてくるが、さりげなく断って愚痴を聞く。常に耳を傾けることに専念する。
 本当にデイモンにしか頭がきていないようで、口から飛び出す単語はパイナップルばかり。
 ニコニコしながら聞いているわけだが、心中では「相思相愛ねぇ」と勘違い。仲が良いほど喧嘩する、はルッスーリアの中では持論。
 ダニエラを部屋に運ぶと、バレンタインデーイベントから飼い始めた茶色い毛並みの犬が、ダニエラの帰宅を喜んで一鳴きし、尻尾をブンブン振っている。
 静かにね、と呟けばわん、と小さく鳴く。人の言葉を理解しているらしい。
 シックなデザインの時計を見れば真夜中の1時。学園を出たのは6時だった。
 今日も一日が終わる。

「あら、いやだ。洗濯物終わってないわぁ」

 王子達の朝食の準備も終わっていない。
 そういえば、もうすぐテストもあるんだったわ、さぁ大変。
 こうやって、ルッスーリアの夜は更けていく。
 そうして、翌日も…――。

「起きなさい、エルちゃん!」
「うっせー、カマ! ちゃん付けすんじゃね…──」
「起きなさい、ベルちゃん!」
「うっせー、カマ! ちゃん付けすんじゃねぇ!」
「オーホッホ☆ 言われたくなかったら、一人で起きられるようになりなさ〜い☆」


○解説○


 ルッスーリアの解説、この俺様、スカルがするぜ!

 まぁ、セッタン・テンポ学園きっての変態だな。オカマだ。うん。
 もう説明十分じゃね? こいつのページだけ長いし。
 どんな人がルッスーリア頼るかって言われたら、もう全員だぜ。おちょくられたGも普段ラボにこもってるスパナも何かと話を持ちかけてる。
 ルッスーリアは設立から数年後に赴任してきた教師で、この学園のオカン的存在だな。この学校では珍しいオールマイティータイプだ。攻撃、防御、ある程度知略もそつなくこなせるんだ。どいつもこいつも攻撃主体型ばっかりでやたら強いけどな。このタイプは学園でも二人しかいないんだぜ。
 此処には相談員がいないから自然と気配りの上手いルッスーリアが生徒、教師問わずに対応する形になってる。まぁ、教師の本業が本業なだけに、そんな奴が少ないのが現実。
 今までよく学校なんかやれたもんだ。オレ達ボーイズは気持ちの浮き沈みが激しいんだからもって気を使えっての!
 あ、良いこと教えてやろうか。
 さっきルッスーリアに相談持ちかけた生徒だけど、どうやら付き合い始めたらしいぜ。告白が成功した報告を一番最初にルッスーリアにしたってさ。すげぇよな、あのオカマ。
 でも基本、アイツは死体愛好家だからあんまり近づかない方が良いぜ。目を付けられてるのが、セコーンドとナックル、桔梗の3人。筋肉のラインが綺麗なんだと。細マッチョよりムキムキマッチョが好みらしい。
 ほら、説明してたら長くなっちまったじゃん! 管理人もお気に入りだから設定詰め込みすぎなんだよ!
 お前ら! くれぐれもルッスーリアに「筋肉が引き締まってる子知らない?」とか聞かれたら答えんじゃねぇぞ!


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