[携帯モード] [URL送信]

日常編?
バレンタインデー、開幕
あの後、教室にやって来た教師達に事情を聞かれて、リボーンは満面の笑みを浮かべて白蘭と六道骸(名前は後で教えて貰ったが)の暴動だと答えた。
勝手に人の所為にしたわけだが、白蘭がそれに便乗して一層喚いたのだ。その姿は何処からどう見ても、我儘坊主だった。
そして、『今日の行事』についてぎゃあぎゃあと口論を繰り広げながら教室を出て行ったのだ。

その時、白蘭は綱吉に忘れず「また後でね〜♪」と陽気に笑って手を振って出て行った。
それを見送ったデイモンは先程から手にしていた紙袋から高さ2センチぐらいの厚みがある四角い箱を取り出し、それを生き残っている生徒達に配って行った。

「では、これを持って講堂に来なさい」
「何だ、これは?」
「それは講堂で説明いたします。もうすぐ開始しますので早く行きなさい。聞きそびれますよ」

残ったアルコバレーノクラスの生徒達が一斉にブーイングを起こす。特に、銀髪のロングヘアーの男が煩かった。

「絶対に来るんですよ? 良いですね?」

デイモンはそう言い残して教室を出て行ってしまった。
それに対し、風が唇を引き結んでむっすりしていた。

「怪しいですね…」
「あいつは何時だって怪しいだろーが、コラ」
「おぉおおし! 行くぞぉおおお!! ―――うごっ!」
「黙れ、カス」

先程から騒がしい銀髪男の頭を、ツンツン頭の男が殴りつけた。その後ろ、ムサイ男がくすくすと笑っていた。
今殴った男がザンザス。殴られた男はスクアーロ。笑っているムサイ男がレヴィだ。
山積みの対決していた男達と、それに追っかけられてきた男。
リボーンはその程度で認識しているが、実力は高い。あのセコーンドに似ていると言う理由から実子ではないかと噂が立っている程だ。ただし、昔から一緒に居たリボーンは一度も見たことがない。噂が独り歩きしているのだろう。

「それにしても、ジョット大丈夫なのか? コラ?」
「あん?」
「風邪を引いたと言っていましたが…」

あぁ、と適当に返す。
ジョットは何があったのか2日前から風邪を引いたらしく仕事を休んでいる。3日前からだったが、無理しているのがバレバレだったのでG達に強制的に排除されたのだ。
お陰で担当はあのいけ好かないデイモン。そのお陰で風のむっすり顔が朝と帰りのホームルームで拝める。

「相当、デイモンが嫌いらしいな」
「嫌いです。早くジョット先生には元気になって帰って来て欲しいです。もしくはデイモンには交代していただきたい」
「最後は呼び捨てだな、おい」

その気持ちは分からないでもないが、とリボーン達も講堂へ向かう事にした。どうやらザンザスは教室に残るようで、スクアーロとレヴィは教室をたった今、出て行ってしまった。レヴィの嫌そうな顔は見るに堪えなかった。

「ツナ、何か聞いてるか?」
「ううん。何も…」
「Gが何も言わねぇからな…」
「そこだよな、ポイント」

スカルが頭の後ろに手を組みながらそう言った。

「案外、深刻なんじゃね? 病状」
「深刻だと言っている傍から、そんな軽く言うのは不謹慎ですよ、スカル」
「でもなぁ」

スカルの推測には正直、一理あると思っている。
Gもデイモンと似て、風邪引いたぐらいならば「あの馬鹿は」と付けて病状を暴露する。それも軽い調子で。
だが今回、Gは特に何も言わず、ぶっすりと顰めっ面で「風邪引いた」というのだ。
大体そんな時は、昏睡状態だとかかなり深刻な状態で『Gが自身を責めている時』と言うのが大本だ。その事実はリボーンの中でしまってある。
話したら、綱吉が絶対そわそわして煩いに決まっている。それは面倒臭いので黙っておく。

教室を出ると、そうでした、と去ったばかりのデイモンが戻ってきた。

「言い忘れていました。お前達、武器を持って行きなさい」
「はぁ?」
「それだけです」

では、とデイモンはくるりと背を向けた。

「武器なんて何に使うんだろ?」
「まさか、どんちゃん騒ぎすんのか? まともなイベントやれってーの」

呆れたようにスカルが呟くと、教室へと戻って行った。コロネロも面倒だとぼやきながら戻っていく。

「お前も持って来い、ツナ」
「うん…」

先程からずっと黙りっぱなしの綱吉の背中を押して促す。多分、白蘭とかいう奴の事を考えているのだろう。

「それにしても…武器所持のイベントは特待クラスは教室待機だったよな。記憶が正しければ」
「そうですね。どうしたんでしょうか―――基本、イベントの運営はジョット先生の担当のはずですから、何か特別な理由があるとは思いますが…」
「何も無けりゃ良いんだけどな…何だかんだ言って、ツナはトロいし…」

鞄の中から手編みの手袋を取り出している綱吉を見て呟くと、風がクスクスと笑った。

「お兄さんみたいですね」
「義理だが事実上、兄だぞ」
「前よりらしくなってきました」

嬉しいですね、と風はそう目を細めて笑った。

「テメェには敵わねぇよ」
「そんな事ありませんよ。立派です」

そう呟いて、風らしくもなく先を歩き出した。

「私より、ずっと」

教室から綱吉達は出て来てると、風の後に続いて行く。
そんな奴の言葉を頭の中で響かせながら―――ほんの少し、照れている自分が居る事に気付いた。
リボーンは顔を逸らしながら彼等から少し距離を置いて後に続く。
にやりと笑ったヴェルデには口に銃口を突っ込んで黙らせるリボーンだった。


○○○


「何か、チョコレート入れてる箱みたいだな、コラ」
「あー。多分、そうじゃないかー?」

スカルがそう言って、箱を摘んでぷらぷらさせた。

「4日前ハッキングした時にチョコレートが600個入荷されてたぞ?」
「600だと?! コラ?!」
「あと、一昨日は基本5万超えのチョコレート9個」
「5万超え…ですか…」

何買ってんだ、と呆れるリボーンに、スカルはすげぇよな、とパンクメイクの顔を笑わせた。
スカルはアルコバレーノ生き残り組の中でパシリとして扱われている、頭脳派の学生だ。しかしパシリと言う言葉は相応しくない有能なハッカーで、その実力は学園で情報担当のアラウディを負かす程。情報収集のレベルは情報屋を生業としているマーモンの比ではないが、学園内の情報は常に懐に入っているそうだ。セコーンドが言うには、アラウディも彼には一目置いているという。

「その内10万が3つもあったぜ?」
「1つ10万が3つ…―――」

そこで指折り数え始めた風は、如何に苦労しているかが見てとれる。計算が済んだ風は、妹に服を買ってあげられる、と声を震わせた。

「それも世界で有名なチョコレート専門店の」
「何のために買ってんだ、コラ!」
「知るか。先生達が言うわけねぇだろ。600個のチョコレートはボンゴレとアルコバレーノクラスの人数分と予備を合わせた数だとして…後の9個は行き場が不明だ。教師だってここは30人居る。多分、私的流用だ。横領だよ横領」
「やって良いのか、んなこと?! コラ?!」
「駄目に決まってんだろー。普通に考えろって、コロネロも馬鹿だなー」
「んだと、コラ!」

調子に乗ったスカルがぎゃーっと悲鳴を上げてコロネロの鉄拳を食らった。
迷彩柄のバンダナがトレードマークのムードメーカー。将来軍人を志望している、ライフル射撃を得意としている生徒だ。
このアルコバレーノ生き残り組の中でも仲間思いの熱血漢で彼の直球さにはいつも助けられていると風は誇らしげに言っていた。

木造の扉を開いた先は、既に生徒達がごまんと集まっていた。木目の床板にクリーム色の壁には蔓と花が絡み合った白い模様が上っている。
その天井もクラシカルな模様で教会の大聖堂を思わせる様な作り。何百といる生徒達を容易に収納できた。

「それにしても、チョコレート使った年間行事なんてないはずですが…」
「相変わらずここの先公達は何考えてるか分からねぇな、コラ! チョコレートで何するってんだろうな」

スカルを殴って満足したコロネロに肩を叩かれたが、綱吉はそれよりも脳内を占めている事項があった。

白蘭という、見たことのない少年に「久し振り」と抱き付かれ、『命の恩人』とまでいわれたのだ。

自分の事を見知っているのに、綱吉はと言うと記憶にない。
誰なんだろうと、ずっと頭の中で反響させていた。

―――ヒデは、覚えてる?
‐分からない…白い髪の子なんて忘れられないと思うんだけれど…‐

「あの白蘭とか言う奴のこと考えてるのか?」


そう問いかけて来てくれたリボーンに、綱吉は正直に頷いた。

「オレもヒデも覚えてなくて…白い髪だから、会ってたら覚えてそうなんだけど…」
「じゃ、次会った時に聞けば良いじゃねぇか。お前を追っかけてこの学校に来たみたいだし」

綱吉は暫く黙りこんでから、そうだよね、とはにかんだ。秀忠じゃ見られない可愛らしいその笑みに、口元が緩んだ。
すると、講義台の上に立ったGが立つ。いつもの仏頂面に口をへの字に曲げている。

「うっわー…嫌な感じ。G、超怒ってんじゃん」
「あれ、マーモン? 何時の間に?」

[*前へ][次へ#]

4/43ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!