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KOITANO!(久々→竹←タカ)

「竹谷君、もう少し首は真っ直ぐにしてくれるかな?」
「あ、すみません・・・!」
「ふふ、あとちょっとで終わるから頑張って!」
「はい、」

先程から目の前で灰色の髪を弄り続けるのは金髪の後輩。彼は軟らかに撫でつける手を止めずに笑った。そうしてされるがままの彼は少し申し訳なさそうにしながら首を真っ直ぐに戻す。

(・・・やはりコイツに聞いたのは間違いだったか)

俺は彼らの斜め後ろに陣取りながら不機嫌な顔を隠しもせずそれを見ていた。俺の愛しい人の髪を整えているのは只の後輩でも、髪結いでもない。恋敵なのである。
そもそもどうしてこのような状況になったか、それははっちゃんに理由があった。

昨日、俺の部屋にドタバタと走り込んできたはっちゃんは息を整えるのも忘れて口早に話した。その時の事を要約すると『女装の授業で追試を出されたが三郎も雷蔵も任務でいない。助けて欲しい』だそうだ。
俺は抱きついてきてくれたはっちゃんに動揺と興奮をしながら何とかして彼の力になりたいと思った。そこで俺はギリギリの理性をかき集めながら「先生は、重点的に、何処を直せと言った?」と聞けばはっちゃんは「髪と化粧と着物の柄」と答える。全部じゃないか!

そして対策を打つべく「化粧と着物の柄は俺がなんとかしてやれるが髪はどうしよう」とうんうん悩んでいたら突然、すみません久々知君居ますか?と戸が開き、金髪頭がひょっこりと顔を覗かせた。

ここで話をふったあの時の俺を殴り付けたい。

どうやら斎藤は俺に勉強を聞きに来たらしいが、髪の事に関して詳しいだろうとちょっと聞いてみたら案の定、食い付かないわけがなかった。持っていた忍たまの友を置いてきぼりにして目をキラキラさせながら「僕がやってあげるよ!」と両手を挙げたのである。

先に言っておくが俺ははっちゃんの助けになりたくて一番の方法を導き出したのがたまたまそれだっただけ。斎藤は利用したまでだ。決してチャンスを与えたわけではない。断じて、決して。違う。

確かに斎藤の髪結いの腕は素晴らしいと思う。現に今もはっちゃんの髪は別人の如くサラサラで流れるようだ。だが、

「あ、兵助君。悪いんだけどそろそろ外に出てもらえる?」
「・・・・・ああ、」

髪だけでなく、化粧も着付けも全て彼が担うことになってしまったのだ。完璧主義と言うのか。俺を外に出してはっちゃんと二人きり、だと。ああ腹が立つ!

そうは思っても俺は存外生真面目だから大人しく部屋から出た。一枚隔てた板が憎らしい。中からは微かに声が聞こえるが聞きたくも無かった。





+++

たまたま訪れたチャンスを、僕が逃すはずなんて無いじゃない。
しかもこれ、僕の得意分野だし。単純に力になれるんだけど、(久々知君にしたら大失敗だよねえ。珍し!)

そんなことを考えながらも、僕は少しウキウキしながら着物を手にする。化粧はさっき殆どやったのだ。

「はい、竹谷君。此処に腕通して。あ、そのままね。はい、帯締めるよ〜」

きゅっ

「うげっ、苦しっ!」
「我慢我慢!女の子は皆こういうの着てるんだから!」
「マジすか。俺、男で良かったなあ・・・窮屈なのは勘弁っすよ・・・」
「そう?」
「そもそも似合わないですし、向かないんですよこういうのは・・・「そんなことないよ」

僕は彼の着物を整えながらちらりと顔を見やる。そこには僕が結った髪と施した化粧で見違えた竹谷君が居た。

「・・・タカ丸さん?」

元々思っていたのだが竹谷君は手入れをちゃんとしないだけで本来の髪は綺麗なものなのである。そう、僕が少し手を加えただけで、まるで本物の女の子の様。

「竹谷君、可愛いじゃない」
「え、」

僕は最後にと残しておいた紅を小指に付けてスッと竹谷君の唇に色を差す。

「綺麗だよ。」

やわらかく微笑めば彼はみるみる頬を朱に染める。僕も何人と女の子を見てきたけど、こうもいつまで初々しい人には出会ったことがない。
そんな竹谷君は少しの間固まっていて、ハッと思い出したように口を動かした。

「あ、りがとう、ございます・・・!」








+++

「さあ、もう入っていいよ久々知君」

かけられた言葉を聞いて、俺は先程出てきた部屋の戸に手をかけた。内心、今すぐにでも駆け込みたい気分だったがそこは何とか抑え込む。好きな人に、カッコ悪い所は見せたくない。

カラリ、

「・・・!!!!!」
「どう?」

そこには紛れもない女の子が・・・いや、実際は女装したはっちゃんなのだが。正直俺は、ここまでを予想していなかったので見違えた彼の姿に眼に疑ってしまう。だってそれくらいに綺麗で可愛い。

「は、はっちゃん・・・」
「えと、兵助、」
「ななっ何!?」
「俺、女の子に見える、か?」

少し不安そうに上目遣いで見てきたはっちゃんに俺の心臓は爆発しかけた。俺は兎に角首を縦に振るので精一杯だったが、彼は俺を見て小さく安堵の息を吐く。

「良かったね、竹谷君!兵助君のお墨付きなら追試も楽々いけるはずだよ!」
「はいっ!俺、頑張ります!」

はっちゃんはにこにこと嬉しそうに斎藤と笑い合う。少々気に食わない気持ちもせるが、彼が素直に喜びをあらわしているならそれもまた有りかな、なんて思ってしまった。

「それじゃ、俺。先生の所行ってくるな!」
「あ、ああ、」
「行ってらっしゃい。」

そうこうしている間にはっちゃんは廊下に足を踏み出していた。そこでふと、自分がはっちゃんに声をかけそびれていることに気づいた。(俺、「可愛い」も「綺麗」も伝えてない!)
そんな俺を知ってか知らずか、斎藤がわざとらしげに首を傾げながら口を開く。

「いいの?久々知君。竹谷君行っちゃうよ?」
「っ!解ってる!」

癪な話ではあるが、まるで後押しされるように俺は勢いをつけ、慌ててはっちゃんの消えた廊下に飛び出した。そんな俺には、後ろで聞こえた声なぞ到底耳にすることは出来なかったのだけれど。



「こうでなくちゃあ、つまらないよね?」



KOITANO!(恋敵がいる恋愛は、張り合いがないとつまらないでしょ?楽しまなくっちゃ!)
フリリク企画、望月様リクの久々→竹←タカ(久々知ヤキモチ)なSSでした!タカ丸は色恋に関して先輩で一枚上手な気がします^^そんなイメージで!

リクエスト有難う御座いました!

お持ち帰りは望月様のみOKです^^

2010.10/7 椙竹さと

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あきゅろす。
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