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日常編?
ゴタゴタ、激突
「カオスショット!」
「SHOT!」

煌めく黄色と空色の閃光が、銃口から飛び出す。
そんな中、綱吉はリボーン達に囲まれるように組まれた円陣の中央に座りこんでいた。

 ―――ちょっと待って。コレ、超不味いって。
‐ヤバいよな。何が何でも死守しなきゃダメだろ…‐

「爆炎拳!」
「エレクトリッコ・サンダー!」

赤き焔と、緑の雷電が辺りを駆け抜ける。
挙って襲ってきた生徒達が、ばぁんと講堂内でバラバラと弾け飛んだ。しかし、他の生徒達は波のように押し寄せてきた。

「ヤバい! マーモンにチョコレート返さなきゃっ! マーモンのクラスが変わっちゃうよぉっ!」
「だったら、さっさとそれ渡しに行け! 蹲ってる方が邪魔だ!」

リボーンに怒鳴られ、そうだよね、と慌てて手編みの手袋を嵌めた。懐にチョコレートをしまってそのグローブに炎を灯した。

「マーモンの所に行ってくる! ここは任せた!」
「ツナ! オレ様も連れてってくれ!」
「っざっけんな、残れ! コラ!」

助けを求めたスカルをコロネロは踏みつけてとどまらせた。「ぎゃー!」とスカルの凄惨な悲鳴が喧騒の中から聞こえて来た。

「マーモンにチョコレート返して来い! ここは大丈夫だから、安心しろ! コラ!」
「ちょっと! オレだって気になってることが!」
「黙ってろ、パシリ!」

しまいにはリボーンに蹴りを食らわされて、人混みに紛れてしまった。

「マーモンに返したら戻ってくるから!」
「そんな頃にはもう全部終わってるぜ、コラ!」
「だったら私を連れて行け。研究の途中だ、下らん!」
「やる気満々ではないですか。大丈夫です…よっ!」

ヴェルデは身の周りにバリバリと電気を纏う。その間に風がヴェルデに襲いかかろうとしている連中を蹴り飛ばした。何の合図もなしに辺りへ放電したが、風は持ち前の運動神経で空中に飛び上がって回避すると、周囲に居た生徒達へ雷撃が放たれた。
3分も経たないうちに、生徒の半分が床面に伏せっていた。

‐やっぱり凄いな、リボーン達は…‐
「そうだな…」

口元に笑みを浮かべて、無駄に高い天井の側にある窓を見やった。

「行ってく…―――」

すると、自分の周りを取り囲うように黒い傘が浮いてきた。

「?」
「気をつけろ! レヴィ・アタンのパラボラだ! 動くな!」
‐ぱらぼら?‐

スカルの忠告に、反応したかのように黒い傘がこちらにがばっと開いた。こちらを向いた先端から、ばりっと電気が爆ぜる。
すると、下方からナイフが飛んで来て、胸に着けていたおしゃぶり型のピンを弾き飛ばした。
その傘から放たれた電気は電撃へと変わり、目の前に居る綱吉ではなく弾き飛ばされたピンに収束した。鼓膜が破れんばかりの爆音が上空で鳴って、ぷすぷすと焦げた物体が落下してきた。
半分以上片付けられた講堂内で、スカルが「おっし!」とガッツポーズを取った。

「すまない! 行って来る!」
「待ちやがれぇええ!」

そんな大爆音が耳を掠め、視界に白銀の髪が映った。

「チョコレート貰ったぁああ!」

生まれて初めて女子からチョコレートを貰った歓喜の雄叫びを思わせるような台詞だが、目の前に飛びかかって来る剣士の姿は全く相応しくなかった。
綱吉は横凪ぎに振ってきた剣を躱すと、彼は壁に一旦着地してから白銀の髪を靡かせて再び跳躍して来た。

「くっ…!」

綱吉は目の前の男に向き直って振り被って来た刀を両の手で挟む。それを捻じって引き寄せると、一回転して彼の頭へと踵を落とした。

「ぐぉおお!」

綱吉は落下していく青年を尻目に、窓を突き破って講堂から飛び出した。
真っ直ぐ向かうはマーモンの自室。情報屋バイパーの隠れ家として扱っている、その場所へ。


○○○


綱吉はマーモンが人を安易に近づけないように張り巡らしたトラップを潜り抜けると、数室ある中、彼女の部屋のドアを叩いた。

「マーモン、居る? あのさ、チョコレートの話なんだけど…」

しかし返事は一向にない。

「居ないのかな…?」
‐でも、トラップを発動させたって事は、マーモンが居るからだろ?‐
「そうだよね…」

よし、と綱吉はドアノブを捻った。すると、かちゃりと容易く回転した。鍵が引っ掛かった様子はない。

「あれ?」
‐ん…?‐

そのまま、マーモンの名前を呼びながら部屋の中に入っていく。
太陽の光が入って、室内は明るい。
しかし、目的であるマーモンは見当たらなかった。テーブルの上に転がっている携帯電話の電池パケットを見て、目をパチクリさせた。
携帯電話は持っていったようだが、何故か電池パケットが一つだけが転がっている。

「…お風呂に入ってる、とかそう言うのはないよね…この様子から見て」
‐だけど、携帯電話のパケット抜いて何やってるんだ? 2台共無いし…‐
「でも、1台だけはちゃんと持って行ってるんだよね」

ここならチョコレートを狙う人は来ないだろうと綱吉は携帯電話でマーモンへと繋げた。しかし、ぷるるる、という電子音がずっと続くだけで、最後には電源が入っていないか電波の届かない所に、という馴染み深いメッセージが携帯会社から通達された。

「どうしよう…マーモンに返さなきゃならないのにっ!」
‐みんなに相談しよう。多分、一番手薄なのはスカルのはずだ‐

姿の見当たらないマーモンの姿を思い浮かべる。
アンティークの時計は10時に針を指していた。タイムリミットまで残り5時間。綱吉はただ焦燥を募らせるしかなかった。


〇〇〇


綱吉が消え去って数秒後、Gが大声で待ったをかけ始めた。しかし、暴動と化しているこの状態ではマイクでの呼びかけは喧騒に掻き消されて無意味だった。
リボーンとコロネロで退路を作り上げると、講堂の扉を突き破って逃走。その後ろでヴェルデが一本道である廊下に電気の壁を張り巡らせていた。ヴェルデの珍しい配慮で人間一人通れる穴から壁の向こうへと抜ける。

「やっぱり! 特待は教室待機だったのかよ! コラ!」
「デイモンの野郎、後でぶちのめす…!」
「いっその事、あの秘密公言してしまえば良いのではないですか…十分だと思います」
「それ超賛成! あとで職員室乗っ取りに行こう!!」
「面倒だから私は行かんぞ」
「テメェは研究室に籠ってろ」

ヴェルデを除き、一様にデイモンへと報復の為に執念を燃やし始めた矢先、リボーンの携帯が着信を受けたとバイブレーションで告げる。
背面ディスプレイには綱吉の名前が綴られていた。

「どうした、ツナ」

《どうしよう! マーモンが見つからない!》

「何だと?」

小声でそう連絡する綱吉は更に続ける。

《花園とか、屋上とか! 心当たりのある所巡ったんだけど、何処にも居なくって! それでちょっと…えっと…―――》

と、綱吉は突然言葉を切った。
するとリボーンの耳に別の声が飛び込んできた。

=お前! それマーモンが持ってたチョコレートじゃん!=

=何でお前持ってんだよ! マーモンからチョコレート奪ったのか?!=

《ち、ちがっ! マーモンが渡して来たのを返そうと―――》

=誰か信用するかっつーの!=

《ひぃっ!》

そんな悲鳴が聞こえて来て、次の瞬間には携帯電話から『ぱき』というプラスチックが砕ける様な音。それから、つー、つーっと電源通信が切れたと電子音が訴えて来た。

「ツナ! ツナ?! あんの馬鹿!」

ついつい携帯電話を床に叩きつけたい衝動にかられて思いとどまる。
どうしたんですか、と風の問いかけに苛々としながらポケットに携帯をしまった。

「何処に居るか分からねぇけど、双子の王子と遭遇中だ。マーモンから貰ったチョコレートを奪ったって勘違いされやがった!」
「それ不味いですね…」

風は眉間に皺を寄せて腕を組んだ。

「あの子達、『息が合ったら』厄介でしょう?」

「そうだ。しかも息がピッタリ合うのは大体『マーモン関連』だしな、コラ」

「しかもあのチビ共、このイベント始まる前にテレポーテーションされてんだよ、マーモンに!」

「余計、何処に居るか不明ですね…分かるとすれば、森の中ではないということぐらいです」

漠然過ぎー、とスカルは脱力する。

「しかも最後の方は破壊音が聞こえて来たな。携帯も破壊されただろう?」

「間違いなくな」
「あ、綱吉クンのお仲間サン」

リボーンが溜息を吐いた矢先、後ろからそんな声が聞こえてきて振り返る。
そこには、今朝教室に乗り込んできた少年の内、1人。白蘭が袋を持って駆け寄ってくる姿があった。

「ねーねー。チョコレート頂戴」
「誰がやるか」
「だよねー。じゃあさ、ポイント見せてよ。チョコレートの表面に書かれてるからさ。アルコバレーノはこれからお世話になるしね」
「見せるぐらいなら良いですよ」

風は懐からチョコレートを取り出すと、それを白蘭に渡した。

「それよりツナとマーモンの捜索…―――とデイモンに殴り込みが優先だ」
「マーモンならば2つ心当たりがある。当たって来よう」
「珍しいな」

そう褒めてやると、ヴェルデは淡々と答える。

「電子の動きが激しくてな。それに貴様等から炎を提供させる突破口になれば良いと思っただけだ」

それだけ言うと、ヴェルデは傍にあった窓から「よっこらしょ」と言いながら外へと出て行った。

「考えておけ、リボーン。貴様の死ぬ気の炎にも『特性』があるかもしれん」
「特性?」
「気になるなら提供しろ」
「断る」

だろうな、とヴェルデは笑って去っていった。寧ろ、逃げるようにという言葉がしっくり来る。
電子がどうとか言っていた事に何か関係があるのだろう。
風からチョコレートを受け取った白蘭はありがとうと笑って箱を開けると、中を引っ張り出した。
それには50ptと記載されている。

「へー。他の人は?」

チョコレートをしまいながら尋ねてくる白蘭に、ほらよ、とリボーンは放り投げた。

「因みに、デイモン先生なら職員室で監視してるよ。最新の防犯プログラムを手に入れてはしゃいでるみたい」
「なぁーんで、そんな事知ってるんだよ、転入生!」

そう吠えたスカルに白蘭は笑みを浮かべた。

「アルコバレーノクラスから教室に戻される時に聞いたんだ。
 導入するかはテストも兼ねてやるんだって。なんでも、アルコバレーノには天才ハッカーが居るとか」

いやぁ、と頭を掻くスカルを無視して白蘭は凄いよねぇと笑う。

「そんなハッカーにも対応出来るように、最新プログラム導入したから、もう大丈夫だって言ってたけどね」

リボーンのは30pt。ごつい指輪をはめている手で一旦全部取り出すと、そのチョコレートを収めた箱をリボーンは受け取った。

「デイモン落としてやる…!」
「お前、朝、そんな指輪付けてたか?」
「ううん。今朝みたいに暴走されると困るから、嵌めとけだって。GPS搭載してるんだって」

面倒臭いよね、と無邪気な笑みを浮かべた白蘭からは、心にもないようなことを言っているようにしか見えなかった。



『ゴタゴタ、激突』END

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