秋冬春夏(完結)
14
石原と守山と3人で飲むのがもはや定番となりつつある。
その日も飽きもせず、キヨカズの店で閉店まで飲んでいた。
すっかりご機嫌の石原が、思い出したように切り出す。
「久我さんのご飯食べてみたいです」
絶対美味しい。絶対。
と、石原は妙に自信満々に言い切った。
「僕はいいけど」
美味しい自信は無いものの、断る理由もない。
即答した久我に守山が苦笑いを見せた。
「どこでやる気?」
この店でやるわけにも行かない。守山の心配はごもっともだ。
「うちでやる?」
と、久我が思いきったことを言うので言い出した石原もキョトンとした。
少しの空白の後、身を乗り出す。
「い、いいんですか?!」
いいよ、と応じそうになって、一応同居人の許可を得る必要があるなと思う。
「キヨカズ」
「なに?」
キッチンを片付けている店主が顔をあげた。
「この人たち、うちに招待してもいいよね?」
静かに首をかしげた店主は、ややしばらく洗い物を続けて黙っていた。
洗い物を終えてから、ビールをもってやって来る。
「いいよ」
すぐに返事が出来たのだろうが、話に混ざりたくて黙っていた。
そんな感じのさっぱりした回答に、守山が笑う。
石原は立ち上がって万歳した。
「やったー」
そんな石原に、久我さんの料理が食べたいのか家に行ってみたいのかどっちなんだと守山が言い掛けた。
「どっちもだよ」
「正直だな」
キヨカズは呆れたように笑った。
「いつやろうか?」
「休みの前日がいいですよね」
「どんだけ居座る気だよ」
「土曜?」
と、守山の突っ込みは無視したまま石原と久我が日取りを決めそうな流れで、キヨカズが口を挟む。
「俺がいるときにしてよ」
自然と土曜日にしようとして、久我は止まった。
「月曜が祝日の、日曜にやろう」
それならキヨカズも居るし、遅くなっても影響ない。
「連休でもいい?」
カレンダーを見て、久我が提案した。
「オッケーですよ」
石原は嬉しそうに即答したが、キヨカズが心配そうに、予定ないのと聞いた。連休なのだから旅行の予定があってもおかしくない。
「店長さんこそないんですか?」
守山に聞き返され、首を傾げる。
「あるか?」
「何もないよ」
聞いた守山も予定はない。
連休の初日に決行されることとなった。
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