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日常編?
捜索、開始
ボンゴレクラスの寮へ向かいながら、スカルであるリボーンは嫌そうに顔を青くして溜息を吐く。これから会いに行く雲雀を心底嫌がっているのだ。

「まさか、こんな形でまた雲雀に会うとはなぁ…はぁ…」
「スカルは出会い頭に殴られたんでしたね」

だから、とそこでスカルが頭を小突く。どうも義兄は自分の姿がヘタレに映るのが嫌らしい。風はそれを思い出して苦笑した。
秀忠も表には出ていなかったが、スカルが殴られる所を綱吉の視界を通して間近で見ていた。しかし、スカルはちゃんと防御しながら攻撃に合わせて身を引いていたのをしっかりと目撃している。

秀忠は今、風にお姫様抱っこをされながら運んでもらっている。中がヴェルデと言うのが激しく気に入らないが、目覚めた時に知らない奴に担がれていればまた泣きでしてしまうだろうから、その対策のためだ。
因みに、そのハリネズミはまだ夢の中である。
今、マーモンと会話が出来るのはハリネズミが寝ている時だけだ。起きている時に話そうとすれば、頭の中に聞こえてくる声に怯えてまた泣き出してしまうのだ。
最初は落ち着かせようとして声をかけたけど、自分が声を掛ける度に酷く泣き出してしまい、話は聞いてもらえなかったのだ。だからこそ、リボーン達が話を掛けても、このハリネズミはちゃんと聞いてくれなかったのだと思う。

スカルの情報によると、雲雀だけ特注で和室の部屋が提供されているらしい。ボンゴレ棟の1階に後から継ぎ足したように整備されているという。
自動ドアで棟に入りこめば、ずっと奥に縦縞模様のように木が彫られた引き戸が有った。そこの前に人が1人立っている。

「んー。あれ…―――」

イガ栗のように跳ねた赤い髪の毛が印象的な人間だが、秀忠には着用している服がミスマッチな気がして仕方なかった。

「おーい!」

今までノックしていた少年は目をパチクリさせながら振り返った。ぱっと顔を明るくさせて、おーい、と手を振って駆け寄って来た。

「フォン殿ですね! 雲雀殿からお話しは常々伺っています!」

風に駆け寄ってきた少年は深々と頭を下げた。
やっぱりそうだ。後ろから見ただけだと

「誰だ?」
「はい! 拙者バジルと申します!」
‐それより、こいつが着てる服。学ランなんだけど…―――手作り?‐
「バジルだっけ。君、その服は手作りかい?」
「はい! 雲雀殿のジャッポーネの服に憧れて作ったんです!」

どうですか、とマーモンに首を傾げたが。手作り感が溢れている残念な学ランと言ったら失礼だろうか。マーモンは腕を組んでふむ、と呟くと。

「下は良いとして、縫物下手だね。学ランには程遠いよ」
‐ざっくり言い切ったな…‐
「そうなんです。学ランは作るのが難しくて…―――今、試しに作った奴を雲雀殿に見てもらおうと思っていたのですが…」
「お前、校内放送聞いてなかったのか? 部屋で待機だろう?」
「校内放送? 拙者はつい先程起きたので雲雀殿の所へやって来たのですが…」
「…お前、今の自分の姿ちゃんと見たか?」

首を傾げたバジルは不思議そうだったが、何かに気づいてはっと目を見開くと、頭を撫で始めた。

「もしかして寝ぐせ―――あぁ、これは酷いですね。凄い逆立ってます」
「気づいてねぇな、こりゃ」

明らかに、その少年が意図的に立たせているか、持ち前の髪質だと思われる。仕方ねぇな、とリボーンとスカル、フランの3人でトイレに連れて行くと、「ロンシャン殿!」とバジルは大声を張り上げた。やはり、と言うべきか、無差別で入れ替わっているようだ。しばらくしてからロンシャンと身体が入れ替わったことに気付いたバジルは照れたように苦笑した。

「道理で見たことない部屋に居ると思いました。そうでしたか、あのゴミだらけのお部屋はロンシャン殿の…―――」

するとロンシャンはくるりと踵を返した。

「では、ロンシャン殿の部屋を掃除しに行ってきます」
「いや、まず部屋で待機してろって」
「しかし、あんな不潔な所ではロンシャン殿の身体にも悪い気が―――」
「身体が戻ってからでも良いだろ。一緒に部屋掃除してやれば」
「そうですね! そうします!」

ロンシャンはにっこりと笑った。

「ところで、皆さんはボンゴレ棟に何か御用ですか?」
「本当は雲雀の所にいるハリネズミに用事があってな」
「雲雀殿のペット殿ですか? 確かに、お部屋で飼っていると聞きましたが…―――今からお邪魔しようとしていたので、聞いてみますか?」

スカルが頼むと、ロンシャンはヒノキのドアを叩いて雲雀を呼んだ。しばらくすると、靴の擦れる音がしてドアの前で人影がピタリと止まった。

『誰…!』
「拙者、バジルです! あ、今はロンシャン殿のお身体で訪問させていただきました! あと、アルコバレーノの先輩達が雲雀殿の飼っているハリネズミ殿に会いたいと―――」

すると、がらりと木製の引き戸が開けられた。それと同時に飛び出して来た影が、目の前に居たロンシャンに掴みかかる。

「お前…」
「タケシじゃねぇか、コラ!」

違うよ、とあの爽やかに笑うスポーツマンの少年が―――眉間に皺を刻みつけて睨んで来た。

「え?! 山本殿―――」
「違う! 僕は雲雀恭弥だ! それより、僕のハリネズミ何処!!」
「は?!」

声を一斉に揃える。
中でも冷静になったバジルであるロンシャンは、落ち着いて下さい、と山本を宥めにかかるが怒りは収まらないようだった。
そして自分達はハリネズミの本体が此処に居ないという現実にただ驚くしかなかった。

「雲雀の所のハリネズミ居ないのかよ?!」
「っていうか僕のハリネズミに用って、勾引(かどわ)かしたの君達…?」

※勾引かす…女や子供を騙して誘拐する。

「違います。雲雀君はこの現状を―――」
「って言うか、群れ過ぎ…―――フォン、その茶色いの下ろしてから中で説明して」
「あ、えっと…」

戸惑うしかないヴェルデ(風)に風(ヴェルデ)は構いなしに無理だ、と言い張った。

「最低でもあと2人の同行が必要だ。綱吉だけは何が何でも『お前から』離すわけにはいかない」
「意味が分からないんだけど―――それより、群れ過ぎ…!」
「もう、面倒臭い」

そう呟いたマーモンがぱっと山本へと手を伸ばす。すると、一瞬目を見開いてから、顔を歪ませた。

「何したの、君た―――」
「入室は僕と風、それに秀忠の3人だ。話は風がする。僕達は別室でコソコソさせて貰うよ。風呂場でも何処でも良いからね」

すると山本である雲雀はじっとマーモンを睨みつける。

「仮にも僕の部屋に踏み込む客人を、客間以外に放り込めと? 常識外れにもほどがある。僕はそんな不躾じゃない」
「僕は君を常識外れだと認識していたよ。訂正しておくね」

それじゃ、とマーモンは部屋に上がっていく。平らな石が敷き詰められた所が如何にも日本の風情を漂わせている。そこを直ぐに小上がりがあるのだが、そこまでマーモンは気にせず足を上げてしまった。

「ちょっと何してるの!」
「何って、君の部屋にお邪魔するんだけど」
‐日本では、玄関に当たる場所では靴を脱いで上がるんだ‐
「そうなんだ」
「何、君こそ非常識じゃない…!」
「日本の習慣を知らなかっただけさ」

マーモンはくすりと笑ってから、改めて黒い皮靴を脱いでから室内へと入って行った。

「いつまでぼーっとしてんのさ、ヴェルデ。それとも風の身体とでも言うかい」
「オレ達は?!」
「居たらゴチャゴチャ口出すでしょ、邪魔なだけだ」

マーモンはしっしと追い払って、彼等の入室を拒む。秀忠を抱き上げたまま、靴を抜いて風は上がって行った。

「雲雀殿! 用事が終わったら、拙者の学ランも見て欲しいです!」
「…後でね」

山本はぺこりと頭を下げたバジルに、溜息を吐いてからドアを静かに閉じた。

「群れ無いんじゃなかったのか? 雲雀」
「あれは受講生みたいなもんだよ。日本オタクのね」

山本は再び引き戸を開けると、客人である自分達を迎え入れた。

「リビングも和風だね」
「ここは応接間だ。外国語で表現しないで」

そう言う割には、客人を持て成すであろう椅子はソファーだった。向いあっているソファーの間にあるローテーブルにはそのままの木を加工してニスを塗っただけのような物。その上には文庫。四つ葉のクローバーのしおりが挟んである。押し花のようだ。床はカーディナルレッドのフェルトみたいな絨毯である。
奥には薙刀が飾られるように置いてあった。
そこに腰掛けて、と言って、山本はキッチンへ入って行ってしまった。

「どうするの。秀忠寝たままだ。床に置かないでよ」
「当たり前だ。仕方ないからソファーに寝かせておけば良いだろう。私は絨毯でも構わん」
「その寝ている彼」

山本がお盆に和菓子とガラスの丸くて小さいガラスに緑茶を煎れてやって来た。

「叩き起こしなよ」
「してやりたいが、お前の所のハリネズミでも構わないか?」
「…は?」

訝しげな表情からは「何言ってんの」と言いたげな表情だ。

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