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日常編?
並行する舞台裏
「…マジか…―――」
「えぇ。これが『事実』です」

ヌフフと楽しそうに笑ってGの呟きにデイモンは答えた。

デイモンが持ってきたのはプログラムだけではなく、防衛用に数個特殊な機器も提供していた。
それが、今回職員室入口に張り巡らせた『バリアー』。そして、今回音声までキャッチ出来る監視カメラ数台だ。
まるでサイエンスフィクションのような機能を持っているそれをデイモンに勧められた時は、遊んでいるのだろうと思った。しかし、それ真実だったと彼の目の前で証明されたのだ。

アルコバレーノクラスでもトップクラスの強さを誇っている彼のエネルギー波の銃撃は、『山一つ吹き飛ばせる』。それを抑えに抑えて、ドアぶち破る程度に抑えたはずだが、威力は間違いなくライフルを構えたその一直線上を100メートルは吹き飛ばせる程だった筈だ。

それが、左右に分断した。

唯一誤算だったとすれば、彼の力が強すぎてバリアーは相殺できずに左右へ弾き飛ばされた事だけだろう。

確かに、モニター越しではあるが目の前でバリアーは張られた。
ドアは破られなかった。
それが、『証明された』。

「おい、デイモン…―――本当にこんなもん何処で入手した?」
「今はまだ教えませんよ。僕が提供した物を全て『起動』して、貴方達が導入しても良いと認めたならば教えますよ…―――おや、アラウディの方にも動きがありましたか?」

まぁ、と彼は簡単に答えてキーボードを叩き始めた。アラウディが向き合っている画面は瞬く間にローマ字と数字が一気に画面を染め上げて行く。
あのアラウディが、楽しそうに口元を緩めた。
相手は…―――。

「スカルか?」
「間違いなくね」

カタカタとキーボードを叩いて数十秒。アラウディの指は動きを止めた。

「流石、だね。電話回線狙ってきた」
「ソケット引き抜くか?」
「大丈夫だ」

アラウディは楽しそうに頬杖を突いて、パソコンの傍に置いてあるチョコレートの箱を見下ろした。


「もう『塞いだ』…―――」


そして、アラウディはエンターボタンを弾く。

「この後、彼どうするかな…」

それは楽しそうに、にやりと笑っている。攻撃か何かしたのだろうか。
詳しく分からないGにはアラウディが楽しそうにしていることだけがスカルのハッキングに対して勝っていることを伝えてきた。
更に余裕が有るらしく、監視カメラを眺めているデイモンへと声をかけた。

「本当に、このプログラム何処から入手してきたの」
「気になりますよねぇ、やっぱり。これさえあれば貴方など用なしですからね」
「そうなった場合は自由気ままに旅行へ行きたい所だけど、君みたいに存在と髪型のふざけた奴が居る限りは無理だ」
「どういう意味でしょうかねぇ? アラウディ?」
「流石だね、彼……このスピードで対処したなら…コンセントか、本体から線を引き抜いたかな。
 これなら、暫くパソコンは使えないね…」

デイモンを上回る自由人であるアラウディは、また画面を見ながら笑った。

「防戦は出来たよ。まだ気は抜けないけど」
「まだ…他に手段あるのか?」
「ある。ネットワーク経由の方法がね」

すると、外から絶え間なく続いていた爆音が止んだ。
代わりに、シンプルな携帯の着信音が壁に隔たれて聞こえてくる。しばらく黙っていると、生き生きした声で「何処にあるんだ?!」と喋っている。

「…―――忘れてた。ブレーカー落とせされたらこっちも大変だ」
「ブレーカー落として何になる? 直ぐに自家発電に切り替わるだろ?」
「電源が一度落ちれば、コンピューターは起動させなきゃならない。5分かからないとはいえ、プログラムを再び起動させて全体に再び配備するには時間がかかるんだ―――その間だけでも、スカルは攻め落とせるよ」

そして、アラウディはにやりと笑った。


「彼は素晴らしいからね」


それからアラウディはデスクの下にしまっていた四角い鞄を取り出した。じーっとチャックを全開にした中には、真っ黒いノートパソコンが収まっていた。

「何すんだ?」
「これから充電。起動の間は『こっち』で防戦する」

そして、そのパソコンをわざわざ『ジョットのデスクに持って行く』と、アダプターを繋げてコンセントに差し込んだ。チョコレートを忘れずに持って、彼の椅子へ座り込んだ。

「でも、『そうされない為に』教師を配置しただろ」
「何があるか分からないでしょ。この学園は『そんな学園』だ」

アラウディは、放つ。

「ここは、変な事件が普通に起きる所。何が起きても不思議じゃない。ジョットもそう言ってるでしょ―――子供はやらかす事が『無限大にある』って」
「ガキでも出来る範囲は狭いだろ」
「ここには子供が『何百いると思ってるの』。暴動起こすのは数名だとして…―――ねぇ、デイモン。切れないでよ」
「切れませんよ、当たり前でしょう…!」

わなわなと身体を震わせながら、デイモンが画面を睨みつけている。
Gも画面を見やるが、至っていつも通りの風景が映し出されている。しかし、それも真横から聞こえてくる声に掻き消される。

『コレ言ったの秘密ですよ? 言ったら『パイナップル☆マジック』で社会科の成績1にされちゃいますからー』
「…どんなマジックなんだろうな」

流石に、そんな事をさせるほど教師は堕落していない。デイモンのテストや結果にはチェックにチェックを重ねて、公平な判断をしている―――Gが。
更にデイモンに対する悪口は積まれて行き(殆ど彼の自業自得だが)、どんどん怒気が強まって来た。
カメラから音声は絶つことが出来るが、何しろ職員室前で堂々と言われている。こちらは何人居るか悟らせない為に無言で対処していたのだが、多分、これによってデイモンが居ることはバレただろう。

『あの野郎! 講堂にアルコバレーノの特待生まで召集かけやがったんだ、コラ!』
『えー? この暴力イベントって特待生は教室待機ですよね、普通』
『そうだ! 初めてのイベントだし、どんな事やるか分からねぇの良い事に呼び出しやがって! コラ!』
『流石スプラッタパインですね。甘い汁に浸かってそのまま一生缶の中に蹲ってれば良いのにー』

先程からフランの巧みな表現には恐れ入る。たった今の発言はパイナップルの輪切り缶詰が想像できた。寧ろ、ここに居るとわかりきった上で言っているようにしか思えない。

『そうだ。だったらミー達もナッポー先生を殴るお手伝いしますー』
「な…」
「だから言ったでしょ?」

コロネロが、外で協力の提案を受け入れた。
アラウディはくつくつと笑って、ドアの外に居るであろう生徒達へと目をやった。

「本当に『実力のある奴』は『誰でも敵だとは思わない』…―――寧ろ、それぞれの力を利用して活路を見出していく」

呟いて、アラウディは窓の外を見やる。

「…『山本武』も、当然ついて行くんだろうね…」
「山本、武? ――――…あぁ…」
『だったら、今までの会話バッチリ聞かれてるじゃねーか、コラ!』
『あぁ、そうですねー』

ぼーっと、中枢部の警備にあたっている仲間を思い出した。
楽しくなりそうだ、と笑うアラウディに、Gは頭をぽりぽりと掻いた。


「雨月、どうすんだろーな」


山本武を大層気に入っている彼。
彼が認めるほどの実力があるからこそジャッポーネからわざわざ迎え入た。

しかし彼は雨月のように闘いを好みはせず、普通にスポーツ好きで普通クラスに居続けている。
しかし、見ているのは実力は定かではない。

場合によれば、ここを動くことになりそうだとGは考えた。

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あきゅろす。
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