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novel
なごり雪(白←昶)
黒夜を白く染める雪色

満月に照らされ、キラキラと反射する白

冬の終わりを告げるには、何となく不適切な気がして何だか可笑しい気がした

窓を開ければ、まだ冬独特な冷たい風が部屋に侵入し思わず身震い

それに堪えて外に手を伸ばせば簡単に白を捕える事が出来る

しかし、それは束の間の幻覚

己より冷たい白は溶け始め、色を失い、原形も留める事無く水滴へと姿を変えた

――嗚呼、あいつに似てるかな

何となく脳裏に過った感想に、思わず自嘲じみた笑みを浮かべた時だ

「あまりそうしていると、風邪引きますよ?」

ふわりと肩に掛かる厚手の毛布。と、隣にやって来た白銀に現実へと引き戻された

「どうしました、寒いのに?」

「別に、何となくだ」

素っ気なく答えて見るが、白銀はクスリと笑うばかり

明日は大雪ですね、とワザとらしくため息をつくが実際明日から春の暦

降って貰っては、季節として成り立たない気がする

「…で、何を考えていたんですか」

「何だ、いきなり…」

「さっきから思い耽った顔、してますよ」

不意に白銀の右手が自分の頬に宛がわれ、ゆっくりと緩慢な動作で顔の輪郭を撫でて行く

その動作に心地良さを覚え、暫く為すがままになる

昔ならすぐさま払い除けていただろうに、すっかり丸くなったと自覚する

あと、思い耽っていたのは間違っていないが少し違う

多分少し感傷的になっていたのだろう

何となく似ている気がしたのは、その存在の儚さゆえ

触れては掴めない幻の様な気がしたのに

声が、触れる指が、伝わる熱が、確かにお前が居ることを証明していた

「温かいな、お前の手」

「昶君が冷たいだけです」

他愛も無い会話。たったそれだけなのに何処か満たされていて

「綺麗ですね、雪」

「また見れると良いな」

「その時は、一緒に見ましょう」

必ず、と付け足した白銀の顔に、ひらりと雪が舞い降り目下で止まる

頬を伝う雪解けの雫、その軌跡がまるで涙の様だった

(大丈夫、居なくなったりしないから)


ーーーーー
冬終わる!ってことで勢いで書き上げました
2人が偽物すぎるよ!


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