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リリカルなのはの小説
奇襲開始




†sideクロノ†


幸騎達が位置に着いた頃――



モニターには数台の人員輸送車が列を成して荒野を走っている。別のモニターにはそこから数キロ先までを細かく監視しており、魔力反応があればすぐに分かる状態だ。


「順調だな」


それ眺めながらクロノはつぶやいた。

スムーズに事が進めば後9時間ほどで到着するはず。なんとか無事に終わりそうだ。

だからなのか、クロノの頭に甘い考えが浮かんだ。


「艦長」

「あら、なにかしら?」

「任務は無事に終わりそうですので、フェイト達を待機から外してはどうでしょうか? 連続勤務でロクに睡眠をとっていないかと思われます」

「あなたがそんな事言うなんて珍しいわね。やっぱり妹には優しくなるものかしら」


珍しそうに見つめるリンディ艦長に対して話を続ける。


「彼女達はどう見ても働きすぎです。いくら本人の希望だからといってあれはやりすぎでしょう。待機は僕1人で問題ないかと」

「そうねぇ……あの3人にはいっぱい頑張ってもらってるし、まぁいいでしょう。伝えてあげて」

「分かりました」


話を区切り、フェイトに通信を繋げた。


「どうしたの、お兄――じゃなくてクロノ」

「……このままいけば無事に終わりそうだから待機から外れていいぞ」

「え? でも……」


「クロノ君、ホンマにええんか?」


通信にはやてが入って来た。目がキラキラと輝いて見える。


「あぁ、働き詰めなんだろ? 成長期なんだからしっかりと寝ろ」

「分かった。ありがと、クロノ」


よく寝るように伝え、クロノは通信を切った。


「ついでだからあなたも休んでなさい」

と、リンディ艦長。実は彼女はクロノの母親である。そんな彼女からすればクロノも同じくらい働いているのだ。


「いえ艦長、もし何かあったらすぐに行けるよう待機してます」

「大丈夫よ、もし何かあったらすぐに呼ぶから。あなたも全然寝ていないのでしょう? いいから休みなさい」

「……分かりました」


クロノは渋々自室に戻って行った。









†side幸騎†



位置に着いてからおよそ3時間経過した。


幸騎は慣れているが、真希にとっては苦痛の時間だろう。

ヒマを持て余していた真希が、しゃべり始めた。


「ねぇ幸騎君、何であいつらはあの町を襲いに行くのかな」

「この世界の人が質量兵器禁止条約に反対しているのは前に言っただろ?」


頷く真希を尻目に話を続ける。


「ここは魔法を使える人間が中途半端に不足しているんだ。だからか知らんが治安も悪くてな、みんなが護身用に銃を所持している。それが、邪魔になるんだろう」

「だからって襲わなくても……話し合いで解決出来ないの?」

「無理だ。文化の違いだけで世界の理想が変わってくる。魔法が発展途上のこの世界ではどうしても質量兵器が必要なんだ」


それに、と幸騎は付け加える。


「管理局の方も、組織としての意地がある。だから奴らを使ったのだろう。あの町は、見せしめのようなものだ」

「でもっ……撃たないと、人を殺さないと止められないの!? 別な方法は考えた?」


「今更だな。残りの選択肢はこの世界を見捨てる事しかない。そうすれば多くの命が散る。治安も更に悪化するだろう。それでいいのか?」


あくまでも冷静に、声のトーンを下げて会話をする。

幸騎としては他人の命などどうでもよかったのだが、管理局の傘下に入る世界が増えるという事だけはどうしても阻止したかった。


「いやだよそんな事、なんとかして救いたい。助けたいよ……」


「救うためには武力が必要な時だってある。残念だが、今がその必要な時なんだ。分かってくれ」

「でも……ううん、やるしかないんだよね。変な事言ったりしてごめんね」

「気にしてないから大丈夫だ。それより、ちゃんと見張っていろよ。そろそろ通る頃合いだ」


なんとかごまかしに成功。その際、嘘をふんだんに盛り込んだので多少の罪悪感はあるが無視する事にした。

そもそも今から攻撃する奴らは話し合いの命を受けたいわゆる使節団だ。別にあの町を襲いに来たわけではない。

ただ、その命令を受けた部署が奴らの駒である事と、本来の仕事とはかけ離れたことをしていると言っただけだ。それを真希が勘違いしているのだ。

無論、そうなるように仕向けたわけだが。


そんな事を考えていると、ふいに真希が叫んだ。


「来た! 奴らが来たよっ」


真希が車両を確認したらしい。幸騎は双眼鏡を覗いた。

確かに人員輸送車が向かって来ているのが見えた。車両は4台、このままだと後5分で射程圏内だ。


「さぁ始めよう。この世界のためにも」

「うん……」


幸騎は先頭車両の運転手に狙いを定めた。

罠を仕掛けた場所に着くまでひたすら合わせ続ける。


「まだ、もう少し………撃って!」








そして、トリガーを引いた―――

戦闘開始である………





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あきゅろす。
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