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ウミとリク
鈍感な純情
「なるほどね」

「なにその反応」

最近昼ごはんをナベと食べることが多くなった。今も俺の机を挟んで正面にナベがいて、ツナマヨのオニギリにかぶりついている。
どうやらツナマヨと昆布率が異常に高くて、別にナベの好みなんて知りたくもないが、最近自然と覚えてきた自分がいる。

「ウミって健気」

「はぁ?」

「でもバカだね」

「なんで」

「告白してもしなくても、今のままでいられるわけじゃないじゃん」

「そんなの分かってるし」

「分かってるようで分かってないね」

「ナベに言われたくないし」

「失礼な。俺こんなヘラヘラしてるけど、ウミよりは断然人の気持ちには敏感だもんね」

「なにそれ。俺が鈍いってこと?」

「鈍いってレベルじゃないね。まぁそこがウミっぽいっちゃウミっぽいけどね」

「俺のどこが鈍いわけ?」

「いっぱいありすぎてどこがって言われると難しいな...あ、そうだ、ウミの隣の席のカオリちゃんいるだろ?」

「誰だそれ」
隣の席って二つしかないから、女の子っていうとこないだ恋愛相談に乗ってた子かな?だって反対側の隣は柔道部主将の通称オニギリ君だからね。

「名前くらい覚えてあげて。君の左隣の可愛い子ですよ」

「あ、わかった!えっと...小川さん!」

「...残念、大川さんでしたぁ。惜しいようで大きく違うよね」

「そうだっけ?で、その大川さんがどうしたの?」

「ウミのこと好きだよ絶対。このクラスになってすぐくらいから」

「はぁ!?絶対嘘だ!」

「ほら気づいてないだろ?だから鈍いって言ってるの」

「は!え?冗談だろ?」

「冗談なわけないでしょ。どう見ても『私あなたが好きで堪らないの』って視線をいつも送ってるじゃん。席替えでウミの隣になった時の嬉しそうな顔といったらなかったね」

「勘違いじゃないの?ほとんど喋ったこともないよ?」

「喋ってほしくないからずっと俺が後ろ向いてウミを独占してるもん」

「えー、なんかナベの思い込みじゃないの?」
信用できないな、と疑いの眼差しを向けるとナベはため息を吐いた。

「だからウミは鈍いんだって。あ、カオリちゃんが帰ってきた」
昼休みの終わりが近づいて来て教室に人が増えてきて、噂の大川さんも帰ってきたらしい。

「ねえねえ、カオリちゃん」
席に着いたばかりの大川さんにナベが声を掛けた。一体何を言う気なんだよ。

「どうしたの?」
少し首を傾げた大川さん。目が大きくてえくぼが可愛らしい。

「カオリちゃんて彼氏とか好きな人っているの?」

「え!?なんで急に!?」
藪から棒な質問に一瞬で真っ赤になった。
そりゃびっくりもするよね。

「いや、カオリちゃん可愛いいしモテるじゃん?俺席近いからよく彼氏いるのか聞いてって言われるんだよね」

よくもまぁ適当なことをペラペラ話せるもんだと感心する。
誰とでも仲良くできるのはナベの特技みたいなもんで、ナベの人付き合いの旨さとそれによって育まれた人脈はすごい。俺には真似できないなと思う。


「彼氏はいないよー」

「そうなんだ、じゃあ好きな人は?」

「好きな人は...いるよ。一応」
そう言った大川さんはナベと話しているのに、何故か俺を伺い見る。

「そっかーじゃあカオリちゃん落とすのは難しそうって言っておくかな」
ナベは俺の肩に腕を回すと「な、ウミ?」と言った。何に対しての確認だよ。

「大川さん急にナベが失礼なこと聞いてごめんね」
何と無く申し訳なくて謝る。

「え、そんな...全然気にしないで!と、隣なんだしまた話したいな」

「え?」

「や...ごめんなさい、気にしないで!」
さらに真っ赤になって否定するが、それが恋する乙女そのもので、ナベの言うことを肯定しているようだった。


「ウミー!コレあげる!」
「ぐっ!」

なぜか口にナベの食べかけのツナマヨを押し込まれた。
何すんだよ、と睨むとナベは「じゃあカオリちゃんまたねー」と俺の首に腕を回して引き寄せた。

「またね」
そう言って仲のいい友人の所へパタパタと早足で駆けて行く彼女を尻目に「ほらね、」と耳元で囁いた。


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