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日常編?
アルコバレーノ特待生
綱吉が襲われているような状況にリボーンの苛立ちが募った。それは周りの仲間達にも伝染したようで、妙な殺気が漂い始めていた。
綱吉は取り敢えず、少年に落ち着くよう促して漸く床から起き上がる。

「え、えっと…君は…?」
「え? 僕の事覚えてないの?」
「う…うん…―――」

ごめん、と綱吉は小さく謝った。それに対し、少年は残念そうに肩を落としてから「仕方ないか〜」と苦笑した。

「綱吉君はすっごく小さい頃だったもんね? でも、僕は覚えてるよ」

そう言って、顔を綱吉に近づける。
驚いて身を引くが、抱きつかれたままでそんなに離れられないでいた。

「君が、僕を助けてくれたから…」

そう言っておきながら、少年は「いや」、と否定して無邪気に微笑んだ。


「君の『中の彼』に助けて貰ったからさ」
‐?!‐


一瞬で驚愕に追いやられて頭が真っ白になる。
それはリボーン達も同じだった。その事実は綱吉が公言したくないと言って、仲間達と教師達の間で秘密としているからだ。
真実を突かれた綱吉は、誰よりも早く我に帰り、え、と呟いた。

「ヒデの事知ってるの?!」
「ヒデ? あ、そう言う名前なんだ? 知ってるよ〜♪」

まるで全身の『白』を具現するように、嬉しそうな笑みで少年は笑った。

「僕は白蘭…」

そう言って瞳を細めて、愛でるように綱吉の頬を撫でた。


「君達は『命の恩人』だからね」


白蘭はその後も綱吉から離れることはなく、リボーン達を見上げた。

「で、君達は誰?」
「仲間ですよ」

即座に答えた風に、白蘭は笑った。

「友人って言わないんだ?」
「えぇ。友人も親友でも表現は足りない立ち位置ですから」
「自信満々だね〜」

白蘭はそう返した風に笑みを返して、この後どうしようかと困り、綱吉は顔を上げる。

「取り敢えず、これで晴れてアルコバレーノの特待生だし、このまま授業サボろっか…――――」
「君達はまだですよ」

するとリボーン達の背後を取るように、デイモンが紙袋を下げて立っていた。
彼が持っているものは何から何まで怪しく思えてきて仕方ない。寧ろ、紙袋1つ持っているだけでそう思わせられる彼の怪しさは見事だった。
デイモンは白蘭を見下ろして、う〜ん、と笑みを張り付けている。

「今にも取って食べそうですね、白蘭?」
「食べるつもりだったけど。それより、何で…―――っと!」

リボーンが白蘭の顎目掛けて蹴り上げた足は見事にかわされて、白蘭はくるりとひっくり返って、天井に足をめり込ませた。天井に立っているかのような様だ。

「わわっ」
「大丈夫でしたか?」

風に抱き上げられて、難を逃れる。
すると天井に足を突っ込んだままの白蘭は、ひっどーい、とお茶らけた調子で笑った。

「かわすの遅かったら舌噛んでたじゃん」
「噛んでろ。寧ろ勢いで噛み千切って死ね」
「ひっどーい! これが綱吉クンのお兄ちゃん?! グロテスクー!」

白蘭は「有り得ない!」と喚き立てた。
漸く教室の入り口が開いて、コロネロとスカルが教室に入りこんできた。

「おい! リボーンがツナの兄貴だとか、何でそんなこと知ってんだ、コラ! …って、何すんだヴェルデ、コラ!」

ヴェルデは邪魔だと言って教室内部に入りこむと、一番近い机に座りこんで突っ伏した。

「沢田の情報漏洩なんてどうでも良い…私の休息場が最優先事項だ…」
「この野郎…」
「そう言えば風が今まで肩を貸してたんじゃ…」
「あぁ。綱吉君を奪回チャンスだと思って放り投げてしまいました」

そんな事を今更思い出したように言った風に秀忠はナイスだ、と笑ったが、ヴェルデがちょっと可哀想だと思う綱吉だった。

ヴェルデは突っ伏したまま白蘭を『白い少年』と呼ぶ。僕の事かと首を傾げる白蘭に、その通りだと答える。

「サボるなら生物教室の分室、茶道部の押し入れ下の床下、コンピューター室の天井裏、保健医常に留守の保健室、図書室の特別ルームの右奥から3番目、そこからじゅう―――」
「それ以上はお黙りなさい、ヴェルデ。研究資金を減額しますよ」

そう咎めるデイモンは苛立たしそうに眉を寄せていた。

「煩いのを放り出す手っ取り早い手段だ。サボると宣言していたからな…」
「碌に学校へ来ない筈に君が何故そんなに教師の目の届かない所を知っているか不思議で仕方ありません」
「何を言う。どれも貴様の『お墨付き』隠れ場所だろう。忘れたか?」

いいえ、とデイモンは笑顔を少し引き攣らせた。
さぁいけ、と手をひらひらさせるヴェルデに、白蘭はありがとうと答えるが、全く行く素振りは見せなかった。かわりに、デイモンへと指差した。

「ダブル分け目のパイナップル先生。どうして僕がアルコバレーノの特待生じゃないの?」
「僕は気に入らない生徒を特待生にしないんですよ? 知ってましたか?」

満面の笑みに青筋を浮かべたデイモンに、白蘭は天井に座りこむようにぶーぶーと唇を尖らせた。

「じゃあ、ジョット先生に言いつけてやるーぅ。理事長にもいいつけてやるーぅ。あ、同一人物だっけ」

再び、リボーン達しか知りえない事実を白蘭はあっさりと暴露した。

それは、生徒の間でも知られていないことのはずだ。
何者だ、と改めて白蘭に警戒を見せ始めたリボーン達に、白蘭は尚もけらけらと笑って己の頬をくるくるとなぞった。

「ほらデイモン先生。パイナップルみたいな『外皮』がここに浮かんでるよ。引っ込めたら?」

青筋を外皮と巧みな表現をして、白蘭はまた笑った。

「それよりさぁ。ここのルールって特待生の人間からカード奪い取れば良いんでしょ? 先生がそうすれば良いって言ったじゃん。何で駄目なの? ちゃんと正式にボンゴレクラスの一般生徒には昨日の内にしたって言ってたじゃない、デイモン先生?」
「それは、僕も同感です」

すると、今まで山の前で読書をしていた―――これまたパイナップルヘアーの少年がこちらにやって来た。幸いなのは、デイモンと違って分け目が稲妻形の一つだけと言う事。それに緋色と藍という対照的な色のオッドアイを持っていた。緋色の瞳の方は奇妙な事に瞳孔の部分に『六』と文字が刻まれていた。

「僕も貴方の指示で来た。そうすればいいと言っていたからです」

懐から、大量のおしゃぶりマークのついたオレンジカードを自分達の前にぶちまけた。
更に、白蘭もそうそう、と頷きながら服を揺らすと、バラバラと太陽の光を反射させながらカードが降って来た。そして、その人間達を蔑むかのように、その上に白蘭は着地した。
その量、リボーンが見た感じでは教室内部の10分の9は奪い取っただろう量だ。残るはリボーン達のような生き残りのようにしっかりとした実力持ちの人間達の分だと容易に予想できた。

「どういうことでしょう。それとも、僕はボンゴレクラスに居ても良いと言うことですか?」

丁寧に問い掛けるオッドアイの少年に、ヌフフとデイモンは小さく笑ってから、謝罪した。

「すみませんね。『僕が推した』という理由では迎え入れるのは躊躇われるそうです。同僚達に挙って言われました」
「日頃の行いが祟った訳ですね、デイモン先生」

そう答えた風に、全くです、と笑った。

「と言う事で、君達には本日の『行事』で彼等に見極めて貰うことになりました。大丈夫ですよ、君達なら俄然やる気が沸くでしょうからね」

そう怪しく笑ってから、その山積みの生徒達を見やる。

「仕方ないので、それは窓から放り出しておきなさい」
「せ、先生! ここ2階です!」

綱吉に続いて、スカルが喚く。

「しかも、職員室の真下じゃんか! やったらヤバいだろ!」
「生徒が降ってくれば、流石に教師達も驚いてやってくるでしょう? それに、この事実が僕から伝わったとすれば苛立っていると伝わります」
「バーカ。ジョットにしょっぴかれるぞ」

そう言って止めたのはリボーンだった。

「ったく、爺は頭が堅くて仕方ねぇ」
「流石はクソガキすね。君の臆する事のない口応えは実に参考になりますよ」
「テメェの非常識さに指摘してやってんだ。寧ろお前のメンツに響かねぇ様にオレが得するように手配してやんよ」

リボーンはそう言って、山の中に紛れているデスクを一つ引っ掴んだ。そして、それをぽいっと『窓の外に向かって放り投げた』。

「何やってんのリボーン?!」
‐何やってんだリボーン?!‐

綱吉と秀忠は同時に声を張り上げた。それに、スカルも続けて騒いでいる。
派手な破壊音を立ててデスクが一つ、教室の外に落下して行った。下からがしゃあんと音がする。

「あん? 机ぶっ壊して新しい奴に取り変えてもらう」
「いや! 普通に考えて、やり過ぎだって!」
「気にすんな。新品の机くるなら全然マシだ。ヴェルデ見てみろ」

そう言われた仲間達は一様に突っ伏しているヴェルデを見やる。確かに身長が高い彼には狭苦しそうに見えた。尚も、リボーンは窓から机を一つずつ放り投げていく。

「だ、だからってそれは…」
「お前も少しはこれぐらい考えろよ、デイモン。
 思考がナチュラルにグロテスクだから印象悪くなるんだっつーの」
「リボーンに言われたくありませんよ。全く、誰に似たんだか…」

尚も放り投げ続けるリボーンは、一度手を止めてしばし沈黙した。

「セコーンドの手際の良さや思考回路が2、Gの真面目さと常識的思考が3、デイモンのグロテスク且つ利己的な所が1,5、ランポウの気分屋が3,5ぐらいじゃねぇか?」
「ランポウが一番なんですか」
「当たり前だ。一番歳近ぇし、メルヘン頭のジョットからは貰っときたくねぇ。雨月は想像つかねぇし…―――ナックルは『無理』だ」
「リボーン…煩いぞ…」

この異質な会話を遮り、そうぼやいたヴェルデに、だったら、とリボーンは指示を出す。

「テメェも手伝えよ。机全部放り投げんの」
「7,4秒で済ませてやる。そこをどけ…」

そう言ってヴェルデはむくりと起き上がると、手に緑色の雷電を集束させた。すると、机がガタガタと揺れ始める。リボーンが数歩離れてから人間だけを弾くように机同士が集まり始めた。それからピッタリとくっ付きあって机の塊が出来あがると、それが宙に浮かんで、がしゃぁんと教室の窓を完璧に破壊してから飛び出した。

「派手に、やりましたね…」
「おう。デイモン、テメェの受け売りだ」

がらんごろん、がしゃん、ばきんと机がそれぞれ落下した。


「どうしても通したい事情は『派手に事を起こせ』ってな」


リボーンはデイモンにそう嘲笑した。
そして、リボーンは白蘭を担ぎ上げた。

「よし。これも放り投げるか」
「わわっ! 暴力反対!」
「暴力でカード奪取した奴が言う奴の台詞じゃねぇよ、バーカ」

リボーンの肩の上でバタバタ暴れる白蘭を救出するべく、綱吉は慌ててリボーンを止めにかかるのだった。



『アルコバレーノ特待生』END

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