秋冬春夏(完結) 5 俺の好きなとこどこ? なんてベタな質問。 思い出すだけで恥ずかしい。 誰に聞いたかは覚えていない。 何て言われたか。 はっきり思い出した。 ベタベタに甘いセックスと、 「そこそこの顔、ね」 近頃何故かセックスの時は清一と呼ばれる。 恐らくは、絡み合っていれば気恥ずかしさがごまかされるからだ。 キヨカズと呼ばれるのは特別で好きだ。 本当は居ないはずの、純の中にだけ居る自分。 このまますっかり清一と呼ばれるようになったら寂しいと思う。 まだ外は薄暗くて、恋人は目を覚まさない。 ベッドで寝顔を眺めるなんて久し振りのような気がする。 たいていキヨカズが先に眠って、純が先に起きるからだ。 白い肌。肩についた自分の痕跡。 いくら抱いても気持ちが渇く。 いくら痕をつけても、不安になる。 まさかこんなに近くに来れるなんて、想像もしなかった。 だから不安なのかもしれない。 純のことは恋愛対象にするまいと思っていたから、いつまで経ってもこれが現実でないような気がするのだ。 純の肩についているのはキスマークと言うより歯形だ。 痛かっただろうなと反省する。 触れてはダメだ。起こしてしまう。 起こさないように、 起こさないように。 あんまり見ているとまた抱きたくなってしまうから、背を向けた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |