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日常編?

〇〇〇


風の服にしがみついて離れない綱吉を風が抱えながらリビングのソファーに座り込んだ。
綱吉は風の太股を枕にすると、身を縮こませて眠り込んでしまった。

「睨むな。不可抗力だ」

睨むななんてどっちの台詞だ。頬杖を付きながら風であるヴェルデも此方を睨み付けている。
風は腕を組んで首を傾げているヴェルデに呼びかけた。

「風。貴様、本当に記憶に無いのか」
「あー………さっぱりです…」

あの後本気で風を殺りそうになったが、流石と呼ぶべきかこの天才。『風を知ってるんじゃないか、こいつは』と機転の利いた発想で殺人罪を未然に防ぎ、彼自身も難を逃れた。

「つーか、風だったら色んな人でも動物でも助けてるだろ。テメェと違って」

じとりと見てやれば、風は嘲笑するようににやりと笑う。

「当たり前だ。私の利益になる者以外は実験台でしかないからな」
「風からはぜってー聞けない貴重な発言だな、ゲス野郎」
「ゲス野郎ではない。科学者だ」
「テメェの答えはいつもソレだよなぁ、つまんねぇ」
「笑わせるのは趣味ではないからな。周りの阿呆共に頼め。大いに貴様を楽しませてくれるだろう」
「全くだぜ。テメェも含めてな」

思い出せなかったらしいヴェルデである風が「駄目です」と頭を振った。

「そんなに再開を喜んでもらえるような事をした覚えが全く有りません…」
「他人が自分にしてくれた事は覚えてても、その他人は案外覚えていないもんだしなぁ、コラ」

フランがソファーに寄りかかりながら、はぁーっと溜め息を溢した。

「どうする? ツナん中身、外見風のヴェルデと置いとくか?」
「ぜってーヤダ」
「駄目だろ、コラ」
「それだけは何としても避けたいですね」
「貴様ら。この私を何だと思ってる?」

睨め付けるようにこちらを見てきた風に、フランは鼻で笑い飛ばした。

「変態科学者以外にあんのか、コラ?」
「変態は余計だ」
「あーあ。マーモン居たらまた面白かっただろーなぁ、コラ」
「もしマーモンが居たら誰と入れ替わってたんでしょうね」

そんな会話をして。
暫く沈黙して。


「マーモン居るじゃん! 今まですっかり忘れてたじゃん!」


リボーンであるスカルががばっと立ち上がって綱吉の部屋に駆け込む。そういえば、と自分も思い付いた。

「つーか、ヴェルデの身体なら中に居る奴の声も聞こえんじゃねぇのか?!」
「そうだぜ、コラ! ヴェルデも話出来るじゃねぇか!」
「それは無理だ」

見えた期待を風はバッサリと切り捨てた。

「簡単に言えば私が他人から受信するのは暗号化されたモノを翻訳してから会話している。
 お前、文字化けしたメールは読めるか?」
「え…文字化けしたモノが読めるんですか?!」

勿論だ、と風が誇らしげに返す。

「データを破壊されそうになった時にな。死守したんだが荒っぽい方法で相手に返したのが不味かったらしい。こっちのデータにも影響が出て文字化けしてしまってな。解読したのだ」
「す、すげぇな、コラ」

感嘆したように呟いたフランに、ヴェルデは特に表情も変えず、ただ目を細めた。

「私は天才だ。出来て当然だろ。まぁ、知らなくてもいい他人の考えが読めるようになったお陰で根底の悪意を一層感じられるようになったからな。
 私のデータを持ち逃げする人間の検挙率が上がったのが喜ばしいぐらいだ」
「オレには負け惜しみにしか聞こえねぇけどな」
「相変わらず、ハッキリ言ってくれるな、リボーン」

にやりと笑った風にけらっと笑い返してやる。

「良かったな。ツナが聞いてたら怒ってるか悲しむかどっちかの話だな」
「何故だ」

きょとんと首を傾げた風になっついるマッドサイエンティストは不思議そうに首を傾げた。

「周りでサポートしてた研究者に『そんな奴がいた』って言ってるもんだろ」
「居て何が悪い? 欲にかられるのは普通だろう?」
「誉めてやんよ。テメェはどっか心が寛大だな」
「そんな下らないことはどうでも良いが、私の研究が盗まれるような事になるのは当たり前だろう」

ふふん、と誇らしげに。
研究者である彼は笑った。


「私のする研究は、どれも素晴らしいものだからな」


こぉーの、自信過剰。

呆れるしかないような発言は、自信と誇らしさ故に清々しいものがあった。

「お前は、『敵』ってモンに定義があるか?」
「私の研究を邪魔する奴だ」
「せまっ」
「ぬ、盗まれたりするのは良いんですか…?」

しどろもどろするヴェルデに、風はあっさりと頷いた。

「盗まれようが名前を偽って公表されようが、完成しているならば『研究は成功』だ。
 次に取りかかるまでだ」

はぁ、と、あっさりとした清々しさが呆れに変わってきた。こいつはの欲は研究にしか向いてないのは救いかもしれない。
そんな会話が終わって、綱吉の部屋に入り込んだリボーンが「有ったー!」と声を張り上げて出てきた。携帯電話を弄りながら、ニヤニヤと笑っている。
イケメンなオレだから許せるが、プライバシー侵害の何物でもない。

「何やってんだ」
「マーモンに来てもらう」
「帰ってくるの夕方だってツナが言ってただろうが」

リボーンはにやりと笑って携帯電話を閉じた。


「すぐ来るよ。返信は口で聞ける」
「はぁ? 何いっ―――」
「どうしたの、ツナ! ヒデ?!」

しゅん、と部屋に現れた黒衣の情報屋―――マーモンが、風の足を枕代わりに眠っている綱吉に駆け寄って、その風を見上げる。

「ちょっと! 僕のツナとヒデに何してんのさ、変態科学者!」
「貴様のではない。私の研究資源だ。そして、私の呼び名に変態は―――」
「黙りなよ…」

すっくと立ち上がったマーモンは風を見下ろした。今、一瞬だけマントの隙間からあの綺麗な赤い瞳がギラリと光った気がした。
その迫力、怒気は共に凄まじく、あの自己中心の塊であるヴェルデが風の姿で固唾を飲んだ程だ。これだから女は怒らせるモノじゃない。
すると、突然マーモンはふっとそれらを隠すと、眠っている綱吉の前に膝をついて「どうしたの?」と首を傾げた。
気分がコロコロ変わって対応に困る。

「それは大変だったね、ヒデ…可哀想に……」
「会話出来るんだ?!」
「つーか、中にヒデ居たのか、コラ!」

眠っている綱吉の頭を撫でて、マーモンは秀忠から説明を受けているようだ。
うん、と話をしっかり聞き入れている母親のように、マーモンはしっかり頷く。
マーモンはまた優しく頭を撫でると、こちらを振り向いて綱吉から風を引き剥がして宙に浮かせる。

「話は大体ヒデと『お前達』から聞かせて貰ったよ。
 まずそこ座れ、馬鹿5人組」
「何を言う。私はてん―――」


「黙れ。グズ」


赤い瞳が、虫を見すように冷めきっていた。
すると、風は浮いている所から立たされると、俯きながらすっと座りこんだではないか。今まで見たことのない潔さに唖然となる。

あのヴェルデを黙らせた?!

「い、今のは…言うな……」
「ユーロ」
「………ブラックカード1枚分の金を用意しよう…」
「良いよ。黙っててあげる」

何の交渉をした?!

顔を真っ青にして答えたせいで更なる驚愕へと突き落とされた。

「ほら、そこの下心満載の馬鹿共も座れ」
「誰が下心満載だ…―――」
‐可愛くて頭のネジが飛びそうらしいね。殺すよ‐
「はい…」

正座をするよう促され、しっかりと正座をさせられると、頭の中に「ごめん」と謝る秀忠の声が響いた。

「ヒデの声だ!」
「当たり前だろ。ヒデが話したいって言ってるから手伝ってるんだ」
‐ありがとう、マーモン‐

嬉しそうな声音からは自分達が何を考えていたかは伝わってはいなかったようだ。

「それより、ヒデ。お前は大丈夫だったのか?」
‐うん…オレは中に居たから何処かに入れ替わることはなかったみたいなんだ…でも、出られない‐
「出られない、のか?」

うん、と秀忠は答える。

‐『本体』のツナが許可してるから、オレは身体を借りて出れるのかもしれない。でも今の身体の主はこいつだから、拒絶されて出られないみたいなんだ‐
「こいつって、誰か分かるのか?!」
‐あぁ。基本的に片言の日本語だけど名前はちゃんと聞こえたから。
 まぁ、記憶の映像で十分だったけど‐
「日本語が?」

首を傾げたリボーンに、待てよ、とスカルは話を止める。

「オレ達、最初にイタリア、日本、英語で話しかけてるんだぞ。何で話が通じなかったんだ?」
「馬鹿5人組の大将さん。君はオウムといった鳥類以外で言葉のキャッチボールをしてる動物を見たことあるのかい?」

マーモンは嘲笑するかのように口をにやりと笑わせる。

「動物だって言葉を覚えれば喋れる奴も居るけれど、口内や脳内の構造で言葉を発する奴は少ないよ。ツナの身体の中に入ってる奴はそんな動物」

マーモンの後を引き継いで、秀忠は告げた。


‐雲雀の、ペットのハリネズミらしいんだ…‐


思い出すは風に瓜2つのボンゴレ特待生。
学ランなる変わった服を纏った、暴れん坊。
彼が頭の中で、興味ないよと言わんばかりに顔を反らした。



『友人達の中身』end

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あきゅろす。
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