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苦界の躾
教わる※
ドアが閉まり二人の足音が聞こえなくなると、錦はゆっくりとアイに歩み寄った。

「アイ……辛かっただろ?」

青いバケツに大量の液体がたまっている。それを全て出し入れされたのだ。辛くないはずはない。

洗い流したのか、体は汚れていない。錦は、大量の排泄のせいでぷっくりと腫れた肛門をそっと撫でた。アイは少し体を振るわせただけで、目は瞑ったままだった。

「駒形君、何回洗ったんだい?」

バケツを持ち上げて部屋の隅に運んでいた駒形に、錦が尋ねる。

「5回です。最初から200も入れられてました」

答えながら床についた大きめの排水口の網をはずし、バケツの中身を空けた。元々は純粋に掃除用に作った排水口だが、今は少し用途が変わっている気がする。そんなことを考えながら、排水口の脇の清掃用流しで、バケツを濯ぐ。先に流した汚物を押し出すように、濯いだ水を排水口に流す。

錦はアイから離れ、壁のパネルを操作して床に降ろしてやった。そして、拘束を全て解いてやる。手も脚も、ロープで縛られていた箇所は青い鬱血になっていた。床に座り抱きかかえてやると、アイは薄っすら目を開いた。

「あ……う……ぅ」

抱かれている温もりにアイは声を上げた。駒形はそれを聞いて2人の方を振り返った。アイは決して小柄とはいえない。それを包んでしまう長身の錦を見ながら、駒形は首をかしげた。錦はこんな奴だっただろうかと。

「明日から辛くないように、少しやり方を教えておいてあげるよ」

アイを床に寝かせて、背広を脱ぐ。ワイシャツの袖を肘くらいまで捲くった。これ程のやる気を見せた錦は初めてで、遠くから見ている駒形は言いようのない不安を感じた。そのまま立ち尽くしていると、錦は再びアイを抱き上げてから駒形の方を見た。

「……出て行きましょうか。あなたなら見張っている必要もないでしょう」

錦の視線はそう言う意図のものだと思った駒形はバケツを置いて出て行こうとした。

「いや、ここに居てほしい」

予想とは反対の反応に驚きつつも小さく頷く。また流しの方に戻ると、その辺に置いてあったパイプ椅子を広げて座った。しかし錦が手招きをしたので、駒形は椅子を引きずりながら二人の方に近づいた。

少し距離のあるところで、錦が「ストップ」と制する。駒形はそこに椅子を置いて落ち着いた。

駒形には、ここに自分を置いておく錦の意図がわからなかった。アイは視姦されて感じるほどではない。それに、少し距離をおいたということは、何か手伝わせようと思っているわけでもなさそうだ。

「アイ……」

また目を閉じていたアイに錦がそっとくちづけをする。官能的なくちづけに、駒形は見入ってしまった。今回のように複数で調教をする場合には、愛が伴わない。しかし、錦はアイをひどく気に入っているようだ。普段と様子が違うことも頷ける。駒形はそういうことだと解釈すると、先ほどの言いようのない不安も大分薄れた。

「……んふっ……、あぁ」

錦が少し唇を離すと、アイはそれを追う様に体を押し付けた。しかし錦は顔をそらしてしまう。

「はしたないな。キスだけでそんなに気持ちよかったのかい?」

服越しに感じるアイの股間の変化に、錦は嬉しそうに笑った。

「こういう風に、他人の行為をただ受けているのが好きなんだろう?」

腰を撫でながら囁かれ、アイは背中がゾクゾクするのを感じた。

「駒形君、何かないかな?タオルとか、そういった物」

胸を喘がせるアイの背中を子供をあやすように叩きながら、錦が駒形を見上げた。駒形は黙ったまま立ち上がり、水道の脇に並べてあるダンボール箱を探った。そしてタオルケットを持って戻ってくる。

「ありがとう。ついでだから、この辺に敷いてくれない?」

駒形が敷いたタオルケットの上にアイを仰向けにする。もしやと思っていたが、仰向けにされたことで股間があらわになり、駒形はアイが錦のキスで興奮していたことを知った。

「駒形君、アイが本当に苦しそうにしていたら、止めてくれないか」

極めの細かいアイの肌をするすると撫でながら、座りなおした駒形を錦が見上げる。

「なんだか……歯止めが利かなくて、殺してしまいそうだ」

苦笑混じりに言った男に、頷いて了解の意思を伝える。錦は安心したように、アイに向き直った。

錦はアイの口に右手を伸ばした。何も言われないでもアイは分かっていたかのようにその長い指を口に含んだ。満足そうに微笑みながら、指で口内をもてあそぶ。

「アイは淫乱なの?口だけで感じでしまうんだね。」
「はふぅ……」
「ほら、もう先走りが垂れてるよ」

そう囁かれて股間を意識すると、自分のペニスがひくついているのがわかった。勃起の先端から温かい汁が流れ出していることも肌を伝って感じ取れる。

「……んうぅ……あ……あふっ」

口から指が引き抜かれると、完全に股間に意識が集中した。疼くペニスを慰めようと、アイの手が自然と自分の股間に伸びた。それを錦が押さえる。

「それは許さないよ。僕にも見せてよ。それに触れられないでイクところをさ」

両手を頭上にあげて押さえ、頬擦りをするように錦は顔を寄せた。

「アイは体毛が薄いんだね。腋も股間も、ヒゲも濃くないみたいだ。」

わざと耳元に息がかかるような体勢で、錦はアイに話し掛ける。耳から首筋にかけて温かい息がかかると、アイの体は敏感に反応する。

「駒形君が陰毛を綺麗にしてくれたのかい?まさか、抜いてもらって感じてしまったなんてことはないだろうね?」

昼間の快感を思い出し、アイの腰がビクンと跳ねる。それを見た錦は嬉しそうに笑った。

「図星なんだね。いけない子だ。そんなに感じるところなら、あとでいやというほど触ってあげるよ」

触られることを想像すると、ペニスから先走りが噴き出した。透明な液体が、下腹に水溜りを作っている。

「アイ……、どうして僕が話しているだけなのにそんな汁が溢れてしまうんだい?どこが気持ちいいのか、僕に教えてよ」

快感の発生源がどこにあるのかなんて、アイには特定できない。錦が自分に触れて話し掛けているということこそが快感だとも言える状態だ。

「返事も出来ないのか。仕方ないね。僕が自分で探すことにするよ」

嬉しそうに目を細めながら、まずは耳たぶを軽く噛んでみる。

「ひっ……ぃい……いい……」

耳元に息を吹きかけられて喘ぐ割には、耳たぶはそう敏感でもないようだ。微かに首を捻りながら、耳の裏を舐めあげる。

「……あんっ」

錦はそのまま少しずつ位置をずらして、アイの首筋を舐め回した。鎖骨まで下がってみたが、それほど大きな反応はない。

「じゃあ、これかな?」

呟くように言うと、錦は舌を耳の穴にねじ込んだ。

「あっ!?あぁぁっ!あぁぁんっ!!」

脳髄を刺すような強烈な刺激にアイが体を大きく震わせ悲鳴をあげる。それを聞いた錦は、興奮に背筋がゾクゾクするのを感じた。ただ離れて見ていただけの駒形さえも、下半身に血流を感じだ程だ。

「アイ、ここがいいんだね」

横目で股間を見てみると、ペニスはぴくぴくと震えて今にも精液を噴き出しそうだった。錦は耳への愛撫を続ける。

「ひぃっ、いっ……ぃいいっ!!ぅん、んっ、あぐぅっ!」

舌で耳腔をかき回し、唇を押し当てて軽く吸う。錦が出す卑猥な音も、アイの性感を煽っていた。熱い舌が激しく抜き差しされ始めると、アイは堪らず腰を揺らした。

「イっていいよアイ。僕に見せて」

錦の甘い息が耳全体を包む。アイは首をのけぞらせ、体を硬直させた。

「ああぁぁぁっ!!」

次の瞬間、勢いよく精液が飛び散った。膝を曲げて立っていた足が、ぱたりと床に伸ばされる。
先ほど洗腸の時に見せた吐精とは勢いが違った。そのときは垂れ流していたようなものだったが、今回は健康な青年だなという印象を受けた。

「アイ、まだ寝ちゃいけないよ。むしろこれからだ」

横になったアイの体に覆い被さるようにしていた錦は、体を起こしながら言った。これからだと言われ、アイの体が疼く。

「君は元々そんなに淫らだったのかい?こんな風にされるのは初めてだろう?」

錦の問いにアイが頷いてみせる。拘束していた腕を錦が放してやると、アイはそれを横に投げ出した。

「されるがままになっているのが、気持ち良いのかい?」

下腹にたまった先走りと精液を指に絡め取りながら錦が訪ねる。アイはいやいやをするように首を振った。腹に触れられてくすぐったいのだ。

「君は抵抗しないじゃないか。陰毛を剃られた時だって、じっとしていただろう?」

大事な所に傷がつくのを怖がっていたことには気がついていたが、錦はあえて指摘する。

「今日の浣腸はどうだったんだい?抵抗したのかな?」

実際抵抗できていなかったので、アイは首を振った。

「そうか……でもあの2人は他人を屈服させるのが大好きだから、少し抵抗して見せないと君がどうなるかわからないよ」

アイに微笑みかけると、錦は先走りと精液が絡みついた指を肛門に押し付けた。

「疲れたかい?じっとしていていいよ」

どろどろに濡れた指で肛門をほぐし始めた錦の言葉に、駒形はそんなつもりはないんだろうと心の中で呟きため息をついた。見たところ肛門やその奥も感じやすそうなアイが、刺激を与えられてじっとしていられるとは思えない。
錦はアイの様子を見ながら、排泄を繰り返されたおかげで少し緩んでいる肛門に指を差し込んだ。

「はぅっ……?!」

指を入れた錦は少しの圧迫感に体が反応したものと思っていたが、駒形は嫌な予感がして腰を浮かした。錦の指が奥に入っていくと、アイの体がガクガクと震えだした。

「錦さん」

駒形に呼びかけられ錦が指を入れたまま顔をあげる。

「なにか……」
「いっ……いやだ……、いやだっ!!」

アイは大声で叫ぶと錦の手を振り払おうと暴れ出した。

「アイ、危ないから、落ち着いて!アイ!」

駒形がアイを押さえつけようと立ち上がる前に、アイは強引に体を反転させて逃げようとした。そのとき、指にアイの粘膜を抉ったような感じを覚えた。

「痛いっ!いたい、いたいぃっ!!」

アイの悲鳴で、錦の顔が青ざめる。爪は短く切ってあったが、どうやら粘膜を抉ってしまったらしい。

「アイ!!」

腰に乗るようにして押さえつけ、ようやく指を抜く。思ったとおり指は真っ赤に染まっていた。
床を這って錦から逃げようとするアイを、駒形が抱え込む。強引に脚を開かせて確認してみると、肛門から血が滴っている。

「やだっ……やめて、やめて……やめて」

駒形に背中から抱え込まれたアイに錦が近づいていく。アイは激しく首を振って拒絶した。

「ごめん」

低い声で言うと、錦は駒形からアイを奪った。両手で強く抱き締めると、アイは少し落ち着いたようだった。膝立ちになった太ももに血液が筋を作って流れ落ちる。ぐしゃぐしゃになったタオルケットに染みができていた。

「……薬を取ってきます。」

アイが落ち着いたようなので、駒形は立ち上がって部屋を出た。腸は傷つきやすいので、流血など稀なことではない。それよりも、心を許しているように見えた錦の指を激しく拒絶したことが、駒形には驚きだった。相当落合の処置が不快で衝撃的だったのだろう。
錦はアイを膝に乗せて抱き締め、背中を擦ってやっていた。スラックスに血液が染みこんでいくのが肌の感触でわかった。アイのような常識的な理性をもってこの異常な行為を拒めない人間に、慣らす前に洗腸を施したのは失策だった。浣腸液を注入するための何某かの挿入が、恐怖となってしまったのだろう。錦は自分の肩に顔を埋めてしゃくりあげているアイに、繰り替えし詫びた。
薬を持って駒形が戻ってくる。駒形は錦に軟膏のチューブを渡し、椅子に座った。薬を渡された錦は呆然と駒形を見る。

「……君が塗ってくれるのかとばかり」
「錦さんのほうが適役ですよ」

駒形は背もたれに寄りかかって脚を組んだ。立ち上がる気はないようだ。大柄な駒形の指は錦の指よりもごつい。挿入に慣れないアイにはきついだろうと思われる。

「アイ、薬を塗ってやるから、脚を広げて、ここに……」

あぐらをかいた脚の上にアイを跨らせる。抵抗するかと思われたが意外とすんなりと脚を開いて、アイは錦の首に腕を回して体を支えた。

「また指を入れるけど、暴れるんじゃないよ」

軟膏を指にとって、もう片方の手を尻に添える。まだ流れ出てきた血液が乾かない肛門を割り開くようにして一気に指を突っ込むと、アイの体がビクンと震えた。

「大丈夫」

尻に添えていた手を腰に回し、なだめるように撫でてやる。傷ついた部分を見つけ指を当てたが、そこに到達するまでに軟膏はほとんど指から落ちていた。仕方なく指を抜き、肛門に付いていた軟膏を押し込むようにして、もう一度指を入れた。軟膏を押し上げるようにして指を差し込んでいく。抉れた部分を押さえつけるような錦の指使いに、アイは味わったことのない妙な刺激を感じた。

「ふっ……う……」

ペニスの根元が焦げたように熱くなり、アイは無意識に声を上げていた。

「痛い?もう終わりだから、安心して」

そう言って錦が指を引き抜こうとする。

「やっ!!」

アイは指を追う様に、腰を沈めた。錦は突然のことに指を抜くことも忘れてアイを見詰めていた。駒形も背を起こしてアイに注目する。
錦が指を引いた時、その指がアイの感じる場所をかすめていた。

「んっ……うぅん、……あん……?」

体の中の指が動きを止めていると、アイは何か探すように腰を揺らし始めた。一瞬だけ感じた未知の刺激を求めはじめたアイは、抉られた傷の痛みなど忘れてしまっていた。

「アイ?」

やっとのことで錦が口を開いた。アイは少しだけ錦を見たが、すぐに目を瞑って、意識を集中させてしまった。しかし、中のものがもっと太ければ探しやすいのにともどかしさを感じてしまうほど、先ほどかすかに指が当たった場所は見つからなかった。

「……アイ、何をしてるの?」

もどかしい表情から、アイが求めているものは錦にもわかった。この様子だと痛みは忘れているようだ。仕方なくとも嬉しそうとも取れるため息をつき、彼は指を少し引いた。

「あっあ!」

アイのペニスが途端に首をもたげた。やっと得られた快感に、息を荒くする。

「これをして欲しかったのかい?」

遠慮なくぐいぐいと指を押し付けると、アイの瞳からは生理的な涙が流れていた。錦の頭を抱き締め、ガクガクと首を折って答える。

「あうっ……、うっん、んっ、んあぁぁっ!!」

前立腺を刺激され、アイのペニスからはだらだらと先走りが流れ続けている。

「気持ちいいのか?」
「うん、……ん、あっ……あはぁ……」
「気持ちいいって言ってごらん。」

朦朧とする意識を何とかつなぎとめて、アイは呼吸を整えた。しかし、その間も錦がぐりぐりと粘膜を擦り続けているので、呼吸など整ったものではなかった。

「んふぅ……、ん、ひぃっ……きもち……いい……、きもちいいっ……あっ!」

アイの腰がビクリと震えると、そのペニスが白いものの混じった液体を噴き出した。しかし、射精したときのような開放感はなく、焦げ付くような快感が続いている。

「もっと、もっとぉ!」

全身が麻痺してしまいそうなほどの快感がいつまでも終わらない。早く開放してもらいたくて、アイは錦の頭をバシバシと叩いた。

「わかった!わかったから」

錦がそう言うとアイは涙目で覗き込んできた。指での刺激だけでイクまで擦り続けてやるつもりだったが、それまで我慢が利かなさそうなので、妥協することにした。しかし、妥協と言ってもただのセックスではないことを忘れない。

「アイ、どこをどうしたらよくなる?どうして欲しい?」

それを忘れてしまいそうになるほど乱れているが、昨日まで男として暮らしてきた身だ。溜まった欲求を吐き出す方法はよく知っている。アイは恥ずかしげもなく大声を上げた。

「チンポ、……チンポこすって!!」

黙って見ていた駒形だったが、これには呆れたように天井を見上げ額を押さえた。理性のある人間なら、すんなりとねだれる行為ではない。昨日までノーマルな男として生きていた者の発言とは思えない。しかも、彼は自分で言葉を選ぶことができないはずなのだ。全く、追い詰められた人間は何をするかわからない。調教を何度も見てきた駒形も、アイの乱れぶりには苦笑するしかなかった。

「イイコだ」

錦は心底嬉しそうに口を歪めた。すぐさま空いていた方の手でアイのペニスを掴むと、荒々しく扱き始める。

「いいっ!!あっ……あぁぁあっ!」

既にガチガチに勃起したペニスの皮を扱きながら、指は前立腺をめくり上げるように的確に動いている。アイは目を白黒させながらようやく錦にしがみついているような状態だ。

「はっあ、……はぁっ、あん……もぉ……もぉ、死にそう……」

すぐにアイの体はガクガクと震え始めた。絶頂がすぐ近いことを知り、錦は両方の手に力を込めた。

「ああぁぁっ!!あっ、あぁんっ、はぅっ……ん」
「イっていいよ。ホラ」

錦は優しい声で囁くと、とどめとでも言うようにアイの耳に息を吹きかけた。

「ああぁあぁぁぁぁあっ!!」

弓なりに体を反らせ、アイは錦の手の中に精液をぶちまけた。イクのと同時に失神してしまったらしく後頭部から倒れそうになったアイを押さえ、錦は指を引き抜いた。見てみると、血が絡まっている。
もう終わるのかと思い駒形は立ち上がった。タオルを絞って持ってくるつもりで黙って部屋を出て行く。

「アイ、もうダメなのかい?」

すっかり力が抜けているアイの体を横たえ、タオルケットの角で股間を拭ってやった。

「こんなことで動けなくなるようじゃ、これから先やっていけないよ」

タオルケットを放し、錦は指で股間を擦り始めた。駒形にクリームを擦り込まれたときの快感が呼び戻されて、アイは身じろぎした。
ペニスや睾丸には一切触れずに、その周りにしつこく指を擦りつける。快感で失っていた意識を呼び醒まされた彼は薄っすらと目を開け、色っぽい視線で自分を触っている男を見上げた。

「やめて欲しい?さっき約束したからね。ここを触ってあげないと」

少し前にいやというほど触ってあげると言われたことを思い出す。その声を思い出すと、アイは腰の辺りがじわりと疼くのを感じた。

「やめなくていいのかな?」

指の腹でふっくらしている会陰を押され、アイは考える余裕もなく首を折っていた。
満足そうに微笑んだ錦は、片手で股間を擦りながら、もう片方の手をアイの胸に置いた。

「乳首はどうかな?」

アイは、乳首を親指の腹で撫でるようにされ、また感じたことのない快感に首をそらせて悶えた。

「ひ……ぃっ……」

女性とのセックスで相手の乳首を弄ったことはあったが、そのときは自分が乳首で快感を得ることなど想像もできなかった。しかし今は撫でられているだけで体が熱くなってきている。アイは素直に感じてしまっていいのか戸惑い、歯を食いしばって声を我慢した。

「どうしたのアイ?声、出していいよ」

甘い喘ぎ声が途切れると、室内がぐっと淋しくなる。錦は刺激が足りないのかと思い、胸の突起をきゅっと摘んだ。

「あっ!はぁうぅっ!」

急に与えられた強い刺激に、我慢できなくなったアイは大きな声を上げた。そこにちょうど入ってきた駒形は、もう終わっているとばかり思っていたので、驚いて立ち止まってしまった。
硬くなった乳首をこね回され、アイはどうしていいかわからずいやいやをするように首を振った。

「いやっ……、あっふぅ……ねぇ、ねぇっ?」
「なんだい?」

潤んだ瞳に見上げられた錦は微笑んでその目を覗き込んだ。平然として見せているが、実は、アイの視線に興奮してしまい股間に窮屈さを感じている。

「……いいの?オレ、……あぁう……、そこで、かんじちゃっても……」

音もなくパイプ椅子に座った駒形を、錦が嬉しそうに笑って見上げる。までに見たことのないような彼の笑顔を見た駒形はいささか呆れていた。
アイの頭はいつの間にか言葉を紡げる状態に戻っているらしい。それに気がついた駒形は、先ほど失神するほどに乱れたおかげではないだろうなと眉を寄せた。もし何某かのショックで言葉が出ない状態だったのならば、それもあり得るが、こんなことで治るものなら心配など無用だった。

「……そうだよね。アイは男だから、乳首が感じるなんて、変だと思うんだろう?」

錦は身を屈めて耳元で囁いた。アイは耳元に温かい吐息を感じて細い悲鳴を上げる。

「いぃっ……!は……んぅ……、ん……アイは……おとこ、だから……ぁ、……ふぁあっ」
「男のくせに乳首が感じるなんて、アイが変態だからじゃないのかい?」

アイの耳元から顔を離すと、錦は座りなおした。彼は相当興奮しているらしい。駒形は、正面にいる錦の股間のふくらみが目に入らないように、少し体をずらした。

「アイが……ヘンタイ、だから?」

錦の言葉に、アイが不安そうな顔をする。

「他の奴らに触られて、そんなに感じてるところを見せたら、バカにされちゃうんじゃない?でも……」

言葉を止めて、錦はアイの突起を摘み上げた。

「あぁんっ!!」
「僕は全然構わないよ。だって仕方ないだろ?アイは変態なんだから」
「……アイ、は……、ヘンタイなんだ……?」
「自分でもわからないのかい?だってアイ、僕にさっきめちゃくちゃにされたじゃないか。同じ男に感じさせられて、尻の穴に指突っ込まれて気絶した位なのに、それでも自分が正常だと思う?」

アイは先ほどの快感を思い出してしまったのか、少し腰を揺らした。

「んっ……あぁ……アイは……ヘンタイ……」

話しいる間もずっと続いていた刺激に、アイのペニスは硬く勃起していた。アイがぼんやりと呟きながら少し腰を揺らすと、上を向いたペニスの先端から透明な先走りが流れ落ちた。
今の彼が冷静になれるはずもないが、もし昨日から本当に理性を保っていたのだとしたら最初の時点で既に拒絶しているだろう。彼が既に理性を保っていないことに気づいていながら、錦は微かに残ったそれを掻き乱そうとしている。

「正常な男なら、もっと能動的じゃないとならないんじゃない?今自分が気持ちよくなるためにしたいことが、思い浮かぶ?」

今の様子だと、されたいことなら思い浮かぶだろうが、したいことなど自分で慰めるくらいしか思い浮かばないだろう。そんなことを思いつつ、駒形は目を泳がせるアイの顔を眺めていた。

「ほら、アイは男なんだろ?性欲を発散させるために、男は何をする?」

アイは男と繰り返されてようやく自分の欲求がすっかり受動的になっていることに気づいた。今思い浮かんだことといえば、錦にしてもらいたいことばかりだった。

「わからないなら、そこにいる駒形君に教えてもらいなさい」

急に話を振られた駒形は眉を寄せて錦を見た。彼は嬉しそうに笑っている。

「男ならどうやって性欲を処理するんですか教えてくださいって、ちゃんとお願いしないとダメだよ」

男の自分が教えてやろうとは言わない。
アイは困った顔をして、錦と駒形を交互に見やった。錦の愛撫はいつの間にか止まっていて、アイの呼吸は随分整っていた。しかし、その落ち着きが羞恥をより強く感じさせる。錦が自分に要求した言葉の恥ずかしさに、顔を赤くして口ごもる。

「あ……ぁのっ……、」
「ちゃんと駒形君の方を向かないと、誰に質問したいのかわからないじゃないか。駒形君が困ってるよ」

仰向けのまま目を瞑ったアイの顔を強引に駒形の方に向ける。そうされて初めて駒形が近くにいることに気がついた彼は、さらに恥ずかしくなってしまった。錦が刺激を絶えず与えていたおかげで何もかも忘れて快感に溺れていられたが、落ち着いてみると、今までの自分の言動や動作がはっきりと思い出される。それを全部見られていたかと思うと顔を見て質問するなんてできない。アイは目を瞑って何度も首を振った。

「自分で何か思いついたのかい?それとも、できないの?」

恥ずかしすぎてパニックになったアイの頭では、自分で何か考え出すこともできない。駒形に聞くことも無理なように思えたので、アイは小さく訴えた。

「どっちもムリです……」

少し残念そうに首を捻り、錦はアイを抱き起こした。

「じゃあ僕が代わりに聞いてあげようか?でも自分で思いつかないんだったらもう立派に異常かな?」

思考の半分以上はもう異常者でもいいと言っていたが、僅かに残った理性がまだまともな男で居たいと言う。アイは無意識に錦にしがみついてしまっているが、自分に散々恥ずかしい思いをさせている男にしがみついている時点でもう理性などあったものではないのではないだろうか。

「駒形君が教えてくれたことを、アイが立派に肯定できれば変態だって言ったのは撤回してあげよう。それでいいかい?」

駒形は錦が何をしようとしているか大体予想できた。苦笑してみせると、錦は悪戯っぽく笑い返した。
錦がアイを後ろから抱え込んで、駒形と向かいあわせる。一瞬だけ目が合って、アイは気まずさに顔をそらした。

「じゃあ駒形君質問するけど、普通の男の人は気持ちよくなりたいときにどうしたいって思う?」

心底楽しそうな錦に呆れながらも、脚を組みなおして咳払いをしてみせる。咳払いに、アイが顔を上げた。

「女の股にブチ込みてぇって、思うんじゃないですか?」

わざと下品な言い方をすると、錦は渋い顔をしたが、アイはここに来る前の自分を思い出したのか少し口元が緩んだ。

「アイもそう思う?」
「……ハイ」

顔を覗き込まれたアイが大きく頷く。

「ふぅん。本当?じゃあ今気持ち良くなってみて、それで本気で同じこと思ってたら、撤回してあげるから。ねぇ駒形君、オナニーしてるときもそう思ってるんでしょ?」

駒形は無言のまま何度か首を折った。錦の提案を聞いたアイの顔は、すっかり青ざめている。

「オナニーくらいできるでしょ?まずはそれで気持ち良くなってからだよ」

先ほどまで硬く勃起していたペニスは、すっかり萎えてしまっている。アイは駒形が目の前に居るという恥ずかしさに、全身が赤くなっているように感じた。

「健康な男子ならできるでしょ。できないの?僕が手伝ってあげようか?」

錦に触られたらどうなるかわからないアイは、激しく首を振って拒絶するとそろそろと自分の股間に手を伸ばした。
まだ乾いていなかった先走りが潤滑油代わりになっていい具合に手が滑る。錦の愛撫の余韻が残っていたのか、ペニスはすぐに硬くなっていった。少し気持ち良くなってくると、胸のあたりに回されている錦の腕が気になってきた。

「随分と早く元気になるんだね。そろそろぶち込みたくなってきた?」

そんなことよりも、錦の腕が乳首を押さえていることのほうが気になる。少しでも身じろぎすれば、乳首から甘い刺激が股間に響く。その快感を求めて、アイは自ら体を揺すった。乳首が腕に擦れて、気持ちいい。

「ダメだよアイ。元々は乳首で感じるかどうかって話からこんなことになったんだからね」

アイが乳首の刺激を求めていることに気がついた錦は、腕の位置を少し下げた。途端に刺激が減ってしまって、アイは不満を感じた。

「どんな気持ちなの?アイのチンポ、随分硬くなってきたみたいだけど」

今まで知らなかった快感を知ってしまったアイには、女性の中を想像して手で抜くことなどもう不可能だった。乳首からの刺激の分を何とかごまかそうと両手でペニスを扱いてみたが満たされない。耐えかねて、アイは縋るように錦に体を摺り寄せた。

「ねぇっ……、あぁ……アイに、さわって……」

アイが体を摺り寄せてくると、ちょうど尻が股間に当たる。錦は自分の欲求を我慢しつつ、上目遣いに自分を振り返ったアイを覗き込んだ。

「それは自分が変態でもいいってこと?自分が男だとか、もうどうでもいいってことになるよ?」

ためらわず、アイは頷いた。

「……それでも、いいから、……はやく、はやくさわって……」

色っぽいおねだりに、ねっとりと絡む様なキスを返す。アイはすぐに触ってもらえると思い安心したのだが、錦は唇を離すと口を開いた。

「じゃあ、まずは駒形君に、自分は変態ですって、宣言しなさい」
「え……?」

言わなければ触ってやらない、と言うように手をパッと離され、アイは泣きそうな顔で錦を見上げた。

「教えてあげる。駒形君の方を向いて」

錦が耳元に唇を寄せ、吐息混じりの声で囁く。

「駒形さん、アイは錦さんの言うとおり変態でした。……とりあえずこれだけ、ちゃんと言うんだよ」

小さい声だったが、駒形にも聞こえていた。

「こま……がたさん、ぁ……アイは、にしき……にしきさんのいうとおり、ヘンタイ、でした……ぁっ」

最後の方は搾り出したような声だったが、駒形にもはっきりと聞こえた。それを伝えるようにうんと頷いてみせると、アイはホッとしたように錦に体重を預けた。これで触ってもらえると思えば、変態だと宣言することなどただこなすだけの課題のようなものなのかもしれない。

「よくできたね。じゃあ、触ってあげようか」

アイの肩に優しくくちづけをすると、ペニスを握っている手を解くように除けてやった。そして、鈴口に親指を擦りつけながらペニスを扱いてやる。

「ああっ!ひぁ……あはぁ……」
「同じところを触ってやっているだけだけど、自分で擦るのとどっちがいい?」

声を聞けばすぐにわかることを、わざと訪ねる。

「こすって、もらうほうが、……あふっ……ん……ぃいいっ!!」

鈴口に指をねじ込むようにされて、少なからず痛みを感じるはずだが、アイの口からは痛みを訴える声など出てこない。出てくるのは甘い吐息と快感に喜ぶ悲鳴だけだ。

「自分じゃ満足できなかったのに、僕にしてもらうとこんなに感じるなんて、アイはおかしいね」
「……う……うんっ……ぁ、アイ、は、アイはおかしい……、アイは、ヘンタイだからっ……」
「そうだよ。だってここをこんなにぐりぐりされたら、アイみたいな変態じゃなかったら痛くて死にそうになっちゃうよ。ねぇ駒形君」

頷くだけではアイにはわからないと思い、駒形はそうですねと声に出して反応した。それを聞いて、アイは困ったような表情で駒形を見た。

「本当だよアイ。僕だって君みたいには感じられない」

そう言われ、痛みなど微塵も感じていない自分が不安になる。駒形は言外に自分も変態だと言うような錦の台詞に苦笑していた。

「や……だ……、どっかおかしい……の?こわれてんの?」

目には涙が溜まり、声が震えている。潤んだ瞳で見られた錦は首を振って否定すると、耳をかじる。

「おかしくなんかないよ。変態はそれでいいんだ。さっき自分は変態ですって、認めたばっかりだろう?」

アイは自分が変態だということをすっかり受け入れているらしく、駒形には理解できない理屈を囁かれて安心したようだった。

「どこを触って欲しい?どこでも触ってあげるから、言ってごらん」

このままでも充分だったが、錦の優しい言葉に安心して今疼いている所を探す。

「乳首……が、いいな……」
「いいよ。変態は乳首で感じるんだもんね」

触ってもらえる嬉しさに頷いているアイは先ほどから何度も自分が変態だと認めさせられていることに気づいていない。もし正気に戻ったときのために、駒形の居る目の前でそれを認めさせて、保険をかけているのかもしれない。
錦はペニスから手を離し、両手で乳首を弄った。両方の乳首をこね回すようにされて、アイは絶叫した。

「ああぁぁぁあぁっ!!」

触れられていないはずのペニスから先走りが噴出す。乳首から痺れるような快感が広がって、アイは全身が敏感になっていた。錦に触れている部分全てがじりじりと熱をもっていくようだ。それがもどかしくて、あぐらをかいている錦の脚に手をかけ、ズボンをぎゅっと握りしめる。

「はっ……ぁあ!だめっ、だめぇっ!」
「何がダメなの?」

イキそうだということは聞かなくてもわかるが、それを言わせたくて、錦は聞いた。

「もう……、もう、イキそ……ぉ……、あうっ……うっ、ぅあぁっ!」

乳首を潰すように抓られると、腰がガクガク震えてきた。錦も興奮を抑えられなくなったのか、アイの肩に顔を埋めた。

「イクっ!イクぅっ!!」

割れるほどの大声が室内に響き、アイのペニスから白い飛沫が散った。快感を噴出して呆然としているアイに、すぐさま錦が声をかける。

「……乳首を抓られただけでイケるなんて、相当な変態だね」

肩で息をしながらアイは何度も頷いた。錦の言葉など理解できてはいない。

「アイが乱れている所、駒形君が全部見ていてくれたよ。聞いてみようか?アイがどうだったか」

聞いてごらんと錦に促され、アイは顔を上げて駒形を見た。彼はじっとアイを見詰めていた。その冷静な視線で全部見られていたことを意識すると、体が熱くなる。

「は……ふぅ……」

息が漏れ、腰にじわりと快感が広がった。しかしアイは相当疲れたらしく目を瞑ってしまった。

「仕方ないなぁ……」

既に寝息を立て始めているアイをそっとタオルケットの上に寝かせる。
部屋が静かになると、振動音がどこからか聞こえきた。

「……錦さんの電話じゃないですか?」

無造作に脱ぎ捨てられたスーツがその発信源であるらしく、錦は不機嫌そうに眉を寄せて立ち上がった。スーツを拾い上げて、部屋を出て行く。
アイに触れていたときとは全く違う錦の表情に、駒形は彼の二面性を見た気がした。

「に……」

気持ち良さそうに眠っているアイが、小さくうめく。汗や精液で汚れた体は妙に色っぽい。起きたら体を洗ってやろうと思いながらアイを見詰めていると、錦が部屋に戻ってきた。

「駒形君、僕は帰るよ。……残念だけど」

電話は仕事関係だったらしい。ドアの側に立ったまま言うと、錦は目を細めて横になっているアイを見た。

「お昼頃にまた来てもいいかな?駒形君の邪魔はしないようにするからさ」

残念そうな表情がなんだか子供っぽくて、駒形は笑ってしまいそうだった。笑いを堪えながら頷く駒形に、ありがとうと少し頭を下げると、錦は部屋を出て行った。
駒形はとりあえずアイをタオルケットに包んでやって部屋を出て行くことにした。欠伸をしながら階段を登っていると、錦の服が酷く汚れていたことを思い出す。あの服で帰るしかないのだろうが、人に見られたら相当恥ずかしいだろう。

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