小説『Li...nk』
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新聞には“和国で大陸併合前の世界地図掘り出される”と大きな見出しが書かれていた。
和国は今ある国々で最も長い歴史を持っているらしく、この国だけ独特の名前や言語を持っている。
写真には博物館の中で厳重な警備のもと、その地図が保管されているのが写っているが、肝心の地図の内容は小さくて写真からではよく見えない。
見ることが出来ないと分かりきったことなのにリィは目を細めて写真を見入る。
「リィ、諦めなよ……」
レイシャンは彼女の頭に手を置いてポンポンと叩いた。
リィは、むぅと唇を尖らせて顔を上げた。
「決めた。休みの間和国に行って見に行く!」
あまりにも突拍子のない事でレイシャンとアリスは目を点にした。そして苦笑いをして一言。
「勉強熱心ですね」
「ただの知的好奇心よ」
アリスの苦笑いに同じく苦笑いで返すリィとの間に、アリスよりそんなことに対する興味関心が皆無なレイシャンは一人、死んだ魚のような目をしていた。
ちょうどその時、彼らの頭上からベルの音が鳴り響いた。それは昼休みの終わりを示し、彼らの束の間の休息の終わりを告げたのだ。
言わずもがな、三人は苦い顔をしてため息をつく。
それと同時に何かに気付き、リィの表情は一瞬にして凍りついた。
「うぇ……もうこんな時間!? あたしたちまだご飯食べ終わってないし!」
リィの言葉に、感電するような早さでレイシャンの表情も凍りつく。そして彼は無言で視線を机の上にやる。
「間に合わないってコレ……」
慌ててパンにかぶりつく二人を外に、二人の前に現れる時には既に食事を済ませていたアリスは「微笑ましいですねぇ」と、にやけ顔で二人を見ていた。
それは全ていつも通りのこと。何かが変わったと言うならレイシャンがこれからまめに新聞を読むと決意したことだけだった。
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