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秋冬春夏(完結)
18
「お前から連絡してくれない」
「お前がしろよ」

翌日、パソコンを前にして、二人はもめていた。
どちらが三方に連絡するか、だ。

「お前が頼まれたんだろ」
「受け取ったよって連絡したっておかしくないよ」
「そこにぜひ、って書いてあるじゃないか」

キヨカズも、純が躊躇う気持ちが分からなくもないが、とにかく頼まれたのは純なのだ。

「仕方ないな」

とは言え、相手はどこに届くかも分からないビジネス風のメールアドレスなのだ。

「お前なら、高校卒業の時に頼まれた約束を果たしたから連絡とりたいです、で済むだろ」
「覚えてるかな」

不安はあるが、覚えていなければ我々に失礼だ。
キヨカズの意見に、純は同意した。
やがて純が素っ気ないメールを送信し、とりあえず、最初の手続きは済んだ。やりきったような気持ちで、あとは忘れておくことにする。
連休が終わった頃、メールをチェックしてみると、知らないアドレスが未読欄に並んでいる。

「キヨカズ! 三方くん!」

本当に忘れていた純に、キヨカズは呆れて肩をすくめて見せる。

「なんて?」

純の肩越しに画面を見ると、純が送ったメールとは対照的に、たくさん文字が書いてある。いや、純のメールがそっけなさ過ぎただけかもしれない。
久我くんが約束を果たしてくれたことよりも、まだ金澤くんと会う機会があることに驚きました。
以前手紙を書いた通り、ぜひそのときの状況を教えてもらいたいです。
できる限り日時は合わせますから、会ってくれると嬉しいです。
と、だいたいこんな内容だった。

「お前の店に呼んでいい?」
「いいけど」

俺はどんな顔して見てればいいの。
キヨカズの問いに、純は微笑みを返した。

「お前の顔がよく見える席を予約するよ」

純の考えていることは分からないが、不気味さを感じ、身震いする。
土曜の夜はいかがですか。向こう2ヶ月、僕は予定がありません。場所は僕が選びます。
迷いなく打ち終えて、すぐさま送信する。
三方のように挨拶や雑談を書く気はないのだろうか。

「潔いね」

率直ながらオブラートに包んだ感想を漏らすと、純は肩を揺らした。笑ったのだろう。

「そういうところ、好きでしょ」

くるりと振り返って、何を言うかと思えば。キヨカズはため息をついた。

「好きだよ」
間違いなく。

キヨカズの思うには、純は身を守る手段として無神経のふりを覚えたのだろう。
相手に気があると思われないために。

少しかわいそうだなとも思う。

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