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ウミとリク
2 俺とリク
俺の生まれる一日前、理久は一足先に産声を上げた。

俺の母さんと理久の母さんは、産婦人科で意気投合。そこから親友になったと思ったら、ニュータウンに戸建を同時期に購入。もちろんあえてのお隣さんだ。

そんな親達の子だから、幼稚園も小学校も中学校も毎日一緒に通った。もちろん高校も同じだから今も一緒に登下校している。
晩ご飯をどっちかの家で食べるなんて日常茶飯事で、お互いの部屋はノックなしで入るのが暗黙の了解である。


そんな俺と理久は今年高2になった。
身長は俺が170センチ、理久は背だけ無駄に高くて185センチだ。だから毎日行きと帰りに見る背中は俺より一回りも二人回りも大きい。

しかし、だ。

そんな変わらない関係を今後何十年と続けて行くはずだったんだ。
いや、このままなら続けていけるかもしれない。俺がこの気持ちを打ち明けず、ただ静かに胸の奥にしまっておけば。


今まで16年間幼馴染としてやってきて、初恋が理久だというのなら、きっと「恋を知らないひな鳥」みたいな感じで済ませられたと思う。
ひな鳥が親鳥を追うように、毎日引っ付いていたから恋愛と親愛を取り違えているんだっ思えたかもしれない。

だけど、俺には彼女だっていたし、年頃の高校生が経験してるだろうこと一応もしてる。
理久だって彼女がいた記憶はないけど、好きな子がいた。結局打ち明けられずに終わったけど。
当たり前に女の子が好きで、恋をして、親友に相談して...


だから、俺が理久を好きになるわけないはずで、理久が俺を好きになるはずもないんだ。


幼馴染で親友っていう、俺がピッチャーならあいつはキャッチャー的な、ボケとツッコミ的な、ご飯と味噌汁みたいな、絶対的に誰にも譲れない最強のポジションにいるのに。


幼馴染で男同士、崩せない関係が西と東を隔てる高い壁のように立ちはだかる。
元々一つの国であったなら、一つに戻るために壁を崩すのだろうけど、俺と理久は残念ながら一つの人間でもなく、ただお家がお隣さんの幼馴染なのだ。

誰より近いようでこれ以上近づいちゃダメだって、いつだって線引きされてる。



いつもみたいに自転車で後ろから肩に手を乗せて、たまにふざけてぎゅ、と首に手を回したりして。

そしたら、心臓がバクバク鳴った。
これはもう聞こえちゃうかもってくらい大きく感じて、ちょっと体を離したら怪訝な顔をされた。


その前日までいつもと一緒だったのに。
その瞬間までドキドキなんてしなかったの
に。

「じゃ、また明日」
そうやって別れた途端に、「え?明日までどうやって生きたらいいの?」みたいに突き放されたみたいに感じちゃって、

ほんと手に負えない。

これが恋じゃなけりゃなんだっていうわけ?


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あきゅろす。
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