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日常編?
作戦会議
「んで、結局先輩面して引き受けて来たってか」
「先輩面先輩面うるせぇな、コラ!」

 作戦会議、ということでコロネロはスカルの部屋を集合場所に指定した。詳細はすでにメールでコロネロが通知をしている。そして、招集をかけられたリボーンがスカルの部屋に入って、コロネロを見つけるなりそういったのだ。

 フランからのお願いを要約すると。
 目をつけてきたスクアーロと、バレンタインデーが終わってからしつこいデイモンの魔手から山本を守って欲しい。それは山本には絶対に秘密裏でやって欲しくて、そう頼んだのが自分であることも山本には伏せてほしいという。

「先輩面して引き受けたんなら自分でやれよ」
「? 手伝うつもりでここに来たんじゃねぇのか、コラ?」
「…――面倒くせぇな」

 図星をつかれたらしく、そっぽ向くリボーンにコロネロは「エスプレッソー追加ー」とスカルに飲み物を請求した。コードが張り巡らされている床、スカルは「あいよー」とコードを踏みつけずにキッチンの奥へと消えていく。パシリ精神が身につけば、お手伝いさんと化すようだ。
 秀忠はすでにソファーに座っている。その横をがっちり風とコロネロが固めている。
 ちなみにスカルは、パソコン前の席がいつもの席だ。
 リボーンが向かいのソファーに座った。
 ローテーブルにはすでに三人分の飲み物が置かれている。メールで急遽スカルの部屋で作戦会議することに決めたわけだが、フラン達の部屋から彼の部屋に直行したコロネロと秀忠が部屋にお邪魔した時には既に、ソーダ入りのカップが2つ置かれていた。しかも飲んでみると、しっかり冷えていてコップは結露もしていない。
手際のよさは感服するばかりだった。どうしてこんなに五歩下がったところのサポートがうまいのだろうか。

「しかし、デイモンに一目置かれてしまった、というのは痛いでしょうね…」
「あぁ。あいつならマフィアの方に引き抜こうとか考えるタイプだろーしな。つーか、あいつって生徒をそんな風にしか見てねぇだろ?」

 スカルがごとん、とリボーンの前に淹れたてのエスプレッソコーヒーを置く。
 その問いかけにそうですね、と風が頷くとリボーンも認めた。ジョット達と一番長い付き合いの彼が頷くからには間違いないとみてよさそうだ。

「スクアーロは何とかなりそうだけどなぁ。デイモンって厄介だろ? コラ」

 肩を落としたコロネロ。どうしたものかと頭を悩ませているのが伺えた。
 すると、リボーンが秀忠の頭をわし掴んだ。

「デイモンの動きを封じるなら簡単だけどな」
「へ?」
「ジョットにチクりゃあ殆ど解決だ」
「そっか! ジョットは上司だし、案外アラウディが子供好きだし、Gも雨月もデイモンの事あんまりよく思ってないしな。セコーンドも何だかんだ言って教師って立場自覚してるし」

 つらつらとデイモンの交友関係をぶちまけるスカルに、コロネロの顔も明るくなっていく。

「そ、それじゃあ、デイモンは何とかなりそうか?! コラ!」
「そうだな。デイモンは何とかなるんじゃね?」

 「よっし!」とコロネロは立ち上がるとぐっと握り拳を作った。

「そうとなったら、朝から山本に張り付くぜ! コラ!」
「……あーそうだな。ついでに昼休みとか一緒に食うように誘うか、弁当こっちで教室まで運ぶ配慮は必要になるな」
「頑張れよ、スカル! コラ!」
「お前やんねぇのかよ!」
「オレはスクアーロが来た時に応戦係だ、コラ!」

 今まで深刻そうだったにもかかわらず、明日が楽しみだとコロネロは明明だ。

「そうとなれば、明日は早起きだな! コラ!」
「できんのかー?」
「馬鹿にすんじゃねぇ! 早起きぐらい出来るぞ、コラ!」

 作戦会議を開いた張本人が「また明日な!」と意気揚々にスカルの部屋を出て行った。作戦会議というには、ずいぶん短い時間で終わってしまった。
 一気に静けさを増したスカルの部屋は、パソコン稼働中の音が室内を支配する。
 しかし部屋主のスカルを除いて、秀忠、リボーン、風は動こうとはしなかった。

「んで、作戦首謀者が出て行っちまったが…――残ってる奴は『気づいてる』って事で良いのか?」

 リボーンが、頭の後ろに手を組んでソファーに深く腰掛けた。

「たぶん、リボーンと同じこと考えていますよ」
「オレ様も」
「オレもだな」
‐え? 何?‐
「…ツナ、気付かなかったのか?」

 綱吉は「わかんない!」と秀忠の内側を響かせた。
 しかもそれを察したように「馬鹿だな」とリボーンが半眼にして視線をくれてくる。
 凹んでしまった弟は黙りこみ、秀忠はじとっとリボーンを睨みかえしてやった。彼は対して気にせずエスプレッソコーヒーを口に含んだ。

「そもそも、生徒間の交流があまりないこの学校で、上級生…しかも特待生から目をつけられるなんて珍しいんだよ、ツナ。しかもあの『白銀の悪魔』と恐れられるスペルビ・スクアーロが目をつけたとなると、相当の使い手だって証拠だ」
「えぇ。交戦になれば勝っても負けても実力が知れ渡るでしょう。そうとなれば噂になります。すでに目を付けているとなればデイモンは更にマークを強くするでしょうね。既に、我々のクラスでスクアーロの他、ザンザス、レヴィ・ア・タンなどその他居残り組には目をつけていますから」
「とまぁ、フランがスクアーロと接触させないように警戒しているのはそこだろうな」

 綱吉は無言。多分、話が難しすぎてついてこれていないのだと思う。口をぽっかりあけているのが目に見える。

「でも、オレ達が見てるのはそこじゃねぇ」
‐え? え? 違うの??‐
「そうだよ、ツナ。そこは大して問題じゃない。デイモンがそういう奴なのは俺達は『知ってる』からな」
「まだ理解してねぇのかツナは。俺達が気にしてるのはフランがなんで『デイモンに目をつけられることが危ないことか『知ってる』のか』って所がポイントだ」

 湯呑をすすり、風が珍しく真剣に目を細めた。

「我々はこの学校の『裏側の姿』を知っているから納得できます。ですが、一般人のはずのフラン君が『何故そのことを知っている』のでしょう?」
‐あ…――‐

 綱吉も漸く事態を理解したらしく、小さく声を漏らした。

「この学校は『表向き』成績優秀な生徒を詰め込んだ男子校です。マフィアの子供が通っているのをカモフラージュするための…――」
‐え?! オレ、初めて知ったんだけど!!‐
「…それはオレも初めて知ったぞ、風」

 飛び出してきたとんでもない発言に秀忠はぴくりと顔を引き攣らせた。

「オレ様もそれは知ってたけど…」
「オレはオレ以外に興味ないからどうでも良いけどな」
「オレサマナルシストは黙ってろ」

 ぴく、と顔を引きつらせたリボーンの殺気は濃くなったが受け流す。事実だ。いわれたくなかったらその自意識過剰な性格をどうにかしろ。
 風は「そうでしたか」と苦笑した。

「きっと、ジョット先生の計らいでしょうね…――どんな子供でも、楽しく学校生活を送って欲しいという、純粋な」

 再び、綱吉は黙した。
 綱吉ならば、その気持ちを痛いほど分かっているから。

 ボンゴレの跡継ぎ候補だと日本では狙われ続けてきた。
 友達も作らず、
 家族にも甘えず、
 守るために強くなる。
 ただひたすら自分と関わりのある人間を守るために。

 それは秀忠も同じ。
 戦い続け、
 力を求め続け、
 ただひたすら弟を守るために。

「どーせ大半はマフィアなんだぞ、とか言って威張ってる奴の調教だと思うけどな」
「まぁ…秀忠君達は例外だろーな」
「そうですね。ここでは自分がマフィアの子供であるということは他言無用が義務付けられてますからね」
「つーことで、スカル」
「明日の朝にはフランのデータ出しときまーす…」

 リボーンに依頼される前にスカルはパソコンに噛り付いた。
 それに風も納得したのか、おさげを揺らして立ち上がり、リボーンはエスプレッソを飲み干して手をヒラヒラとさせた。

「もっと質の良いコーヒーメーカー買ってこい」
「我慢しろ!」
「ご馳走様でした、スカル。私も失礼します」
「じゃあ、コップさげておくぞ、スカル」
「ありがとう、ヒデ」

 リボーン、風と部屋を出て行き、秀忠は空になったコップに水を満杯までいれてシンクに置いておく。
その水面に写る『綱吉』の顔は、少しだけ暗く見えた。

「なぁ、スカル。一つ気になることがあるんだが聞いてもいいか?」
「んー? 何ー?」

 カタカタとパソコンをいじりながら返答したスカルは画面に顔を照らされている。

「普段なら気にせずくっ付いてくると思ってたんだけど、何でフランのお見舞いに来なかったんだ?」
‐確かに…何か、怖がってるように見えたし…‐

 ぎく、とスカルの体が大きく揺れてから、化け物じみた速さでキーボードを叩いていた指が動きを止めた。

「何か、あったんだな」
「あー。いや〜…えっと…――」
「まぁ、秘密にしたいならそれで良いが」

 スカルは首だけこっちを向かせて、ただ一言「悪い」と謝った。

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あきゅろす。
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