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苦界の躾
休憩1※

日の光も入ってこないし、時計もないので、アイはどのくらい眠っていたのかわからなかった。実際には、一晩経って翌日の午前中だ。

欠伸をして部屋の中を見回してみる。誰も居ないようだった。

意識がはっきりしてくると、毛を剃られた股間が妙に痒いことに気がつく。アイは眉を寄せて少し腰を揺すった。それで痒みが治まるはずはないとわかっていたが、じっとしていると意識してしまう。なるべく気を散らすために、彼は体をもぞもぞと動かしていた。

アイがしばらくもぞもぞと動いていると、ドアが開く音がした。

「……何をしてるんだ?」

入ってきたのは駒形だった。腰を揺らしているアイを見て眉をひそめた。

駒形は近づいてくると、アイが変な動作をしていた理由がわかったらしい。苦笑してアイの側にあぐらをかいた。

「痒いだろ?」

アイが頷くと、駒形は筆入れのような袋を持っていた。その袋から、小さな毛抜きを取り出す。

昨日剃ったばかりのはずだが、アイの陰毛は既に伸びてきていた。駒形があまり深く剃らなかったせいもある。駒形はその股間を逆撫でしてみた。

「あう……」

短い毛を逆撫でされて、アイは快感に眉を寄せる。

「抜いてやる。そのほうが綺麗に見えるしな」

そう言うと、駒形は上の方から一本ずつ丁寧に陰毛を抜き始めた。アイは一本抜かれるたびに、痛みに眉を寄せた。

しばらくは何の音もなく、静かに脱毛が進められていた。元々毛の少なかったアイの陰部は簡単に脱毛されていく。毛抜きがペニス付近の毛を引いたとき、アイは激しく身震いした。確かにその辺りは非常に痛みを感じる辺りだ。駒形は、アイが他の場所よりも強い痛みを感じたのだろうと解釈して、もう一本抜いた。

「いっ……!」

アイが身震いとともに上げた悲鳴は、痛みに苦しむようなものではなかった。昨日錦に囁かれて上げた声色だった。しかし駒形は黙って脱毛を続けることにした。

しばらく続けているとアイはすっかり脱毛に快感を覚えた様子で、一本抜く度に色っぽい悲鳴をあげていた。目についた毛を全て抜いた頃には、アイのペニスは硬く勃起していた。

「気持ちよかったのか?」

毛抜きをしまい筆入れ袋の中を探りながら、駒形は震えているアイに声をかけた。アイは目を閉じて胸を喘がせているだけで、返事はしない。

「俺が触ったと思われるじゃないか」

ため息混じりに言うと、駒形は筆入れ袋から練り歯磨きが入っているようなチューブを取り出した。蓋を開けて手のひらにいくらかクリーム状の中身を出す。

「無理だとは思うが、あんまり感じるなよ。」

中身を出したのとは反対の手の指でクリームをすくい、脱毛したばかりの股間にそれを塗り込んでいく。駒形が無理と言ったとおり、アイは触れられた途端に甘い声を上げた。

アイの官能的な悲鳴を聞きながら、駒形は毛が生えていたところ全てに丁寧にクリームを塗り込んだ。発毛を遅らせるものだ。

塗り終わった駒形は、とうとう先走りを垂らし始めたアイのペニスを見てため息をついた。

「昨日まで普通の人間だったにしては、少し感じすぎなんじゃないか」

勃起してひくついているアイのペニスに触れてやるわけでもなく、駒形はなんとなくそれを見ていた。

「お前、俺の言ってることはわかってるんだろう」

昨日から全く言葉を発さないアイに、駒形は尋ねてみた。するとアイはうんと頷いて見せた。

彼自身まだはっきりとは気がついていないのだが、彼の頭は言葉を上手く紡げない状態にあった。実質、言葉を失っているようなものだ。その原因が、拉致されたときのショックなのか、急にこのような状況下に置かれてパニックに陥っているのか、定かではない。

駒形は試してみることにした。

「俺の言うことをそのまま言ってみろ。」

アイが頷いたので、駒形は少し考えてから「俺は駒形だ」とゆっくりと言った。

「……俺は、駒形、だ……」

声は掠れていたがちゃんと言えたので、駒形はホッとした。言葉を全く発することができない状態では、他の男たち、特に錦以外の2人がどれだけ気を悪くするか知れない。

アイはきょとんとした顔で駒形を見詰めている。駒形はぎこちなく微笑んでやって、立ち去った。

駒形は居なくなってしまったが、アイのペニスはまだ勃起したままの状態だった。独りきりにされたせいで、アイはそこばかりに意識がいってしまい、どうしようもなく切ない気分だった。思い切り扱いて射精したい。不思議と、その周りの毛を抜かれたせいで勃起してしまったという事実には、抵抗が湧かなかった。アイはなるべく自分のペニスを見ないようにして過ごしていた。このまま放っておけば、萎れてくれるはずだ。

しばらくして、駒形が食事を運んでくると、アイはすっかり眠っていた。

駒形は、この部屋がある建物の持ち主で、建物の本分である大人の玩具屋の店主だ。この部屋はその地下にある。2部屋ある地下室のうち片方は倉庫として使っている。もてあましていた方の部屋が調教部屋として使われるようになって久しい。店のほうは、もっともらしいアダルトショップという雰囲気ではなく女性一人でも入れそうな小奇麗な内装で、それなりに繁盛している。客やそれ以外の人間が来るのは夕方からなので、駒形は昼間は静かに過ごしている。現在のように地下室に監禁されているものが居れば世話をする。建物自体は地上2階地下1階建てで、駒形の住居も兼ねている。

「おい」

今はちょうど昼時だ。時間的に今のうちに食事をさせておかないと食べ物がこなれないので、駒形は少々乱暴とは思いつつアイの脇腹を軽く蹴った。

「むぅ……」

気持ち良さそうに眠っていたアイは、不機嫌に眉を寄せて目を開いた。

「飯だ。今喰わないと辛くなる」

駒形はアイの頭の側にあぐらをかいて、食器が並んだトレイを自分の脇に置いた。

「ホラ、喰え」

寝起きで食欲が湧かないのか、アイは目の前に出されたレンゲを不満そうに見詰めていた。

「……しばらく食事ができなくなるかも知れないんだ。喰っておけ。」

食べさせるためのはったりだったがアイは素直に口を開けた。

駒形はアイが食事を終えるとすぐに出て行ってしまった。

今更だが、よく考えなくても異常な状況下に居ることはすぐに分かる。全裸でコンクリートの床に寝ていること、手足の自由がないこと、陰毛がすっかり無くなっていること。普通の生活を送っていたらありえないことばかりだ。しかしアイは首をかしげることはなかった。裸で居ることにも既に慣れていて、ひんやりとしたコンクリートの部屋も悪くないとすら思っていた。両腕を縛られた状態で、昨日はじめて会った自分の陰毛を処理した男に食事を与えられるのも、なんだか当然のような気さえした。アイはまた目を閉じた。

地上階に戻った駒形は、洗腸されるアイを想像しながら、店内のアナル向けグッズを眺めていた。

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あきゅろす。
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