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日常編?
超余談【とある双子の王子達】
目を覚ますなり、双子の王子達は左右の扉をコンマ1秒もずらさず、寸分違わぬ勢いで開け放って飛び出していた。

「ベル、テメェ勝手にオレの部屋で寝てんじゃねぇえよ!」
「エル、テメェ勝手にオレの部屋で寝てんじゃねぇえよ!」

互いの胸ぐらを同時に掴み合い、同時に言い放った。

「あぁん?! それはこっちの台詞だっつーの!」
「あぁん?! それはこっちの台詞だっつーの!」

双子の王子は頬を引っ張りあい、しまいにはリビングでゴロゴロと取っ組み合いの喧嘩を始めてしまった。
それから数時間後、腹の虫が同時に泣いた。さすがの王子達も空腹に負けて喧嘩を一先ず止めると、そういえば、と思い出す。

「あの豚執事は?」
「起こしに来なかったよな? あの豚」
「何サボってんだ、あのデブ執事!」
「王子の世話できること光栄だろーが、手ぇ抜くんじゃ」


「ぎゃああああああああっ!」


「?!」
「?!」

今までに聞いたこともない執事の雄叫びに、双子の王子は身体を震わせて、ぎょっとした。しかも突然だったため、互いが互いに抱きつきあった。

「今の叫び声、オルゲルドだよな…?」
「ちょ、聞いてみるか?」

オルゲルドの部屋はラジエルの部屋の横。壁に耳を当てて、隣室の音を聞き取る。

『ちょぉっとぉ! 何なのよ、これぇ! 王子様の所の黒豚の丸焼きじゃないのぉおお!』
「気色悪! 言ってる事的確だけど!」
「キモッ! 喋り方、あのカマ教師みたいじゃね?!」

『あり得なぁああい!』
「あり得ねぇのはこっちだっつーの! あいつ、カマ趣味だったのかよ!」
「うげぇ! あんなの教育係りだったのかよ! あいつの存在の方が教育に悪くね?!」
「首はねてやろうぜ、リストラと処刑兼ねて!」
「王子達で処刑? しししっ。チョー賛成!」

よし、と壁から離れた王子達はにやにやと笑いながらリビングへ飛び出した。すると、部屋の扉が開かれて「遅くなりました!」と―――何故か、ビアンキが部屋に入ってきた。髪の毛ははみ出す事なく全てをキッチリ後ろで縛り、スーツ姿で入ってきた。

「お前、毒女じゃねぇか! テメェ、何で勝手に入って来てんだよ!」
「侵入罪だぞ! 殺されても文句はねぇよなぁ?」
「王子、お待ちくださいませ! 私、オルゲルドでございます!」

ビアンキは顔を青くして胸に手を当て、頭を深々下げた。

「大変申し訳ございません! 私めも目を覚ませばこの女の身体に入っておりまして…!」
「意味わかんねぇこと言ってんじゃねぇよ、ブス!」
「信じてください、ラジエル様…―――」

と、ビアンキは近寄って眉をしかめた。

「ラジエル様…ですよね?」

「失礼いたします」と、オルゲルドはラジエルと呼び掛けた少年の方の前髪をさらりと掻き上げた。
そこから現れた深紅の瞳に、片割れが口をあんぐり開いた。

「はぁ?! オレじゃん?!」
「あぁん?! 何訳のわかんねぇこと言ってんだ、この馬鹿…」

とベルフェゴールがもう片割れの前髪を掻き上げた。

「おぉお、オレぇえええ?! ばっ! テメェ、何やってんだ、アホが!」
「知るか! テメェこそオレの身体で何してんだっつーの!」

再び掴み合いの喧嘩を始めた双子の王子達に「すみません」と謝りながら、ビアンキは食事を作り始めた。
勿論、出来上がるのは毒料理。

最終的には隣にいるルッスーリア入りのオルゲルドに手伝ってもらい、彼らは無事朝食にありつけた。
何でも、オルゲルドが作っている食事よりもルッスーリアが作った方が美味しかったという。食事係になるよう言い寄られたが、丁重にお断りしたそうだ。



双子の王子達自身、
自分達の見分がついていない。




「おい、オルゲルド!」
「はい。何でございましょう? ラジエル王子」
「テメェ、何でオレらの見分けつくんだよ」

彼は、息吐く間もなく真顔でこう答えた。

「ラジエル王子は全てに気品があって優雅でございますから」
「………意味わかんね」
「ベルフェゴール王子はパワフルで元気がございます」
「………意味わかんね」



双子の王子。
聞き分け方は微かに違う
口調。

ほんの少しだけ違う
仕草。

そして、
幼い頃からの教育係りを
勤めていた故の勘だ。

城の中でも
そんな違いに気づけるのは
彼だけだと言う。


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あきゅろす。
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