[携帯モード] [URL送信]

日常編?
友人達の中身
コロネロの部屋までやって来たヴェルデ(風)は、インターフォンを押した。
しかし、何時まで経っても出てくる気配はない。

「引き返しましょうか」
「その前に私を下ろせ、風」
「何だか、自分で自分に言ってるみたいで面白いですねぇ」
「話を聞かんか阿呆」

すると、ぴ、とインターフォンのマイクが入った。どちら様でしょう、と恐る恐るした声音はコロネロの物ではなかった。

「すみません。コロネロの友人です。中にコロネロは居ますか?」
『えーっと…あの―――』
‐めんどいんで居ないと言って下さーい‐
『い、居ないで―――』
「聞こえましたよ。開けて下さい。でなければ実力行使で開けます」
『すみませんっ…』

がちゃ、とドアを開けてくれた同室の生徒にお礼を言って中に入っていく。
インターホンから聞こえてきたと言うことは、そこに近いリビングに居るはずだ。

「コロネ、ロ…―――」
「違いますよー」
「えぇ。見れば完全に違うと分かりますね」

コロネロはリビングでソファーに寝っ転がりながらテレビの観賞。更にはボリボリとコーンスナック菓子を貪っていた。そんな姿など、本来のコロネロが曝す筈がない。
特に彼は友を大切にする人間だ。例え見たいテレビが有ったとしても友人の来客を拒むような真似はしない。

「君、誰でしょう?」
「いきなりその質問来ますかー。いえ、その肝の座り具合は流石ですねー」
「ヴぇ、ヴェルデさん! もしかして…!」
「ヴェルデを知ってるんですね? ですが、私は風と言います」
「貴方の事知らない方が珍しいでしょー」
「その口調。もしかしてフラン君ですか?」
「ごめーとーですー」

旅番組を見つめたままのコロネロはそう認めた。起き上がる所を見せない所、本気でゆっくりしているようだ。

「え?! コロネロさん、本物だって…」
「だって本当の事言って巻き込まれたら色々面倒じゃないですかー」
「とっても面倒臭がり屋さんなんですね、フラン君は」
「おい、風。いい加減下ろせ」
「必要最小限の労力しか使わないのがミーのポリシーですからー」

それに、とテレビ画面がコマーシャルに変わったからか、フランは起き上がってこちらを見上げた。

「コロネ先輩なら、この状況になった場合、絶対『自分の身体』の方に来ると思います。なら、ミーは大人しくしている方が妥当だと思ってますから」
「成程。擦れ違いを避ける賢明な判断でしょうね」
「風、聞いているか?」
「それに、仕入れたい情報もついでに持ってきてくれるでしょうからね」

後ろでおどおどしている生徒も「待った方が良いのかな…」と呟きながら辺りをうろうろし始めた。
仕入れたい情報、とはまた含みのある言い方だ。

「メールは見ましたか?」
「だから…」
「見て削除しました」
「見ておきながら削除したんですか」
「おい、風。いい加減下ろせ…!」

分かりましたよ、とコロネロの横にお怒りを見せるヴェルデ入りの風を下ろした。先程から特に抵抗を見せなかったので、逃げないだろうと判断してだ。
担がれていた風は「こんな気分なのか」と呟いた。

「では、旅番組終わったんで寝直しますー。こんな摩訶不思議な夢は寝て終わるまで待つのが一番…」
「とっても良い現実逃避手段ですね」

部屋へ戻ろうとするコロネロの手を引っ付かんで引き留める。丁度其処へ、ぴんぽーん、と部屋にチャイムが響きだした。もう片方の生徒が応対する。

『あーんと! フランだ、コラ! 中に居るコロネロに用があんだ、コラ! 呼び出してくれ、コラ!』
「完璧にコロネロですね。入れてください」

生徒は慌てたように来客者を迎え入れる。するとフランは「良かったぜ」と言いながら室内に駆けこんで来た。この緑の髪にどこか魂が抜けているような面持ちの少年は、間違いなくフランだ。

「あ! 風にヴェルデじゃねぇか、コラ!」
「おはようございます、コロネロ」
「え…―――」

するとフランの顔がちょっぴり青くなる。身を引きながら、もしかして、と呟く。

「お前…風…?」
「はい。運良くヴェルデと入れ替われたみたいです」
「運悪くの間違いじゃねぇか、コラ?」
「そんなことありませんよ。これで日頃偏食のヴェルデに食事を食べさせることが出来るんですから」
「面倒だ。コロネロも来たし、帰っても良いだろう…」
「駄目ですよ。一緒に朝ご飯食べるんですから」
「無駄な執着心だな…」

はぁ、と呆れたように風が溜息を吐いた。無駄、と言われたことは少々頂けないが、人の価値観とはそれぞれ違うものだ。取り敢えず、大人しくそこに居てくれているので、良しとする。

「おい! お前誰だ、コラ!」
「フランですー。一昨日ぶりですねーチョココロネ先輩」
「だぁからパンじゃねっつーの! コラ!」

ソファーに腰掛けたままのコロネロに駆け寄ったフランは、「久し振りだなぁ!」と元気に明るく笑った。普段のフランでは見られない貴重な表情の1つだろう。一方、無表情のままであるコロネロなんて激レアものだ。写メールに収めておくべきだろうか悩みながら、白衣の中から携帯電話を取り出した。

「あぁ、風。その携帯電話は絶対に手放すな。身体は所詮『私』のものだ。それが無くなった途端に吐き気と頭痛を催すからな」

確かにと携帯電話を見下ろした。
磁気のようなものが携帯電話から発せられて『周りでうようよ動いている何か』を弾き飛ばしているのだ。
ヴェルデの身体が特殊に出来上がっている、と言うよりは―――『身体その物がおかしい』気がする。
まるで、機械の一部。磁石のような。

「はい、分かりまし―――」

た、と言った瞬間。ソファーに座っていた風は身を翻すように玄関へ飛び立った。

「こら、ヴェルデ!」
「貴様の身体は無駄に動きが良いな。『使わせて』もらうぞ」

風はドアの前で嘲笑するように笑ってからこちらに一瞥くれた。

「何するつもりですか?!」
「安心しろ、殺しはしない。とある『鉱石』に触れて貰うだけだ」

ではな、と風は髪と服を翻して部屋から飛び出してしまった。慌てて追いかけたが、流石は我が身体。すでに百メートル先に有るエレベーターに乗り込んでしまった。

「エレベーターより走った方が早いんですが…」
「テメェの観点はそこか、コラ」

フランに突っ込まれて仕方ないですね、と頭を振る。するとコロネロは背もたれに腕を乗せると、すみませーん、とフランの集中をヴェルデから自身へと向けさせた。

「コロネ先輩。タケシぃーはどうでした?」
「山本か、コラ? あいつ、は…何か不機嫌そうに出て行ったな、コラ。『僕の部屋じゃない』って言ってたぞ?」
「そうですかー」

そう言ってコロネロはゆっくり立ち上がると面倒臭そうに頭を掻いた。その姿の貴重な事この上ない。そして、その傍に居る元気なフランの姿。バレンタインデーがあってから山本と共にアルコバレーノクラスに顔を出してくれるようになった。基本無気力で無表情な彼のようなタイプは、大概面白いことも『頭の中』で済ませてしまうと言う。此処まで生き生きと表情をコロコロ変えるのは絶対に見られないだろう。

「コロネロも見つけることが出来ましたし、今から綱吉君の所に行きましょう。今、リボーン達が向かってるんですよ」
「そうですか。じゃあ、コロネ先輩、取り敢えず携帯電話交換しましょう。ミーは自分の携帯じゃないと嫌なんで」
「そうだな、コラ」

はい、とコロネロがポケットから携帯電話をフランへと差し出す。すると丁度、背面ディスプレイがスカルからの着信を告げた。紫色のライトが点滅する。

「ミー出るべきですか?」
「いや、出なくて良い。スカルだしな、コラ」
「待って下さい。スカルはリボーンと精神が入れ替わってるんです。きっと、綱吉君の事で連絡だと思いますから私が出ま……」

すっとコロネに渡されただフランが携帯電話を取って通話に出た。そして、真っ先にコロネロだと名乗り上げる。

「すみませーん。センパイ達あっさりと現状の事実を受け入れ過ぎじゃないですかー?」
「しかし現実である以上、否定していては先に進まないと思います。
 まずは受け入れて、それから考えてみるのが一番だと思いませんか?」
「建設的ですねー」
「は? 何でイタリア語と英語と日本語意外…?」

フランは「何でだよ」とガッツリ眉間にシワを刻み込んで腰に手を当てた。
ヴェルデ(風)とコロネロ(フラン)は、不思議そうに顔を見合わせた。


〇〇〇


嫌がるコロネロを連行して綱吉達の部屋へやってくれば、リボーンであるスカルに開けてもらった。

「どういう事ですか? 外国語なんて…」
「いや、参ったぜ…全く―――」


うわーぁあああ!


「?!」

突然部屋から聞こえてきた泣き声は綱吉のモノだ。しかも盛大に泣いている。

「つ、綱吉君に何があったんですか?!」
「さてはテメェ、殴ったな!」
「違ぇ。『中身』が相当の怖がり屋らしい」
「は?」

取り敢えず、とスカルはわんわんと泣き叫ぶ声が聞こえてくる部屋をこっそり開けた。
中ではオドオドしながらスカルであるリボーンが泣き叫んでいる綱吉に大丈夫だから、と頭を撫でていた。
ずっと泣きっぱなしの綱吉のあどけなさに少しだけキュンとなる。
隙間から覗いていたドアを静かに閉めるスカル。

「ツ、ツ、ツナ、めっちゃ泣いてんじゃんか、コラ!」
「オレ達と目があったらいきなり『これ』なんだよ…」
「会うなり…いきなり泣き出したって事ですか?」

あぁ、とスカルはお手上げだと言わんばかりに両手を上げた。

「しかも言葉が通じないらしい」
「は?!」
「名前聞いても、あーやって泣くだけなんだ…」


あぁあああーん!
うぁあああー!


そして、スカルは少しだけ頬を赤く染めた。


「可愛くて仕方ねぇ…」


確かに、と仲間というポジションに居る風であるヴェルデはフラン(コロネロ)と共に頷いた。
そこで留めをさすのが、コロネロの中にいるフランである。


「このゲイ集団。キモいから黙っとけ」


すみません、と風の心から溢れた謝罪がヴェルデからこぼれ落ちた。

[*前へ][次へ#]

4/14ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!