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ウミとリク
ヤキモチって焼き餅?
結局移動教室にはナベと二人で遅刻した。
しかもさりげなく手を引っ張られて走ったので、俺の顔はたぶん真っ赤だったと思う。

俺だってゲイじゃない。たまたま好きになったのが理久だったってだけ。
なのに逃げ道を作ってくれるナベにちょっとときめいてしまったのは、片想いの気持ちが痛いほどに分かってしまうからだろうと思う。

決して揺れてなんかない...と思う。

ナベは去年も同じクラスで、結構仲が良いクラスメイトだ。誰とでも上手くやっていけるタイプでちょっとチャラいくせに面倒見が良い人気者だ。
そんなナベがなんで俺なんかがいいのかは理解できないが、恋っていうものが盲目で理解不能な代物だって事は分かってるつもり。
好きな理由に説明なんて不要なのだ。


「羽実、待たせてごめんな」
理久が教科書を片手にやって来た。
待ちに待った昼休みなはずなのに、さっきの出来事のお陰でさっきの授業の記憶がない。あっという間に一時間経ってしまったようだ。

「お腹空いたー」
「食堂行こっか」
「賛成っ」
返ってきた教科書を机に突っ込んで、足早に食堂へ向かう。

「お、意外に空いてる」
「本当だな。あ、そこ空いてる」
理久が指差したのは窓際の丸テーブルだった。
「俺座ってるから先に買ってきなよ」
「そう?じゃあ羽実の分も一緒に買ってくるよ。何がいいの?」
「うーん、理久と同じの」
「了解、じゃあ座ってて」

窓際の席に着くと、ちょうどそこから食券を買うための列に並ぶ理久が見える。前に並んでいたのが確か去年理久と同じクラスだった女の子だ。なんだか楽しそうに話していて、傍目から見るとカップルに見えなくもない。

「今イラついてるでしょ」

「...うっさい、ナベのせいで更にイラついたし」
椅子に座ったまま視線を上げるとカツ丼をトレイに乗せたナベがいた。

「あの子、去年鈴木に振られたはずだよ」
ナベが理久の前の女の子を目線で追って言った。

「え、まじで?」

「マジだよ」

「理久ってモテんの?」

「はぁ?疑問はそこなの?」

「俺の知る限りじゃ結構告白されてるよ。あの長身だし結構男前じゃん。そりゃもてるだろ」

「.....理久が小綺麗な顔してるのみんな知ってたの?」

「なんだそれ、見りゃ分かるだろ。まぁ目立つタイプじゃないし、どっちかっていうと羽実の方がモテるけどな」

「そうなんだ、俺だけが知ってる秘密だと思ってたのに...」
落ち込む俺の頭に手を乗せてくる。

「ってか、さりげなく俺がウミを褒めてるのは無視なのね。いいけど結構いじけちゃうよ?」

「なに、俺のこと褒めてたの?」

「聞いてもなかったのか...ひどいよ海坊主」
ゲシ、ナベの弁慶の泣き所を蹴る。
「悪口はよく聞こえるもんなんだよね」

「うぅ...暴力反対。とにかくウミは王子様..,いやどっちかというとお姫様?みたいな顔してるからモテるだろ。鈴木はどっちかっていうと影武者っていうか、ウミに指一本触れされないオーラが出てるから近づくのにはかなり勇気がいるんだよなぁ」

「はぁ?理久なんて別棟だし全然一緒にいないだろうが」

「いや、だから影武者なんだって。俺だって近くのには命が...」

「アベ...どけ」
ゲシ。
「のわぁぁぁぁ!二回も!弁慶でさえ一発ノックアウトの急所を二回も!?」

「「アベ、うるさい」」

「ナベだからー!ばかばかー!」
えーん!と幼稚園児ばりの泣き真似をしながら自分の席に戻るナベ。いつも理久とは必要以上に話すことはない。真逆のタイプだから苦手なのかもしれない。


「羽実、カレーだけど良かった?」
「あ、うん。ありがとう」
席に座りながらトレイを一つ俺の前に置く。

「ナベとあんなに仲良かったっけ?」
「え、仲いいか?そうでもないと思うけど」
そう言いながらもさっきの告白を思い出して顔が熱くなった。下を向いて「うまそー!」とカレーに話を逸らすと「そうだな」と優しく笑ったをした理久にほっとした。



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