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日常編?
先輩面
「おー、お帰り。ナックル何だってー?」

 コロネロが職員室から帰ってくるなりスカルが突っ込んだ。それは秀忠だけでなくリボーン、風も同じ気持ちのようでその回答を待とうと思っていた。
 因みにヴェルデは新たに炎の提供者が現れたということで目下研究室に籠り中。マーモンは仕事の関係でその場にいない。
 しかしそこで秀忠はコロネロの衣服が少し乱れていることに気付いて目を瞬かせた。

「どうした、コロネロ? 襲われたのか?」
「んー。17人ばかし片付けてきたぜ、コラ」

 「運動にもならねぇぞ、コラ」と余裕綽々と首をゴキゴキならすさまは、相手するのが面倒だったというのがありありと伝わってくる。
 コロネロは頭をポリポリ掻きながら、フランが熱を出してしまったという報告をナックルから受けたと答えた。

「マーモンの言う通りになってしまったということですね…」
「容体は…熱だけなのか?」
「いや、それが…熱が問題じゃなくて…な、コラ」

 一斉に疑問符を浮かべた表情をする仲間達に、コロネロが渋面を作った。

「看病に来た山本を『放さない』んだと、コラ」
「ん…?」

 秀忠とリボーン眉を寄せ、風とスカルは驚きを見せた。


○○○


 牧師スタイルを貫く教師とコロネロは職員室の片隅に設けられている仮眠室へとつれてかれた。
 ここの教師達は徹夜が多いらしく、三部屋もある。その内一室は入江正一が爆睡しているおかげでイビキが聞こえてくる。

「山本が同室であることにかこつけて、フランは看病を依頼したようなんだが…」
「ん? それって別に普通じゃねぇのか、コラ?」


 ナックルは深々と溜息をつくと、「それが、な…」と頭を掻く。

「山本にも学業があるだろう? しかし、それをそっちのけで看病を『無理矢理』やらせているらしいのだ」
「看病を…無理矢理か? でも、山本なら気にせず引き受けるタイプだろ? コラ?」
「そうなんだが、あまりにも『手が込んで』いてな。わざわざ幻覚を使って山本を外に出さないようにしているのだ。扉を消してな」

 ぽかん、と開いた口が塞がらなくなったコロネロに、ナックルは続ける。

「山本から連絡を受けていたので仕事の合間を縫っては見に行ったのだが、何故、山本を閉じ込めてまで看病させる必要があるのかも答えてくれんのだ。口さえ聞いてくれん…」

 眉間に刻まれているシワから、彼がいかに心配しているかが伝わってきた。

「そこの所を聞きだしてはもらえないだろうか?」


○○○


「んで、バッチリ引き受けてきたんだ。先輩面で」
「スカル。コロネロはみまごうことなく先輩ですよ」
「フラン達の部屋は3012だぜ、コラ!」
「よく部屋番なんか覚えてんな。感心感心」
「テメェが覚える気ねぇだけだろ、コラ」

 次々と席を立ち、放課後の教室を後にしようとドアから一歩出た途端。いつも通りの激しい乱闘が始まった。生徒達が持つ武器は斧、ハンマー、真剣と様々。本当は廊下でも乱闘は禁止だが互いに気にすることはないのでモノを破壊しない程度に次々と相手を伸していく。銃声は教師陣に聞こえると厄介なので、リボーンとコロネロは体術で応戦する。
 最終的に学校を出たのはそれから三十分経った後、廊下と言う廊下、教室という教室にも潜んでいたが、呼吸するかのように彼らは倒していた。


○○○


 生徒に使わせるのかと疑いたくなるほどだだっ広い寮は、キッチン、冷蔵庫、洗濯機などなど日常生活に支障が出ないように家電製品が完備されている。
 病人の所へ押し掛けて行くと迷惑だろうということで、コロネロと秀忠、風が選抜としてフラン達の寮へ赴いた。リボーンとスカルは「面倒くせぇ」という理由で部屋に戻ってしまった。ただ、スカルは顔を青くしていたような気がする。
 オートロック式のドアは間に物を挟んであってわざと開けられていた。多分、誰でも入ってきても良いようにだろう。
 秀忠達は難なく侵入を果たすと、両サイドに分かれているドアの右側を開け放つ。
 そこにはベッドに潜ってじっとしているフランと、看病しているのか山本がそれに寄りそっていた。

「よぉう、フラン。熱出したんだってな、コラ」

 すると、今までフランを見ていた山本がぎょっとして振り返った。

「先輩方! 幽霊だったんすか?!」
「なぁに、マジカルなこと言ってんだ、コラ」

 驚いた山本の額をぴぃんと弾く。
 いてて、と涙目になった山本は「本物だ」と苦笑いした。
 お邪魔します、と入っていくと、山本は不思議なものでも見ているように綱吉達を見ていた。

「騒がしーですねーぇ」

 のっそりとフランが起き上がって、大人数で押し掛けてきた秀忠達を一瞥した。
 おでこに載ってるタオルを手て握りしめる。
その頬は熱を帯びているのだとハッキリわかるほど赤く染まっていて、いつも以上にとろんとした瞳が朦朧としているのを伺わせた。

「病人の所にはぞろぞろ押し掛けてこないのが基本でしょー…」
「ご、ごめんね。これでも数人に絞ったつもりだったんだ…――けど…」

 秀忠は綱吉の口調で申し上げた。今、うっかりいつもの口調で喋りそうになって詰まった。
 まだ二人には、綱吉と秀忠の話はしていない。
 山本とフランなら話しても大丈夫じゃないか、という話にはなったのだが結局保留と言う事で今も秘密にしている。
 いつかは話そうと思うが、信じてくれるのだろうか、と言うのが綱吉達の本心だった。

「フラン君。ナックル先生から聞きましたよ? 山本君を監禁してるんですってね」
「いやいや、そこまで酷く言ってねぇぞ、コラ」
「…――ナックル先生チクったなぁーぁ…」
「ん、監禁されてないっすよ?」

 山本は首を傾いで。

「フランの部屋のドアが壁に吸い込まれて出られないんす」
「幻術で監禁たぁいい度胸じゃねぇか、コラ」
「幻術?」

 山本は理解していないらしくキョトンとした。しかし、一日部屋に強制缶詰されたというにも関わらず、まぁ良いか、とフランのおでこに手を当てた。「大丈夫かー?」と問いかける山本は至って気にしていないようだ。

「ドアが壁に吸い込まれた、と言うことは、お二人共朝食、昼食はどうなされたんですか?」
「いやー。それが食べてなくて」

 山本はにぱっと笑って答える。

「と、トイレとかどうしたの…?」

 秀忠が恐る恐る訊ねると、山本は面白いものでも見たかのように「それがさ!」と顔をさらに明るくした。

「トイレ行きたいなぁって言うと、ドアが現れるんっすよ!」

 行って帰ってきたら消えちまうんすけど、と陽気に話す山本に秀忠はついつい風へと耳打ちする。

「あいつ馬鹿か?」
「それを言ったら失礼ですよ。秀忠君」
「とりあえず、フラン」
「何ですかーぁ」

 いつものように間延びした喋り方をするフランにコロネロは歩み寄ると、その肩を押して再びベッドへと沈めた。

「自分で寝れますよーぅ」
「だったら寝てろ、コラ。それと飯食わねぇで何してんだ。早く治らねぇだろーが、コラ」

 すると「よし!」とコロネロが目を輝かせた。

「それじゃあオレが夕飯作って…――」
「私が作ります」
「いいや! オレが…――」
「フラン君を見ててくだ、さい」

 にっこりと風がコロネロの肩を掴んで力ずくで座らせた。

「あー。でも、オレ達の部屋お菓子ぐらいしかないっすよ?」
「分かりました。では、購買から拝借して来ましょう」
「風…それって危ないんじゃ…?」
「大丈夫ですよ。ご心配ありがとうございます」

 風がくるりと振り返ると…――今まであったドアがぐにゃりぐにゃりと歪んでから壁に吸い込まれるようにして消えて行った。

「おい、コラ! 何でオレ達にまで幻術使ってんだ! コラ!」

 フランはもぞもぞと緩慢な動きで秀忠達に背を向けた。何も言わず、ふぅ、と零した溜息も辛そうだ。
 病人の前で騒がしく答えを要求するコロネロを余所に、風は気にせず消え去った扉に向かって、ドアを開ける素振りを見せて『消えた』。

「?!」
「あれ? ドア出てきた」
「何だと?! コラ?!」
「コロ先輩に代わってもらうんで、タケシィーは部屋に戻って良いですよ…」
「そっか」

 山本は今まで暇そうにしていたが、山本はフランが握っているタオルを取り上げて笑いかける。

「それじゃあ、今からタオル替えるから待ってろよ?」
「いらないですーぅ…」
「なぁに言ってんだ。おでこ冷やすのは大事なんだぜ?」

 「脇の下も」と言うべきか迷ったが、その間に「すぐ来るから」と山本も風同様の素振りを見せて壁の中に消えて行った。山本が言った通り、壁抜けをしているようだった。

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