[携帯モード] [URL送信]

月明りで照らして
3年A組
「つーちゃんお帰り。こってり絞られちゃった?」

教室に戻ると先生はもう来ていて軽く遅刻だった。HRだから大目に見てくれそうだ。

「なんで楽しそうなわけ。ムカつく」

「だって腕を引っ張る会長ってば普段の冷静さが嘘みたいだったもん。レアなもの見たわー」

ニヤニヤ笑う千秋にイラっとしたので両頬を限界まで引っ張ってやった。

「いだいよー、ごがーだずげでー」

「自業自得だろうが。つむぎ、さっちゃんが困ってるから取り敢えず今はやめてやれ」

「たしゅかったー、古賀ちゃんラヴ」と千秋はウインクしている。

なんだかんだ仲いいんだよなお前ら。


パン、と手を叩く音が響いた。


「じゃあ落ち着いた所でHRはじめまーす。去年受け持ったクラスの子も結構いるみたいだし、現国で担当した子もいるから自己紹介は簡単でいいかな。
卒業までの一年間、このクラスの担任を任されました宮永 さちです。想い出に残る一年になるお手伝いができたらいいなと思います。念のため言っておくけど、年下には興味ないから女性が少ないからってあたしに惚れんなよ!」

腰にてを当てて満足気に自己紹介を終えたのは、ロングのサラサラヘアに大きな瞳が可愛らしいさっちゃんこと宮永さち先生、今年27歳。いかにも女の子な見た目とは違ってサバサバした性格で人気だ。高校最後の一年の担任がさっちゃんなのはラッキーだと思う。ただでさえ女性の少ない男子校、美人で男前な性格に惚れるヤツも少なくはない。


「今年も3バカトリオは同じクラスなのね。」


俺達は絶対惚れないけどね。


「インテリ眼鏡とワンコ不良が儚げ美人を取り合い...今年も一年楽しくなりそうね...」

変態だし、腐ってるからね。


ハアハア言ってるさっちゃんはどう見ても変態なんだが、3バカトリオこと俺ら以外にはフィルターごかかって見えるらしく、頬を染めているやつも多い。
ちなみにさっちゃんに興味なさそうな奴らはバイもしくはゲイの確率が恐ろしく高い。



* * * * * * * * *



ここ、私立桐林(とうりん)学園は都会からローカルな電車を乗り継いで2時間ほどの田舎にある男子校である。自然に囲まれ社会の喧騒から隔離されるようにひっそりと存在しているが、日本経済界を支えるあらゆる両家の子息が通う名門校でもある。
付属幼稚園から大学までエスカレーター式であるが受け入れ人数が非常に少ないため偏差値が高く家柄が良いだけでは入学する事はできない。だからこそ桐林学園を卒業する事はステータスであり、将来成功するための足掛かりとなる

また中学からは特待生制度も充実しており、特待生として入学すると学年15以内をキープする事を条件に授業料、寮費などを免除される。全体的な偏差値が高いため15位以内を保つのはとても厳しい条件だが、ここで培った人脈や桐林というブランドは血を吐く程の努力をしてでも惜しくない価値があるといえる。
ちなみに中学からは寮に入るのも自宅から通うのも自由であるが、こんな田舎に毎日送り迎えする家は稀で大半が寮生活をしている。

そんな一言で言うと普段は勉強ばかりしている年頃の男子たちが閉鎖的な空間に押し込まれてどうなるか?そんなのは火を見るより明らかだろう。
先ほどさっちゃんを見て頬を染めなかった割合は約五割。幼稚園から男子ばかりに囲まれて生活してきた結果、今まで同性相手にしか恋愛をしたことがない割合がそのままこの数字だといえよう。残り五割の内ノーマルとバイの割合は定かではないが半々、もしくは2:3といった所が妥当かと思われる。


さっちゃんは絶対この学園に萌えを求めて来たと俺は確信している。

恐ろしすぎるよ腐女子。

[*前へ][次へ#]

5/28ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!