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日常編?

〇〇〇


コンピューター室の鍵を抉じ開けてヴェルデはドアを開く。
辺りを一瞥して、ぱたんと閉めた。

「此処じゃ無いか…」

ヴェルデはウィーと動く監視カメラに目をくれてやる。イベントの監視だということは以前から知っている。
ただ、本格的に学校行事に参加したのは今回が初めてだった。
常に、研究室に籠もっていたから。

「監視カメラ、か…」

もしかしたらマーモンの足取りがあるかもしれない。そう考えたヴェルデは電話をかけながら、そのカメラを見やる。何度かめのコールで対照と連絡が取れた。

「おいデイモン。マーモンを見ていないか」
『おや。マーモンをお探しなんですか?』

耳が捉える音。
やはり彼がモニター監視を行っているようだ。

「見ているか見ていないかを聞いている。答えろ」
『随分、必死になって探しているみた―――』

続きを聞かずして、目の前の監視カメラに向かって手に集束させた電気を放つ。
必要以上の電力が掛った監視カメラはバリバリと音を立てて容量オーバーした電気を空気通に放ってから、ばふんと爆発した。

「その通りだ、急いでいる。見ているならば何処に行ったか話せ。知らんならそれで構わん。余計なことを喋るようなら他の監視カメラも『今のように』しよう、『全てだ』」

デイモンの呆れたような溜息が聞こえて来て、見ていないですよ、と返って来た。
それに対し、ヴェルデは何も言わずに電源を切る。

「次は図書室か…」

町の方角にある丸い形をした大きな図書室。階ごとに置かれている分野の本が違っており、12階建て。因みに地下もある。
本の量が膨大な為、学校とは渡り廊下と繋がっているがこちらも本日のイベントでは立ち入り禁止。鍵をかけられて中には入れないようにしてあるし、窓も付いていない。
本を乱闘で傷つけられては困ると言う理由からだとヴェルデは認知していた。

それに、あそこには『隠し部屋』がある。

イベント時に出入り禁止。更に隠し部屋ならばマーモンの隠れ場所としては打ってつけのはずだ。

「必死か…―――」

そう呟きながら、ヴェルデは自らの調子を整える妨害電波を放つ携帯電話をポケットへしまった。
デイモンの放った言葉を思い出す。


「不愉快だ」


懐に収まっているチョコレートを取り出して、箱を開ける。ハート形のチョコレートの表面には『15pt』の文字が書かれている。それに噛みついた。
味はまぁまぁだった。

「沢田からも貰うか。協力してやったんだし、研究者には糖分が必須だ」

うむ、とヴェルデは良い考えだと自画自賛する。そうとなればマーモンを一刻も早く探し出してチョコレートを強奪しようと腹に決めた。

図書室は大きい建物の為、出入り口はその渡り廊下だけではなく、四か所出入り口がある。
その風貌からは図書館という言葉の方がピッタリくるのだが―――ヴェルデが所持している研究文庫は『それ以上』。だからこそ、彼は皆が図書館と呼ぶそれを図書室と呼んでいた。

「ここからなら、渡り廊下より南口の方が近いか…」

ヴェルデは今まで苛立ちを誤魔化すように、綱吉の笑みを脳内で過らせてから足早にその場を離れた。


○○○


山本はフランと共に校内に足を踏み込むと、遠くから強い『何か』を感じて先を歩いて行こうとするフランの肩を掴んだ。

「待った。何か、職員室方面から『何か』感じる」
「それはミーも分かって…―――」

すると爆音の後フランの真横を青いエネルギー体がすっ飛んで行った。風圧で風邪と洋服が激しく揺れる。そのまま廊下を駆けて、壁に大きな凹みを残して止まった。
その後、「なんだコラぁあ!」と大きな声がした。
壁を盾代わりに職員室方面を覗きこむ。

「あれ、コロネロ先輩か?」
「そうっぽいですねー。何かー、無茶苦茶怒ってません? 職員室前で」
「もしかして、フランも職員室に用があったのか?」

はいー、とフランは返事して、先にとことこ歩き始めた。
相変わらずの緊張感のなさに苦笑しながらその後を追う。あのまま先に進んでいればフランの身体が無事に済むことはないと彼が誰よりも分かっている筈なのだが、至って彼は平然としていた。

「相変わらずだな、お前!」
「そうでもないですよー。さっきのは、ちょーちょービックリしましたー」
「伝わってこねえって!」
「でしょうねー」

フランはいつもの無表情で認める。しかし、それよりも職員室に入れないという事実は彼なりに深刻な問題のようで、むぅーと腕を組んで首を傾げた。

「ちょっと、事情聞いてみましょうかー…ぁぁー」

再びエネルギー波が真横をすり抜けて、ぶわりと風圧で揺れた。しかも先程より威力が強く、びりびりと空気までも震撼させる。

「近寄れますかねー」
「行ってみなきゃ分かんねんじゃね?」
「それ、半分自殺行為ですよー」
「え? そうか? じゃあ、もう半分は?」
「もう半分ですかー? もう半分はー…」

答えを探すように視線を上にずらして言葉を詰まらせた。
そして、考えた結果はとてつもなく彼らしいものだった。

「もう半分、思いつきませんでしたー」


○○○


スカルは自室に着くなりパソコンに駆け寄って行くと電源を入れる。
学校の中枢から、本日も監視しているであろう監視カメラから彼を探す作戦に打って出たスカルだったが。

「何だこれ…」
「どうした?」

う〜ん、と唸りながら物凄いスピードでキーを叩いて行く。そのスピードは既に尋常ではなかった。いくらリボーンでもそれほど指は動かない。

「入れない」
「入れない…?」
「直接教師の所に入ろうと思ったんだけど、ハイスピードで処理されてる…―――仕方ないな…」

そう言って、スカルはその場から離れるとソケットを引っ張り出して備え付けの電話線へと連結させた。

「電話線から行ってみる」
「出来んのか」
「やってみる。初めてだけど」

そう言ってスカルは再び画面に食いつくと、パソコンと向き合った。
パソコンに強い訳ではないが、取り敢えず傍に椅子を引き寄せてリボーンは座った。
斜め後ろからスカルの姿を見つめる。綱吉捜索に尽力を尽くしてくれる所悪いがどうみてもネット廃人のように見えて仕方ないリボーンだった。

しかし暫らくし、スカルは「え」とスカルは目を見開いた。

「変だな…妙に対処が早い…」
「それじゃねぇのか? 白蘭が言ってた防犯プログラム」
「多分、な」

おかしいな、とまた画面に食いつく。
既に意味不明なローマ字で埋めつくされた画面は見ているだけで目が痛い。

「じゃあ、ネットから行くか…―――」
「まだ方法あんのか…」
「ん?」

スカルがキーボードを叩いているわけでもないのに、画面に文字が記入されていく。それは目まぐるしいスピードで段を降りて行った。
「やべっ!」と慌てたスカルは本体から直接、線を『引き抜いた』。
ぶつっと画面が真っ黒に染まって、機器達が動きを停止する。

「それやったら不味いんじゃねぇのか?」
「あーんと。その通りなんだけど…―――」

くるりと座っていた椅子を回して、珍しく苛立たしそうに表情を歪めた。

「直接攻撃された。物凄いスピードで」
「…よく分からねぇが…―――大丈夫なのか、それ…?」
「分かんない」
「分かんないって…」
「先に回線ジャックされた…今は電源入れたらこっちが『パンク』する…」

頭をかき回しながら「あーもう!」とスカルが騒ぐ。普段からの無造作ヘアーがくちゃぐちゃになる。

「デイモン潰すっ!」
「対処は直ぐに出来そうか」
「直ぐって何秒ぐらい!」
「そこまで鬼じゃねぇよ。1時間ぐらいだ」
「じゃあ無理だ」

あっそ、というとスカルは腕を組んでグルグルと椅子を回す。酔うんじゃないだろうかと思うぐらいグルグル回った所で、スカルはパソコンに向き合って止まった。

「あ。そうだ」
「あん?」

肘をついた組んだ手の上に顎を置く。そして電源の入れられない真っ黒なパソコンと向き合って、画面に自らの顔を映してからにやりと笑った。
リボーンは再びネット廃人に見えるスカルにどうしたのか尋ねると、彼はそのパソコンに向き合ったままこう言った。


「『オレ様の所』みたいにしてやれば良いんだ」


リボーンが「あぁ」と意味を理解するまでに、5秒掛った。

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あきゅろす。
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