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苦界の躾
出掛ける1※
翌日の昼頃、駒形は軽い食事を持って地下室に入った。床に横たわった蓑虫みたいなアイを見て、思わず笑ってしまう。

「おい、寝てるのか?」

声をかけると蓑虫はもぞもぞと動いて顔を出した。

「……おはようございます、」

蓑虫は寝ぼけた顔をしていた。声もやんわりとしていて、かわいらしい。

「もう昼だ。飯を持って来たぞ。」
「にゃ……」

もう昼なのかと口の中で呟いて、体を起こす。駒形が側に食事の載ったトレイを置いてくれた。
腹は減っていたが、何となく食べる気がしなかった。別に駒形が用意する消化の良さそうなリゾットみたいな物が口に合わないわけではない。むしろ好みだが、手は動かなかった。

「食べないのか?」

アイは毛布に包まったまま皿を見詰めた。側に置いてあるスプーンに手を伸ばす。手はスプーンを掴んだが、持ち上げると落ちた。面倒くさくなって、アイは体を曲げた。
皿に直接口をつけたアイから、駒形は目をそらした。しかしすぐにドサッという音が聞こえてきたのでそちらを見てみると、彼は床に倒れていた。

「おい……?」

抱き起こすと、アイは胸に頭を押し付けてきた。そして、首を振る。

「ごめんなさい」

小さな声で言う。もう一度繰り返すと、アイはぴくりとも動かなくなってしまった。
駒形は気が付かれないようにアイを横たわらせ、食器を少し離した。やっぱり食べたいと思うかもしれないので置いておくことにして、なるべく音を立てないように部屋を出ていった。
階段を登りながら、もしかすると洗腸への恐怖から食事を拒否したのかもしれないと思った。食べなければ排泄物はあまり生まれない。残っている物が出て行くだけだ。駒形はため息を吐いた。そして、俺のせいじゃないぞと呟いていた。

夕方また行ってみると、アイは長座布団から外れて眠っていた。そう言えば傷は痛くないのだろうかと思う。

「起きてるか?」

近づくと少しうごめいたが、どうやら寝ているみたいだった。皿のほうは昼に置いていったままになっていた。

「……錦さん」

アイは薄っすらと目をあけて、誰かの足を見つけた。反射的に錦の名前を呼んでいたが、錦にしては少し太いような気がしていた。

「俺は錦さんじゃないぞ」

案の定駒形の声が返ってきた。残念がってそちらを見ていると、遠くから足音が聞こえてきた。アイは目を見開いてドアを見詰めた。

「……なんじゃ駒形、ここにおったのか」

入ってきたのは翁だった。アイはあからさまに期待はずれの顔をしたが、駒形の足で翁からは見えなかったらしく、咎められずに済んだ。
翁はアイの側まで歩いてきて、昨日傷つけた顔を眺めた。

「いい顔じゃ。傷も様になっておる」

呟くように言うと、杖でアイの背中を叩く。寝転がっていたアイは背中を丸めて衝撃に耐えた。

「痛みにもなれたんじゃろ。その様子だとどうやら昨日の傷はそう痛んでいないようだしの……」

駒形はそうなのかという感じの視線をアイに送った。アイはそれに小さく頷く。そうしながら、駒形が昨日言った、若いな、という言葉を思い出していた。

「どうじゃ、わしと出掛けてみんか?」

杖の先で顎をくいと上げさせて、翁はアイに笑いかけた。

「嫌だとは言わせんよ。わしと出掛けるんじゃ」

威圧的な口調に怯えながらアイは頷いた。しかし出掛けると言ってもどこに連れて行くつもりなのだろうか。今まで生きてきた中で、老人と出掛けたことなどない。
翁が立ち上がるように指図した。毛布に包まったまま立ち上がると、少しよろけた。

「毛布は放せ」

そう言われて毛布を放す。赤い痕が痛々しい。駒形は目をそらした。
ふんふんと何度か頷いて、翁はズボンのポケットから携帯電話を出した。そして、どこかに電話をかける。

「……トランクに入れておいた鞄じゃ。それをもってこい」

使用人か何かだろうか。偉そうな感じに命令をすると電話を切り、駒形の方を向いた。

「上まで取りに行ってくれ。裏口にわしの使用人が荷物を持ってくる。」

駒形はどうせそう来るだろうなと思っていたので、既にドアに向かって歩き出していた。少しだけ立ち止まって、分かりましたと言い、出て行く。

「わしと出掛けるのに服を見立ててきたのじゃ」

満足そうに微笑んでいる翁を、アイはぼんやりと見下ろしていた。翁は自分よりも少しだけ背が低いが、自分よりもずっと大きいような気がした。態度や、威圧感が。
しばらくすると駒形が戻ってきた。持って来た鞄は使い込んだ感じのする革の鞄で、アイはそれを見て唾を飲み込んだ。何が入っているかわからないところが、怖い。
駒形から渡された鞄を開け、翁は駒形を呼び寄せた。

「これをつけてやれ」

そう言って渡されたものは、潤滑ゼリーのチューブとリモコンバイブだった。駒形はため息を吐きながらアイの前に来た。

「首につかまれ。……そう、そしたら、少し足を開け」

アイが少しだけ開いた脚の間に自分の脚を割り入れる。片手でアイの体を支え、口を使ってチューブの封を切った。そして、チューブの先を肛門に押し込む。

「……んっ!」

突然異物を押し込まれて、アイは駒形にしがみついた。

「大丈夫だ。浣腸をするわけじゃない。潤滑剤だ。」

浣腸ではないと言われると、いくらか落ち着いたらしい。そんな彼の様子を見て、やはり洗腸にはかなりの恐怖を抱いているようだ。
チューブの中身を全て注ぎ入れると、今度はリモコンバイブを取り出した。

「力を抜け」

アイは頷いて、ゆっくり息を吐いた。その間に、細身のバイブを奥まで突っ込む。ゼリーに手伝われてすんなりと入ったが、慣らさなかったので少し辛かったようだ。駒形にしがみつく腕に力がこもっていた。バイブについた紐でそれを固定する。駒形がアイの体を離したところで、バイブが動き出した。

「いっ!?あぁ、あっ!!」

急な刺激に、アイはまた駒形にしがみついた。その様子からスイッチが入れられたことを察し、駒形はため息を吐いた。

「駒形、服を着せてやれ」

いつの間に出していたのか床に衣類が広げられていた。翁に頷きながらアイの様子を見る。少し慣れてきたようだったので、体を離してまずはズボンを拾った。下着類が一切なかったが、きっとそれもわざとだろうと、駒形はあえて指摘しないでおいた。
タイトな皮のボトムは高級なのかすぐに肌に馴染んだ。しかしファスナーを締めると尻がぐっと押さえつけられるような感じがして、バイブがさらに奥に進んできたようだった。強引に押し込んだ半勃ちのペニスが、タイトな腰周りに不自然なふくらみを作っている。
駒形が次に手に取ったのは生地の薄いカットソーだった。それを着させて、次にあったコートを拾い上げる。そのコートは変な形をしていた。簡単に言うならば、袖がない。
コートを広げた駒形が首をかしげていると、それを見ていた翁はさっさと着せろと不機嫌そうな声を出した。急かされて、不可解な服をとりあえずアイに羽織らせる。

「……腕を組め」

組めと言われて、アイは素直に腕組みをした。そのままの状態でコートの前を合わせ、ファスナーを下から締めていく。
腕は動かなくなった。腕を組んだ体勢にフィットするように作ってあったのか、ズボンと同じく広がりのないタイトな見た目になった。

「ふむ。いいじゃないか。この靴を履け。行くぞ」

靴下無しで革靴を履かされ少し不快だったが、アイは黙って翁に着いて行った。階段を上がったすぐ側にある裏口まで駒形がふらつくアイを支えてやっていた。そこからは翁がアイを先導して停めてあった車まで連れて行った。
駒形は裏口に立って、車が見えなくなるまで見送っていた。

翁に連れてこられたのは、映画館だった。いわゆるポルノを上映する映画館だったが特有の下品な感じはなく、むしろ普通の映画館よりも上品な感じがした。
二人は二階席に通された。何か特別なチケットを持っている人しかそこには入れないらしく、券売機でチケットを買っていたいくらかの他の客は、一階の大きなドアから入っていった。

「エレベーターがないのが欠点じゃ」

翁は言葉とは裏腹に上機嫌な表情でそう言うと、仕切りの付いた席についた。そこはひとつひとつ区切られた椅子ではなくて、ゆったりとした長椅子が置いてあった。アイは隣に座るよう促され、おとなしく翁のすぐ側に座る。

「ここでやるのはどうせ下品な映画じゃ。暇つぶしじゃよ」

そんなこと言うなら来るなよと思いつつ、アイはふぅんと息を漏らしていくらか頷いて見せた。

「落合君が言っておったが、お前しゃぶりがうまいそうじゃないか?」
「……え?」

落合がそんなことを翁に告げ口していたとは思ってもみなかった。アイは嫌な予感がして、控えめに首を傾げた。

「誰に教わったんだか知らんが、しゃぶりがうまい男は気に入られるぞ。引き取り手の候補はかなり多くなりそうじゃな」

翁は満足そうだった。自分が遊んだあと、引き取り手が見つからないことほど不愉快なことはない。顔や体が普通でも、セックスに関して何かしらいいところがあれば引き取り手を見つけるのにそう手間はかからないが、いくら調教を施してもそうならない人間も居る。

「わしのもしゃぶってくれ。わしは爺さんじゃが、まだ使えんわけじゃないわい。うまいと言うのを確かめたいでの」

アイは少し眉を寄せたが、すぐに決心が着いたのか翁の前に跪いた。しかし手が使えないので、どうやって始めたらいいか分からない。

「……そうじゃ、手が使えんかったの。ほれ。」

翁は犬に餌を与えるように、自分のペニスを取り出した。アイはすぐに、ちろちろと先端を舐めはじめた。

「ほう……、慣れてるのう」

ある程度硬くなるまで、舌で舐めまわす。歳のせいかなかなか硬くなってくれなくてアイは少し飽きてきていた。

「年寄りのものをしゃぶるのは初めてか?ウリをしておればオヤジ相手のこともあるじゃろ?」
「……そんなことしてない」

眉を寄せて言い返し、アイは翁のペニスを口に含んだ。一気に根元まで吸い込むと、意外と大きくて驚いた。

「なんじゃ、ウリをしていたわけじゃあないのか?じゃあどこで教わってきたのじゃそんな芸当」

フェラチオに夢中になっているふりをして、無視した。少し不機嫌になった翁は、切ってあったバイブのスイッチを入れた。

「んっ……ぐ」

危うくペニスを噛んでしまいそうになる。細身のバイブが直腸の壁を揺すっていた。

「ちゃんとしゃぶれ。噛んだら殺すぞ?」

翁は冗談で言ったのだが、アイは真に受けて細心の注意を払った。
手が使えないのは不利だなと感じつつ、口だけで何とか翁を昂ぶらせる。翁を見上げると、涼しい顔をして前を見ていた。きっと、曰く下品な映画をみているのだろう。そう思って耳を澄ますと、映画の音が聞こえてきた。

「あー……あんっ、いい、いいわ」

女性の甘い喘ぎ声が耳に入り、アイは嫌悪を感じた。堪えられずペニスを吐き出して、翁の脚の間に顔を埋めた。

「なんじゃ?」

翁に声をかけられて、首を振った。聞きたくないという意思表示と解釈してくれたら嬉しい。

「何をしておる?続けろ」

やはり伝わらなかったらしく、翁はアイの頭を打った。アイは仕方なくフェラチオを再開した。集中すれば音も気にならなくなるかもしれない。
アイは喉の奥まで使って、一心不乱に翁を慰めていた。ペニスは口の中でだんだん硬さを増し、ピクピクと震え始める。バイブの刺激も手伝ってか、アイは音を気にせずに済んでいた。
ようやく翁のペニスが強く反り返る。射精を促すようにアイは大きく抜き差しを繰り返した。

「こぼすんじゃないぞ」

翁はそう言って、アイの頭を股間に押し付けた。するとすぐにアイの喉を精液が打つ。放たれた精液を飲み下し少し気分が落ち着くと、また音が耳に入った。

「はぁっ、は……んぅっ、ん、んんー、いぃ、イク、イク」

映画の中の女性の、絹を裂くような悲鳴が、アイの耳に響いた。アイは強い吐き気を感じて翁を吐き出そうとしたが、頭を押さえられていたので叶わなかった。

「んぐっ、うぅうん!!」

放して欲しくて叫ぶと、涙がこぼれた。しかし声を出すために腹に力が入って、直腸に刺さったバイブが少し位置を変えた。バイブの刺激もあって、アイはくぐもった悲鳴をあげながら涙を流している。

「どうした?刺激がたらんのか?」

すると翁はバイブのうねりを強くした。

「んぐぅううぅっ!!」

叫ぶのと同時に、自分の股間が熱い粘液に濡れるのを感じた。
翁は自分のペニスをズボンの中に納めると、すぐに立ち上がり出口に向かった。アイは肩で息をしながら、フラフラとついていく。
車に乗せられて、アイはやっと落ち着いた。隣に座っている翁は運転手に行き先を指図しながらアイの腿を撫でていた。いつの間にかバイブの刺激は弱まっている。

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あきゅろす。
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