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頂き物
忍ぶ恋(守花様から相互記念)
「昶君、ちょっと待ってください」

ある日の休み時間。
生徒達の会話で賑わう廊下を昶が歩いていると、後ろから教師の声に呼び止められた。
嫌そうに、しかし一応その声に従って振り返ってみる。

「なんだよ?」
「授業態度で少し、お話が…」

振り返った先には数学教師の白銀。
小脇には授業で使う教科書などが抱えられている。
長い白髪と眼鏡がよく似合う、学校一の美形。

「昶君、どうして…、どうして一年の時から英語は皆勤賞なのになんで数学は出席日数がギリギリなんですか!酷いです!ワタシと昶君の仲なのにぃー!!」

そして学校一の変た、いや、変人だと昶は思っている。

「俺とお前はただの生徒と教師だろーが。それから数学なんて社会に出たら使わねーだろ。だからだ」
「英語だって国内にいて、そういう仕事に携わらなければそんなに使いませんよ」
「お前教師だろ。そんなこと言っていいのかよ」

やっぱり変人だ。
昶は改めて白銀をそう認識した。

「昶君がどの教科にも顔を出していないというならいいんです。でも、でもなんで劉黒の授業だけは必ず出てるんですか!?」
「え、英語が好きなんだよ」
「それだけですか!?昶君は劉黒が好きなんですね!」
「なんでそうなる!」

廊下にて教師と生徒が口論を繰り広げるなか、周りにいる他の生徒たちは興味深そうに傍観していた。
予鈴がとっくに鳴っているにも拘らず、誰も止めやしない。

「煩いぞ白銀、廊下で騒ぐな」

そんななか、凛と響く声。
口論を止めた二人がそちらを見れば、英語教師が呆れた顔で二人を見ていた。

「劉黒」
「白銀、もう予鈴は鳴ったぞ」
「あ、もう時間ですか。それより劉黒からも昶君に言ってください!他の授業に、いえ、ワタシの授業にも出るようにと」
「数学だけでいいのか?」
「他の授業なんて知りません。それではワタシは失礼しますね。次の授業は上の階なんです。劉黒、頼みましたよ!」

劉黒のもっともな意見など意に介さず、白銀はさっさと授業に行ってしまった。
たまに人の話を聞かないのがアイツの短所だな、とため息を吐いて劉黒は昶に向かい合う。

「先生も早く授業に行ったら」
「そうだな。二海堂、次の授業は?」
「体育。面倒だからサボるけど」
「私の前で堂々と言うとは」

教師の前で臆面もなく言う昶に劉黒は苦笑を禁じえない。
つられて昶も笑う。

「じゃあ気分が悪ぃから保健室で休むにする」
「サボるのも程々にな」

授業開始の本鈴が鳴る。
その音を聞いて、未だに廊下で騒いでいた生徒たちも教室へと入っていく。
劉黒も昶の頭をくしゃりと撫で、自分の受け持つ教室へと入って行った。

授業中の廊下。
先ほどの喧騒など嘘のように静まり返っているその場所で、先ほど教師が触れた頭を押さえて赤くなっている生徒が一人、暫くそのまま動けなかった。



時間は早くも放課後。
図書室の奥、洋書が並ぶコーナーに昶はいた。
そこは置かれているジャンル故に人が来ることは滅多にない。
昶にとって好ましい場所の一つだった。
昶は翻訳されていない洋書を一冊手に取り、適当な椅子に座ってそれを開く。
横書きのそれを目で追うも、頭では別のことが考え浮かぶ。
それは今読んでいる言語を教える立場の、一人の教師のこと。

初めて会ったのは一年前。
場所は図書室の奥。
授業初日の一限目。

『一年か?今日は授業開始日だろう?どこのクラスだ?』
『…』
『無理に授業に出ろとは言わない。ただ、一年なら私が教科を受け持つクラスかもと思っただけだ』

教師なのに授業に出なくていいと言う目の前の男に、昶の興味が惹かれた。
劉黒が受け持つのは英語で、授業のために翻訳しやすい洋書を選びに来たことや、次の授業が昶のクラスであることなど、授業終了の鐘が鳴るまでいろいろ話しをしたのがきっかけだったのかも知れない。
話しやすい教師から、いつしか劉黒に向ける想いが特別に変わった。
今日、廊下で触れた劉黒の手の温かさが未だ残っているような気がするのも、彼を意識しすぎているせいだ。

「すき…、なんて言えるかっ」

ここから少し離れた見えない位置には勉強に励む生徒がわずかにいる。
小声で独り言を洩らした昶の声は誰にも聞かれることはなかったが、自分で言ったことに恥ずかしくなって本で顔を隠した。

少しでも近くにいたいから彼の授業だけは出るとか、少し困らせるのは自分を見てほしいからだとか。
昶はそんな女々しい想いを抱える自分に嫌悪するが、それでもやはり…。

「二海堂」

呼ぶ声に本を取り払い顔を向ける。
誰なのかは声で分かっていた。
顔を見て、そしたら昶自身でも予想出来ずに自然と言ってしまった。

「先生が、好きです」

昶の突然の告白に一瞬驚いた顔をした劉黒は、すぐに優しく笑ってくれた。

「ありがとう。私も昶が好きだ」

近づきたいと願っていた距離がゼロになった。

―――
守花様からの相互記念www
劉昶←白リクでしたが、もう完璧ですね!
純愛っていいですよね、分かります♪
青春まっしぐらな昶にストライクしましたよ(笑)
相互&素敵な小説どうもありがとうございました

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あきゅろす。
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