日常編?
★
〇〇〇
「集結してきたな。アルコバレーノ生き残り…」
「これも全部、スペードの所為だよ。あとでちゃんとジョットに報告しておくからね。最新プログラム『試す為だけに』アルコバレーノ特待生を講堂呼び出したって」
「何でもチクル人間は嫌われますよ」
「君に嫌われるなんてこれほど嬉しいことはないね。手放しで喜ぶよ」
ウィルスではプログラムを完全に破壊することはできず、生き残った部分を盾にスカルから回線を奪回し直した。
しかし、監視カメラの画面は暗く、アラウディのノートパソコンはダメになったという。データはいつも機器に保存しているから大丈夫だと少しお怒りの様子が負け惜しみに聞こえた。
すると、玄関側の廊下からバタバタと駆け足が聞こえてくる。ききーっとゴムが廊下でブレーキ音を立てた。
「また誰か来ましたねぇ」
『ろ、六道骸?! 何で?! 風と一緒にリボーン達呼びに―――』
『あー。ナッポー2世ー』
廊下の外から放たれる怒気にデイモンがくすりと笑う。
お前が笑うか、と突っ込んでやろうかと思ったが、次のフラン達の会話でそんな気も失せることになる。
『黙りなさい…こわっぱが…』
『先輩、助けてくださーい』
『自分で後始末つけろ、コラ』
『えー。だって、パイン教師張りに相手面倒臭い…―――あ、因みに1世はそのパイン教師ですよー。聞こえてますかー? パイン1世ー?』
「あのクソガキの息の根止めてきます」
がたんと監視カメラ台を叩き付けるように、立ち上がった。
『どうやら巡りたいようですね…』
ピロリロリー♪ ピロリロリー♪
『メール来ましたぁ。タイムですー』
『そんなことは僕に関係ありません。あの中国服の男が居ないならば君で良いですよ?』
『ミーは身代わりですかー? 益々ナッポー1世そっくりですよー? 瓜二つ…ゲロッ』
『フランく…―――!』
騒がしかった廊下がしばしの沈黙に包まれる。
「六道が殺ったみたいですねぇ。本当に良い子です」
「テメェが言うと、全くそう聞こえね―――」
どかぁん。
突如、壁から鼓膜を突き破らんばかりの巨大な爆音が聞こえてきた。メキメキと建物が悲鳴を上げる。
ここは、外から狙撃されないように職員室は壁に囲まれている。
「………おーい。嫌な予感しかしないぞ、デイモン」
「壁が破られるなら、わざわざ報告しなくても良いね」
「さて。逃げますか…」
建物を揺らし、尚もどかんどかんと壁から聞こえてくる爆音。
その追い討ちを掛けるかのように。
がしゃんっ。
すると、今度は天井から排気口の網が外れる音がした。
そして更に、外からこんな綱吉の声が聞こえてきた。
『コロネロ、消えた?!』
その声を聞き付けたかのように、穴からひょっこりとコロネロが顔を出した。
にやっと笑ってから顔を引っ込めると、職員室内部へ身体を滑り込ませた。
「さぁ! ショータイムだぜ、コラ!」
職員室に降り立ったコロネロの後押しをするかの如く、亀裂の入り始めていた壁は破片を散らし、崩れ落ちた。砂煙の中、赤いエネルギー波が散る。壁に人二人は通れそうな大穴からアルコバレーノ生き残り組―――リボーン、スカル、風が現れた。
「先生方、ご無沙汰♪」
リボーンはそうお茶目に言って手を振った。
「G先生。職員室の鍵は何処にあるんすか?」
「教える訳ないだろ…―――って…」
振り向けば山本が「仕方ないか」と肩に担いでいた竹刀を振って刀へと変貌させた。
「デイモン。そろそろ腹を括る時間が来たんじゃねぇか…」
すぱぁあん、と職員室のドアを切り捨てた。やることが朝利雨月そっくりだ。
「ドア開けたぜー」と職員室の外にいる生徒達に声をかけると、山本を押し退けてマーモンが入ってきた。
「やぁ、デイモン。覚悟は出来てるよね…?」
「おや…君には、感謝の念は抱かれても恨まれる覚えはないのですがねぇ…」
「ジョット同様に要らない気遣いが君に有ったからださ。多いに感謝してるよ」
少々引きつった笑みを浮かべているデイモンにマーモンは逆にけたりと笑った。
すると、リボーンはまぁまぁとこの場で殺気立つ生徒達を宥めた。
「今日のイベントは、ちょっとわけ有って先生方も無駄にヤル気満々なんだよ。
少しだけ多目に見てやってくれねぇか?」
必要ないよ、と笑うマーモンに、リボーンはまた爽やかに笑う。
「仕方ねぇなぁ。じゃあ、オレの話をちょっとだけ聞いてくんねぇか? 本来なら真冬にやるイベントをどうして、こんな常夏にやったのか。
殴るのはそれからでも良いだろう?」
リボーンは教師達を見回してから己のチョコレートを見せびらかす。
「そもそもの始まりは、ジャッポーネのバレンタインデーの習慣から始まったんだ」
リボーンは紡ぐ。
暖かく。
それに、Gは抉られた。
いつもの事だいつもの事だと決め付けて、幼なじみの考えを突っぱねてしまった。
そこから、今日のイベントは始まったと言っても過言ではなかったのだから。
〇〇〇
ジョットは綱吉のバレンタインデーの話を聞いてから早速それに取りかかったらしい。翌日には生徒分とそれの予備、更に日頃世話になっている同僚達にイベントに合わせて手作りのチョコレートを渡そうと思い立った。
それで、そのイベントまでの4日間は夜の警備を自分が担当すると言って夜中に家庭科室を乗っ取る事に成功した。ビアンキから教わったレシピを見ながらチョコレートを作っていたのだが―――ものぐさな彼が4日連続で何をするのか怪しんだGが乗り込んで来た。
勿論、ビアンキが作る料理はポイズンクッキングだ。
そして料理の知識などないジョットはレシピに書かれていた通りの材料でそれを忠実に作っていた。
毒料理を制作しているのを発見され、あまつジョットはこっそり渡そうと考えていた為誤魔化す事に専念した。
その夜はこっ酷くGに叱られたという。
当然、警備を怠って怪しげな料理を作っている。しかも誤魔化そうとする態度から指定した日の警備から外されてしまった。
家庭科室か使えなくなったが、ジョットが簡単にめげる筈もなく、「ならば誰にも見つからない所で作れば良い!」という発想から今度は夜中に誰にも見つからない所―――リボーンも知っている、泉の前でガスコンロを使用しながら作ったという。しかし、それも上手くは出来ず。
それが祟った。
イタリアの気候は涼しい方だ。夜になれば少し肌寒い。慣れない料理に悪戦苦闘もあってとうとう風邪をひいた。そうして3日前からイン・ザ・ベッド。
復帰できそうにないので、とうとう仲間達に打ち開けた。
こっそり手作りチョコレートを渡そうと考えたのだと。それにジャッポーネのバレンタインデーの話もきっちり織り交ぜて。
○○○
「まぁ、正直風邪こじらせてくれて良かったわ。G達集団食中毒だぞ」
うっ、とGは顔を青くさせて、デイモンはそろりと視線を逸らし、アラウディはぷいっと顔を逸らしてしまった。
だから、ここ数日Gの様子がおかしかったのだ。何も知らなかったとはいえジョットの好意を無下にした挙げ句、風邪をひかせてしまった。恐らく、覚える必要の罪悪感からだったのだろう。
罪作りとはこの事だろうか。
「そうだなー。ビアンキからレシピ教わるって、ジョット先生何考えてんの」
「知るか。アホなんだ、脳内構造が」
義父であるが、実に不思議な思考回路をしている我が父親にはついて行けないとつくづく思ったリボーンだった。それから自ら逸らした話を軌道修正し、沈黙している教師達―――いうなれば、父のような存在の人間達へ笑ってやる。
「諦めたジョットは、仕方なぁく『万単位』もする市販のチョコレート買ったんだ。
日頃世話になってるGにアラウディ、デイモンにナックル、雨月、ランポウに。後はこの学園で唯一女子生徒のマーモンと綱吉、秀忠で合計9個。本当はセコーンドにも買いたかったらしいが金が足りなかったそうだ。
まぁ、そう言う訳で。ジョットが『日頃の感謝を込めて』チョコレートをプレゼントされて、お前達が引っ込んでるわけねぇえよなぁ?」
Gとアラウディは押し黙ってこちらを睨みつける。しかし、デイモンだけはクスクス笑った。
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