日常編?
捜索、停滞
〇〇〇
腕を拘束したまま雲雀を和室の部屋へ連行途中。階段をかつんかつんと降りながら、そうしたら、とスカルであるリボーンは紡ぐ。
「家に邪魔したいって言っただけなのに『好きな人が居るんです』って断りやがった」
「トコトン空気読めないんですねー」
「違います。事実ですから」
呆れたようにコロネロであるフランは共感してくれた。一方、話をされているヴェルデはあっさりと事の事実を認めてクスクスと笑っていた。
「しかも、好きな人は『妹なんです』って今までに見せたことのない満面の笑みで堂々と言いやがって。シスコンにも程があるだろ。どんだけ大好きなんだっつーの。
1回も会わせてくんねぇし、顔も見せてくれねぇし」
「えー! それ、本当ー?」
呆れるしか出来ないシスターコンプレックスは奴の特徴だと言っても過言ではない。
そして、会わせてくれない理由と、写真を見せてくれない理由もこちらは呆れるしかないモノだった。
「見たらオレが一目惚するかもしれないし、会ったら妹がオレに一目惚れするかもしれないだってよ」
「んだよ、風! 馬鹿過ぎるだろ! コラ!」
「何言ってるんですか! 無いとは言い切れないでしょう?!」
真面目に返したヴェルデにゲラゲラと笑いだしたフランは再び咳き込んだ。笑いすぎるから、とコロネロがフランをつつき、骸が大丈夫かとフォローに回る。
「あのシスコンぶりに完敗だっつーの。暴露しても反応つまんねぇし。
やるだけ無駄ってこの事だ」
あーあ、と笑ってやれば、雲雀も笑みを浮かべた。
「僕の聞きたい話とは別だなぁ」
1階についた雲雀は、そう笑いながら降りきると、満面の笑みを浮かべてそう言い放った。
「僕が聞きたかったのは、『コロネロが本気で怒る』ほど話されるのが嫌なリボーンが泣いた話だよ」
「………っ! てめっ!」
「ほら」
雲雀はケラケラと笑って、スカルを見上げた。
「そこまで指定してねぇだろ。ヒントくれたら気が乗り次第話してやんよ」
「仕方ないなぁ。それじゃ、『僕の所に居る』よ」
「あん? 意味分からねぇ」
「でもヒントだしぃ」
仕方ねぇな、と言いながら、雲雀の部屋の前に辿り着いた雲雀(白蘭)はお邪魔しまぁーす、と戸を開けた。
ちょっと、と部屋の奥から山本の声と静かな怒気を肌で感じとる。
更に雲雀はキチンと靴を投げ捨てて立ち上がった。
「ひっで、たっだ、くーん」
「テメェ、確信犯か!」
がばっとリビングへ続く引き戸を開けると、雲雀は一瞬硬直する。
その後、「あーっ!」と盛大に声を上げた。駆け出した雲雀の後から室内を覗いてみれば。
綱吉と山本が、抱き合っていた。
「ちょっと! 秀忠クンは僕のだよ?!」
「テメェ! 人の弟に何してくれてんだ!」
ざわっと殺気が溢れ出す。
それを気にせず山本は「何って」と綱吉の頭ぽすぽす撫でる。
「二足歩行の練習」
一層殺気だったのは、間違いない。
「仕方ないでしょ。人間の四足歩行は気持ち悪かったんだから」
「好き放題言ってくれるなぁ、コラ…」
「歩いてる練習中に君達が大きな声出すから驚いちゃったんだよ」
大丈夫だから、と山本は綱吉の頭を撫でながら宥める。綱吉は埋めていた顔をそろりと上げて、こちらを怯えたように見つめた。
「つーか! 何で山本にはなついてんだ、コラ! オレ達の時はずっと泣いて―――」
「そんなこと知らないよ」
「ゲイ集団の下心でも察知したんじゃ無いですかー?」
コロネロへアルコバレーノ、ついでに白蘭と雲雀もぐりんと振り向いた。
「何言ってんだフラン、コラぁ!」
「僕がいない間にそんなイチャコラしてたの?! 最低! 手を出さないって信じてたのに! 不潔!」
「ちょっと…! 僕のハリネズミに何してんの……!」
すると、雲雀が「って言うか!」と話に割って入る。
「何で雲雀チャン以外になついてるの、その子!」
「君こそ何言ってるの。この子は『僕』になついてるんだよ」
落ち着いたらしい綱吉は、山本からゆっくりと離れてよろよろと一人でに立ち上がった。
「外見が違っても、僕は『僕』だからね」
綱吉はその後、嬉しそうに山本の腕にしがみつく。
仕方ないね、と満更でもなさそうに山本は頭を撫でた。
「あーあ。雲雀チャンの身体なら、秀忠クンとイチャイチャ出来ると思ったのになぁー」
「テメェ…まさか、その為に、こんな事したんじゃねぇよな…?」
「えーっと。90%ぐらい…―――」
「テメェ…覚悟できてんだろうな…? あぁん?」
ぱきり、とお兄さん組が指を鳴らす。流石は実行犯なだけあって、雲雀(白蘭)は唇を尖らせる。
「これも、お兄さん達が挙って秀忠クン達に近寄らせてくれないせいだ!
この間だって、一緒にお弁当食べようとしただけなのに『お腹すいてないから』とか言って邪魔してさ!」
「事実だったんだ、コラ」
真顔で答えたフランに、また雲雀は続ける。
「教科書忘れた時だって、机くっ付けて見せて貰おうとしただけなのに、何でiPad寄越すかな!」
「教科書忘れたんだろー? 善意で貸してやっただけだし」
リボーンは腕を組んだ。
「極めつけは喉乾いたから綱吉クンから貰おうとしたら、お茶の方が身体に良いってお茶渡して来るし!
しかも僕のお弁当にイチャモン付けてさ! 何様のつもりなの?!」
「それは身体に良いからですし、君のお弁当はどっちかと言うとお菓子でしたから…」
「邪魔するぜー、雲雀!」
殺気渦巻く人混みを掻き分けて、骸が割って入ってきた。辺りを見回して、「超和室じゃん!」と日本出身である骸の皮を被った山本は目を輝かせた。
「すげぇな、雲雀の部屋! これから遊びに行っても良いか?」
ぴきり、と笑顔絶えないはずの山本のこめかみに、クッキリと青筋が浮かぶ。
「六道骸…!」
「オレだって、雲雀! 山本武…」
綱吉をソファーに放り投げる。勿論、待っててね、と優しい笑みは忘れない。
綱吉はそれにニッコリと頷いて返した。
飾ってある薙刀を引っ掴かんで山本はこちらにやって来た。
「ん〜。マズイ?」
「タケシぃー。避難をオススメしますー」
骸が苦笑いを浮かべて、コロネロが注意を促した。
「退け!」
薙刀を凪ぐとリビングと玄関を仕切っていた引き戸を綺麗に切り分けた。
ばさり、と倒れる引き戸の亡骸で入り口が広がった。
「やっべ! 時雨金時持ってきてねぇって!」
「持ってきますー?」
「頼むわ!」
「お待ちなさい」
すると、白蘭が何処から取り出したのか、三叉槍をぱしりと骸へ手渡した。
「それなら、数分は持つんじゃないですか?」
「サンキュ。後でチョコレート奢るわ」
骸は白蘭にそう約束すると、飛び出していった。
山本は骸の頭を狙うように薙刀を一閃してその後を追う。
また後でー、と骸が陽気に再開の約束をして1階から出ていった。
「あーあ。仕方ないなぁもう……そろそろ潮時かぁ」
呆れたように雲雀が頭の後ろで手を組んで背を向けた。
「ねぇねぇ骸クン。ちょっと着いてきてよ。僕の身体だし、変なことされたら嫌だから」
「貴方が招いた事でしょう。そんな義理ありませんょ―――」
「桔梗チャンにいーっぱいチョコレート菓子用意させるからさぁ。ね?」
雲雀の誘いに、仕方ないですね、と骸は満更でもなさそうにくすりと笑う。
「携帯電話貸してー」
白蘭は雲雀に携帯電話を渡して歩き出してしまった。ボタンを押してメールを打ちながら出ていってしまった。すると雲雀の室内からがたんと音がする。慌てて振り替えればヨロヨロと綱吉がソファーづたいに立ち上がった。
「ヒデ…―――じゃ、伝わらないのか」
大丈夫か、と静に歩み寄ると、綱吉はじっとこっちを見てから手を伸ばしてきた。慌てて身体を支えると、しっかりと抱きついて一歩踏み出す。二足歩行の練習とは言っていたが確かにこれは酷い。生まれたての赤子みたいだ。
抱き付かれるとこちらが歩き憎いので肩を回して貸す。スカルの身体で良かったと本気で思った。
「ひ……ぱ」
「ひぱ?」
綱吉はまた歩き出すと、また「ひぱ」と呟く。
「ひぱ、り…」
「………『ば』が発音できねぇのか…」
するとまた綱吉は「ぱ」と呟く。
「ぱ!」
「ば」
「ぱ!」
「ば」
「ぱぁ!」
「何やってんだ、オレは…」
綱吉と肩を組んで歩き出す。しかし、慣れていないせいで足元がおぼつかない。
「遅せぇ」
肩に担ぐと綱吉はしばしば沈黙の後、パタパタと暴れ始めた。歩行練習したいならまた後でだ。
「雲雀に会いたいんだろ?」
「くぅ…」
黙り混んだ綱吉はだらんと大人しくなった。そのまま担ぎ上げて雲雀達を追いかける。
「そう言えば、ヴェルデは居なかったんですか?」
「居ないよなぁ。騒ぎになったなら顔出しそうだけど…」
ぺしぺしと背中を叩く綱吉は、うーっと唸って早く行くよう催促する。
どんだけ雲雀が大好きなんだ。見下ろすと、綱吉がじっとこちらを見上げている。
可愛いと思ったら負け…―――。
「ちょっと兄ちゃん。お話聞かせてくんねぇか、コラ?」
「出来れば、今、頬が紅潮していたことについて詳しくご説明、若しくは言い訳をお聞かせ願います、お兄ちゃん?」
フランとヴェルデに挟まれ、後ろからはヒョイッと綱吉を引き抜かれる。
「スカル! 何やってんだ!」
「肩に担ぐより背負った方がいいだろ? それにソレオレの身体だからそんなに持たねぇし。
この中で余計に体力使わせても良いのは『リボーンだけ』だ」
にやりと笑った我が身体に怒りが込み上げてくる。しかし、サイドをガッチリ固めている友人達が肩を掴んできた。
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